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第3回BLove小説・漫画コンテスト結果発表!
テーマ「人外ファンタジー」
- ナノ -



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「失ってから初めて君が大切だと気付いた」

というセリフは恋愛小説で既に使い古されていることだろう。


失う、ということはどういうことだろう。
単純な喪失ではない。

失うことには同時に選択肢を減らされることである。

失ったものに対する可能性、選択肢を強制的に奪われることである。

人間は自分以外のものから強制的に物事を決められることを嫌う傾向がある。
キルがいい例だろう。家族から将来のレールを敷かれ、あらゆる訓練を強いられてきた彼は結果的にそこから飛び出し全く違う人生を自分の意志で選択しようとしている。
もっと簡単に言うならば「勉強しなさい!」「今やろうとしてたのに!」という心理だ。

失うことは、強制である。

人間は強制されることを嫌う。

この二つを合わせると、このような心理が見えてくる。


"失うことで生まれる強制を恐れるために、その価値が上がる"


失いたくないから無意識にその価値を引き上げて強制されることを回避しようとする。
これは人間ならば誰しもあり得る心理だ。例え両親からの指示に逆らったことのない従順な兄さんでも。

この心理は、錯覚だ。

失いそうになるから大切だと思うのだ。
失ったものが戻ってくる可能性があるから大切にしようと思うのだ。


戻ってきてしまえば、その価値はまた暴落する。


僕があなたを兄と認めれば、あなたはまた僕を嫌うのでしょう。
僕があなたを愛すれば、あなたはまた僕を傷つけるのでしょう。
僕があなたを大切にすれば、あなたはまた捨て行くのでしょう。



そんな錯覚の愛情でさえも、いらないと拒絶できないから僕は愛されないのだ。



「大好きだよ、ミソギ」

『「うん」「僕も…兄さんが大好きだよ」』

こんなにも、大好きなのにね。


…………………………
心理的リアクタンス理論ってやつですね。
私の解釈ですので間違っている部分もあると思いますが、あしからず。
イルミの愛が本当に錯覚なのかどうかは…

 

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