観客の皆様は取り返しの憑かない心傷にご注意ください
第二次試験の第二次試験は寿司だった。
僕の世界の寿司と同じなのか不安だったけどハゲのお兄さんが大きな声で喋ってくれたおかげで同じだとわかった。
落ちたけどね。
比較的まともな魚を釣ってさばいてたら突然不合格って言われたんだよ?酷くない?
そりゃあ包丁使ってるうちに楽しくなって来ちゃって内臓ぐっちゃぐっちゃして遊んでたのは悪かったけどさあ。
顔色最悪で口押さえてた試験官のお姉さん大丈夫かな?
あ、あの後ね!結局試験やり直しで崖から紐無しバンジーする羽目になったんだよ!
運動神経ゼロの僕に自由落下しながら巣に捕まれって無茶だよね。僕ここでリタイアだと思ったもん。
でもイルミちゃんが助けてくれた。ガシって僕の腕掴んでくれたんだよー!持つべきものは友達だね!別にイルミちゃんとは友達じゃないけど。
ひょっとしたら仲良くしてくれるかもって思ったけど一言も喋ってくれなかった…しょぼん…
卵をゆでてる間、僕をナンパしてきた希少な人第一号の少年からの視線が痛かった。
僕なんかしたかな…覚えがないな…覚えがないけど何かしちゃった経験は何度もあるからあの子にも何かしちゃったのか僕。
次はいよいよ三次試験。
体力も知力も運もない、もちろん努力もしちゃいない僕がよくここまでこられたもんだ。
なんとかしてこの何百メートルだか分からないタワーを降りなくちゃいけないらしい。
んー、僕ならなー。とりあえず飛び降りて死んでから生き返るかなー。
死にたくないけどそれしか方法がないなら仕方ないよn《ガコンっ》
『「うわぁ!?」(ガツ)「いっづぅ!」』
「…扉に落ちたようだな」
「しかも落ちる瞬間に頭ぶつけてたな」
「あの人大丈夫かな…?」
「………大丈夫だろ」
あの人は"無敵"だから。
痛い…ちくしょう落とし穴とか古典的すぎるトラップだろ…現代人の僕には思いつきもしないぜ…
すぐに大嘘憑きでなかったことにしたけどめちゃめちゃ痛かったぞ…
…ん?何々…"多数決の道"?
5人ってことはあと4人くるまで待たなきゃなのか…
てゆーかあと4人来なかったら自動的にゲームオーバーじゃん?不運に不運を重ねた僕がそんな幸運に恵まれるとでも…
《ガコン》《ガコン》《ガコン》《ガコン》
…恵まれたわー
「げっ…」
僕の顔を見るや否や嫌そうな表情をしたおじさん(推定)
失礼しちゃうねまったく!
「レオリオ、女性に向かってその反応は失礼だろう」
金髪の…えーとたぶん男の子。いい子だねーイケメンだ!高貴ちゃんには及ばないけど。
「みんな一緒でよかったー!」
黒髪サ○ヤ人ヘアの男の子は天真爛漫だね。こっちの子もいい子そうだな。
「…………」
…で。無言で僕を睨んでくるナンパ少年1。なかなか縁があるね。
みんなで仲良くおそろいの時計をはめていざしゅっぱーつ!
歩いている間に簡単な自己紹介。といっても僕以外はみんな仲良しさんだったみたいだけど。
アウェーだね僕。慣れてるけど。
「俺、ゴンっていうんだ!お姉さんは?」
『「僕はミソギ。」「よろしくねゴンちゃん!」』
「私はクラピカという」
「…レオリオだ」
「……………」
『「クラピカちゃんとレオリオちゃん!」「…君は、名前教えてくれないの?」』
「キルア?どうしたの?」
『「まあ今ので名前分かったけど」「よろしくしたくないなら無理しなくていいからねー」』
慣れてるし。何度でもいうけど慣れてるし。
僕たちは多数決の道をとんとん進んで(途中で僕の天邪鬼スキルが発動したけど)どうやら闘技場のような広い場所に出た。
思ったんだけどハンター試験って金かけすぎだよね。1回の試験のためにどれだけ増設したの仕掛けとか。
ここではどうやら戦うらしい。
…うおーみんなの足を引っ張ることが確定しているぜー
「では1人目は…」
『「んー僕に行かせてクラピカちゃん」』
「ミソギ!大丈夫?」
『「だいじょばない。から先に行くよ」「僕が負けたら後のみんなに任せられるようにね」』
大丈夫大丈夫。
きっとまた勝てないだろうけど。
…勝利以上のトラウマ刻み付けて今後一切誰とも勝負しようとしないくらいに陰惨な試合にしてあげるからさ。
僕の試合相手は筋肉達磨のおじさん。
なんか見るからに強そうだぜ…
しかもデスマッチになっちゃったぜ最悪だよ死にたくない。
あ。
『「ねえ」「試合を始める前に確認しておきたいんだけど」』
「何だ?安心しろ、降参なら認めてやる。」
『「違う違うそうじゃなくてね」』
『「死んだ後に生き返ったら試合は続行してくれる?」』
会場全体の空気がしらける。味方サイドからも敵サイドからも「何言ってんだコイツ」って視線が来る。
…あれ。おかしいな
キルアちゃんだけ違う。また僕を睨んでいる。
あの子はいったい僕に何の恨みがあるんだか。
「はっはっは!いいだろう殺しても生き返ったら試合は続行だ。始めるぞ!」
ぞ、といい終わった瞬間に囚人は僕に向かって突進してきた。
時間をなかったことにする間もないほどのスピードで僕の懐に潜り込み、僕の喉笛を一突きした。
ぐえっ、というカエルを押し潰した方がまだマシな声だろうという呻きが漏れる。
喉が完全に潰れた。痛い。死ぬほど痛い。
「ミソギ!」
「口ほどにもなさすぎるぜあいつ!」
「マズいぞ…喉を潰されたとなると…」
降参が不可能になる…!
「これからじっくり甚振ってやるよ…!したかったら降参してもいいんだぜ?できるもんならな!」
すっかり勝ち誇った顔をしてるベンドット。
その下種な表情と焦りを見せるゴン達を尻目に、キルアはひどく冷静だった。
馬鹿じゃねーの。
甚振ってなんかいないでさっさとここから突き落とすべきなんだよ
そしたら死んでも生き返っても戻って来やしねぇじゃん。
せっかく親切に"生き返ったら"なんて伏線を見せてくれたのに。
馬鹿じゃねーのみんなみんな。
俺の大好きなミソギ姉ちゃんは、そんなことじゃ折れねーんだよ。
『「うわぁーいったーい」』
「「「「「!!?」」」」」
『「喉潰れたねー」「声帯をやられたぞー」「なんだか苦しいのは首の骨が折れたからかなー」「これは重傷だー」「死んじゃうよえーん」』
ギ、ギ、ギ…と壊れたブリキ人形のようにぎこちなく体を起こす。
片方の目だけをぎょろりと動かして驚愕している囚人を目にうつす。
にたり
口が弧を描いた。
さあ、最低の最低による最低のための最低なるショーを始めよう。
観客の皆様は取り返しの憑かない心傷にご注意ください
(どんなトラウマをどれだけ負ったとしても)
(当人は全くもって責任をとりません☆)
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トンパの代わりにミソギちゃん。
レオリオは容姿やら行動やらで悪目立ちしてたミソギちゃんが少し苦手。
キルアはどうやらすでに確信しているようですね
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