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  もう一度、君と家族になりに行くよ


気がついたらまたあの教室にいた。

「思い出したかい、ミソギちゃん」

『「思い出したよ」「一から十まで零から百まで」「しっかりきっかりうっかり思い出しちゃった」』

「それは良かったね。これで君は1人じゃなくなったわけだ」

『「おかげで却本作り(ブックメーカー)が弱まっちゃいそうだよ」「困った困ったこれ以上弱くなるなんて」』

「ミソギちゃん、それは弱くなるんじゃなくて幸せになるっていうんだよ」

『「…幸せか。どうだろうね」「あの子は…あの子たちは」「僕を許してくれるかな」』

「相変わらずのネガティブシンキングだね。」

優しく笑っているように見える安心院さんは、実のところ何を考えているのだろう。
人外であり悪平等の彼女は清々しくも残酷にどこまでも平等だ。

『「安心院さん、ここでもっといっぱいお喋りしていたいのは山々なんだけど」「僕はそろそろ起きてもいいかな?」「これ別に死んでるわけじゃないんでしょ?」』

「うん。気絶してるだけだね。僕が無理矢理意識を引っ張ってきたから仮死状態かもしれないけど」

『なんてことしてくれやがる』

か弱い僕に追い打ちをかけるなよ!!
この人は結局ただの愉快犯じゃないんだろうかと思うんだけど。





目を開ければ見覚えのある天井。
それもそうだ。ぼくがここで目覚めるのは今日だけで二度目なんだから。

『「やあクラピカちゃん」「おはよう、素敵な朝だね」』

「ミソギ、起きたか。まさか一日に二度も同じセリフを言うことになるとはな」

「大丈夫ミソギ!?」

『「大丈夫だ問題ない!」「諸々ひっくるめてこれ以上なく僕は元気だぜ」』

「お前なんで倒れたんだ?これが原因か?」

レオリオちゃんがむんずと掴んだぬいぐるみを見て、僕は慌てた。
無骨な手からひったくるように奪って抱きかかえた。

『「ちょっとちょっとレオリオちゃん!乱暴に扱うなよ!」「そいつは僕の宝物なんだぜ!?」』

「宝物?」

『「11歳の誕生日に弟たち一同ってことでもらったんだ」「可愛いでしょーあげないよー」』

腕の中のそれに頬ずりをして自慢げに言ってやるとレオリオちゃんは"やるっつってもいらねぇよ!!"と負け惜しみを吠えた。ふふん正しく負け犬の遠吠えだね。

薄汚れてはいるものの清潔に保たれているぬいぐるみから、キルたちがどれだけ大切にしてくれていたか分かる。

ふっと自嘲するような笑みを浮かべると、クラピカちゃんがぽつりと言った。


「…待て。弟といったか?」

『「言ったね」』

「…思い出した、のか?」

『「思い出しちゃったね」「早くキルを迎えに行ってあげなくちゃ」』

「ミソギ!!やった…よかった!!キルア、喜ぶよ!」

無邪気に喜ぶゴンちゃん。
そうだね、喜んでくれたらいいんだけど。
僕は小さくため息をついた。本日2回目のベッドから起き上がり3人に向き合う。


『「改めまして名乗らせていただくよ」』


誰かによく似た黒髪を揺らして、誰かによく似た読めない瞳で、誰かによく似た食えない笑みを浮かべながら、彼女は名乗る。


『「僕の名前はミソギ=ゾルディック」「言わずと知れた暗殺一家の長女に名を置く最弱にして最低の殺し屋さ」』


以後お見知りおきを。
最低の名前と最悪の名字をよろしくね。


記念すべきミソギ=ゾルディックの復活だ。






その後、僕たちはゾルディック家もとにククルーマウンテンに向かう空路を探すことにした。

この世界には飛行機がない。ジェット機ももちろん無いし新幹線も無い。
現代人の僕からして見るととても古典的な、飛行船と汽車での移動になる。

『「僕の記憶が正しければククルーマウンテンはパドキア共和国にあるよ」「しっかりした飛行場もあるから定期便があるはずだ」』

「確かにあるな。出発はいつにする?」

「今日中!」

『「そういうと思ったよ」』

「オーケー。予約した」

さくさくとパソコンを操作していくクラピカちゃんの後ろで、僕はゴンちゃんと一緒になって興味津々になってそれを見ていた。
僕は携帯を全機種持っているけれどパソコンは苦手なんだ。

パソコンとか機械系に強い男の人ってかっこいいよね。
だからと言ってクラピカちゃんが好きだとかそういうわけではないけどね。




ピンク色の大事な大事な宝物と二度と失いたくない記憶を抱えて僕は7年ぶりに実家へ帰ることになった。

連れ戻されるのではなく自分の意思で、唯一無二の弟を救い出すために。

 

もう一度、君と家族になりに行くよ
(だから)
(また僕を姉と呼んでくれ)

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あんまり長くないですね。ごめんなさい…
次も短いかもしれないですね

 

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