×
「#オリジナル」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -






次の日から、丸井は変わった。

練習中はいつも通り。明るく、自信家でポジティブ。

パートナーであるジャッカルとは普通に話すし、切原や柳たちとも普通に接した。




でも、それは今までの丸井じゃなかった。




分かる。

分かりやすくしている。



その目に感情は浮かべず、拒絶だけを映す。

笑顔は貼り付けたもので、まるで仮面のようだった。

触れることはなく、近づけば逃げないが一歩下がった。



『桑原?どうしたんだよぃ?』


首を傾げながらガムを膨らませた。
顔を隠していくガムも、細められる瞳も、とても距離を感じるものだった。

その呼び方と変わらぬ声色の差は、ますます隔てを強固にした。



「な、なぁ文月…『名前、やめてくんね?』……悪い…ッ」


ガタガタの部活だった。
丸井一人が拒絶を露わにしただけで、こんなにも崩れた。


『あ、俺先行くなー』


ラケットを肩に担ぎながら、飄々と部室へ入っていった。





"仕方ないだろ?そっちが望んだ事じゃないか"



風に乗ってそんな声が聞こえてきた気がした。











「驚いたよ…」
「…?精市は分かっていたんじゃないのか?」


部室に入っていく無表情の丸井を見て、ぽつりと幸村が呟いた。
隣にいた柳が驚いて聞き返す。


「薄々ね…勘づいてた、くらいだよ。…まさか、あんなに変わるとは思ってもいなかった…」


苦虫を噛み潰したような顔をする幸村に、柳の表情はさらに曇る。
いつの間にか練習を終えてきた真田も隣へ来た。


「精市が責任を感じることはない。あれが本当の丸井だというのなら、俺たちはそれを受け止めるだけだ。」

「…そうだな。むしろ良く気づいてくれた、幸村」



「これからも共に戦う仲間だ。心から分かり合えなければ、勝利は掴めん!」



力強い真田の言葉に、幸村も柳も小さく笑った。














「丸井先輩…」

切原が制服に着替えた丸井を見ていった。
以前のように「文月先輩」と呼ぶことは許されない。



戻りたい。


あのときのような関係に…







否、違う。









今度こそ、本当に心許し、頼り合う関係になりたい…








自分は、先輩達をずっと見てきたはずだ。

違和感を感じることは出来なかったけど、気が付くことは出来なかったけど









今からでも、きっと遅くはないから。








俺は、

俺たちは






先輩を救いたいッス…









他人の悪足掻きを冷笑に伏した
(何やってんのかな)
(ホント…馬鹿じゃねぇの)






[ 6/20 ]

[*prev] [next#]
[ mokuji ]