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  私は鬼で、貴方は獣


ここは歌舞伎町。
あらゆる人、あらゆる物が行き交う人情の町。


『お登勢さん、たまさん、おはようございます』

「ああおはようナマエ」

「おはようございます」

「オイ小娘ェエエエエエ!ナンデワタシニハ挨拶ネェンダヨ!!!」

スナックお登勢の奥から顔を出したのはまだ10くらいの少女。
艶やかな黒髪をおかっぱにし、服装はシンプルな白いワンピース。赤く色づく唇とほんのり桜色の頬を持つ血も凍るような美少女だった。

『銀さんたちも起こしてきますね』

「今日こそ家賃回収してくるんだよ」

『ご安心くださいお登勢さん。銀さんからお小遣いという名の家賃は8割がた回収できています』

「あの万年金欠屋から小遣いせしめるなんて真似、お前にしかできないよ」

感情が表にでない、隣でモップ掛けをしているアンドロイドのたまのように動かない表情のまま彼女は上の階へ向かった。

『銀さんおはようございます。神楽さん、朝ご飯の用意ができましたよ』

「いやっほぉおおおおう!ナマエのご飯アルー!!!」

「俺の分も残しておけよ神楽ぁ!おはようナマエ!」

『今日も素敵な髪の毛ですね』

「この髪の良さが分かるのはナマエだけだ…っ!よしお兄さんお小遣いあげちゃう!」

「おはようございます、ナマエちゃん神楽ちゃん。銀さん何泣いてるんですか?」

手のひらに落とされる百円玉が数枚。
今月の家賃まであといくらだったかしらと思いつつ、銀時の髪をみる。


あの子とよく似た銀色。
でもあの子はストレートだし、もっと短髪でしたね。
麦藁帽を被れば少しは似るかしら?もちろんあの子の代わりなんていないのだけれど。

弧を描きそうになる顔をきゅっと引き締めた。



お昼過ぎ、大きなエコバックを片手に大通りを歩いていると、前方から見覚えのある黒服の集団が目に入った。

「なんでィ旦那のところのチビじゃねェか」

『沖田さん、お久しぶりです』

「お前一人か?」

『はい。お使いを頼まれましたので』

「そいつァ危ねェや。なあ土方さん」

「ああ。最近ここらじゃ辻斬りが流行ってやがる。件数から見て複数犯だがやり口は同じだ。」

「全身バラバラに切り刻んであたりは血の海。イカレてまさァ。気をつけろよチビ」

「お嬢ちゃんじゃあ一溜まりもないぞ。危ないと思ったらすぐに大声をあげるんだぞ!俺たちが駆けつけるからな!」


『……はい。ありがとうございます、皆さん』

漆黒の奥にチラリと揺らめいた紅は、誰の目にも届かなかった。





薄暗い夕暮れ時。

『かーごめかごめ、』

細い路地に響く幼い歌声と小さな足音。

『かーごのなーかのとーりーは』

絶妙な音程、リズム、声色。

『いーついーつでーあぁう』

目の前の獲物は、すでに彼女の支配下に。


『うしろのしょうめんだぁーれ』



ザシュ。



「今日も派手じゃねぇか…殺人鬼」

『うふふ。どうにも血が騒いでしまうんです。どうしたのでしょうね、家賊が近くにいるのかしら』

「さぁな。」

路地いっぱいに広がった紅色。
人間にこれだけの血液があるのかと思うほど派手な血しぶきだ。
反してその中央に立つ少女には一点の汚れもない。白いワンピースの端から手に握られたバタフライナイフまで新品のように綺麗なまま。

『この町の人は優しいですねぇ。うふふ、気をつけなさいってたくさん言われてしまいました』

「目の前にいるガキがその正体だとも知らずになぁ。バカな奴らだ」

『あらあらそんなこと言わないでくださいな。私の"人間のフリ"をころりと信じてしまう良い人たちなのですから』

血の爆心地から外れた路地の壁に寄りかかる、派手な着物の男性が喉を震わせて嗤う。
対して少女は、無表情だった顔は嘘であるかのように柔らかく優しく微笑んでいる。

「さて…今日も用件は同じだ。鬼兵隊に入らねえか」

『今日の返答も同じです。入りません』


私たちは、


『相容れることはできない存在なのですよ』



小さな体から純度100%の殺気が放たれる。
これを初めて浴びせられたときは身体が石になったかのように凍り付いた。今では慣れたものだが、それでも冷や汗が背中に滲む。



『私は鬼で、貴方は獣ですもの』



そりゃあ違いねェ、と彼は一筋の紫煙を燻らせた。


(表も裏も、鬼は鬼)


…………………………………………
高杉とあまり絡んでない。

yukaさまリクエスト、絶対救済主が銀魂に転生する話でした。

あまり高杉と絡んでなくてごめんなさい…
今後の展開としては家賊もみんな転生していて、いずれは銀さんたちと敵対してしまうといった感じでしょうか…


 

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