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  お久しぶりですお兄様、貴方は何処の誰ですか?


さてさてもうすぐ始まるよ二次試験!楽しみだなーなんて心にもないことを思ってみたり。ま、僕に心なんてないようなものなんだけどさ。

『「それにしてもあの子誰だったのかなー?」「僕のこと知ってるっぽかったし」』

ひょっとして僕の家族だったりしてね!安心院さんが言うにはトリップじゃなくて転生らしいからさ、家族がいるはずなんだよね。

どうして覚えてないんだろう?少なくとも12歳かそこらまではどこかに住んでいて誰かに育ててもらったはずなんだけど。まあ寂しい山奥に埋葬されていたことを考えると、良い家族ではなかったんだろうな。転生家族ガチャも大外れだな、僕。


あ。時間だ。


ゴゴゴゴゴ、と重苦しい音を立ててドアが開いていく。
その向こうにいたのは…まさに山のような大男と細身の美人さん。僕のテンションは言うまでもなく上がった。

『「わあっ」「試験官さんびじーん!」』

周りから何言ってんだこいつって視線もらっちゃったよ…みんな冷たいなぁ!冗談の通じない人間に価値はあるのかい?って一番価値のない僕が言ってみる。


「二次試験は料理よ!」


…ハンター試験って何?花嫁修業?


僕はそれなりに独りで生きてきたわけで。
餓死しても無かったことになるけどドMでもあるまいし苦しかったり痛かったりは嫌いだからちゃんと寝て食べて健康的な生活をしてきた。

つまりは家事全般はそこそこの腕前なんだけど。


『「豚の丸焼きなんて世界のの何割の人が作ったことあるって言うの?」』


豚を捕まえて焼くだけ?嘘だよ甘いよみんな。
内蔵や骨を取り除いたり下味付けたりちゃんと中まで焼いたりと結構手間がかかるんだよ?
まあ安心大嘘憑きを持ってる僕からしたら骨や内臓は簡単に"なかったこと"にできるけどさ。

とりあえず豚探さないとねぇ。
そもそも野生の豚とかいなくない?
家畜が野生化したなら分からなくもないけど、豚ってそもそも猪を食用に改良した生き物だし。

なんなら猪でもオッケーっていう…


『これはねぇわ。』


やっべカッコはずれちゃったぁ。
目の前の現実が受け入れがたいぜ。

この世界には随分変わった動物植物がいることはさすがに知ってたけど。
鼻が大きく硬く発達した、僕十人分くらいの豚。これ捕まえるとか…無理ゲーだわー…だって僕、地球上最弱なんだぜ…?


ズドドドドドドド


近づいてくる豚という名の死亡フラグ。

だからねぇ僕死ぬの好きとかじゃないから!死んじゃうから死んじゃうだけで好き好んで死んでるんじゃないの!

あー…本日何度目かの死亡…


と、思ってたら


スパパパパン!!!という良い音がしたかと思えば僕の3p前くらいで巨体が倒れた。
良い音だった。善吉ちゃんが持ってきたハリセンで僕の頭をぶったたきやがった時みたいな音だった。

豚の顔を見るとイボみたいなものがたくさんできてる…と思ったら針だ。
根本まで埋まっているから気づくのが遅れたけど、待ち針みたいに丸いヘッドがついた針が刺さっている。

いったい誰が…


「カタカタカタカタカタカタカタカタ…」


風に揺れる窓のような音がしたかと思うと、後ろに背の高いお兄さん…おじさん?が現れた。
全く気がつかなかった……この人の絶はかなりのものだ。

『「あーっと、」「助けてくれてありがとう!君は命の恩人だ!」』

とりあえずお礼を言っておく。
困ったことに言葉に心を込められない僕は空っぽな感謝しか述べられないんだけど勘弁してね。

魔が差したのか僕を助けちゃったお兄さんは随分変わった格好をしている。

何か目が死んでるし(人のこと言えない)変な格好だし(人のこと言えない)体中に針刺さってるし(人のこと言えない)
あとさっきからカタカタしか言わない。そういう言語を使う民族なの?


『「この豚どうす「ねえ君、」


本日何度目かのびっくり。
お兄さんイケボじゃん。喋れるじゃん。
見た目とのギャップがありすぎてヤバいよ…ときめかないけど。

「君、名前は」
『「素敵で無敵でついでに無職なミソギちゃんでーす!」「えっとね、名字は分からなくって年齢は永遠の18歳!」』

なんかまた名前聞かれた。
この手のナンパ流行ってるの?しかも僕なんかに?
ちなみに僕は蛾々丸ちゃんか高貴ちゃんレベルの男の子じゃないと靡かないからね!そこんとこよろしく!

「……………」
『「あっ!ちょっとちょっとお兄さん!」「僕だけ名乗らせるなんて失礼じゃないか」』

お兄さんって呼んだら肩がびくってしたけどどうしたのかな?やっぱりおじさんって年齢だった?それとも僕に馴れ馴れしく呼ばれて気持ち悪かったとか……うん、これっぽいな。

「…イルミ。イルミ=ゾルディック」
『「じゃあイルミちゃん!」』
「…今はギタラクルだから。誰にも言わないでね」 
『「んー。約束できないなぁ僕って口軽いからさ」』





『僕を殺す?』





そんな言葉がするりと口から出てきた。
何でだろう、僕は初対面の人にここまで容赦ない過負荷をぶつけるほど最低だったかな?…最低だったな、うん。

でも変なの。


僕がそう言ったら、イルミちゃんは何か言いたげにしていたけどその場から逃げるように消えてしまった。


変なの。


何だか頭が痛いや。
螺子、いい加減抜こうかな。



お久しぶりですお兄様、貴方は何処の誰ですか?
(…ミソギ)
(君は、本当にミソギなの?)

 

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