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「だから…文ちゃんを見た時、すぐに分かったんじゃ…」


俺と、同じだって………



『…俺だって分かってた。だから、お前が好きで、嫌いだった』
「…俺もじゃ」





だって、まるで自分を見ているようで


鏡を見ているようで


その


大嫌いな自分の姿を






「文ちゃんが、"やめた"って言った時…すごく悲しかったぜよ。俺だけ、独りで置いて行かれた気がしたんじゃ…」

『…だから、ごめんって』


シンとした屋上。

昼休み終了5分前を告げる予鈴が、とても遠くで聞こえた気がした。


「ありがとう、仁王。話してくれて」

「あぁ、良くやった」

「…うむ」


せーいちくんたちが優しく宥める中で、あっけらかんと赤也が言い放った、一言。


「でも俺、仁王先輩が超ヘタレって知ってたッスよ?」



「「「は?」」」

蓮二、げんちー、ジャッカルが間抜けな声を上げた。

俺と仁王も驚いている。



「私もですよ。仁王くんが詐欺師なんて大仰なものでないことくらい分かってました」


ヒロもそれに続く。

眼鏡が光った気がするのは気のせいだ。絶対。




「な、な、な…ッ」




あ、仁王が混乱してら。
目をいっぱいに見開いてパクパクと口を開閉させている。



「だって真田副部長が怒鳴るたびにビクビクしてたし…」

「極力殴られないようにしてましたしね」

「合宿とかで嫌いな物とかこっそり捨ててたり」

「夜とか真っ暗な部屋で眠れないようでしたしね」



赤也とヒロが交互に言った。

…そっか、ヘタレだったのか仁王。


「文ちゃん!?そんな目で見るんじゃなかっ!」


あ、涙目。このヘタレめ。


って言ったら屋上の隅で泣き始めてしまった。ごめん。

ってかその図体で体育座りやめろよ、キモい。



「その図体で体育座り何てやめていただけませんか。気持ち悪いです」



ヒロと被ったー。あれ、ヒロのキャラが違う。こいつもある意味猫かぶりかよ。


「…文月くん?」
『………せーいちくーん』

「こら。文月を虐めちゃだめだよ、柳生」


俺何も言ってねぇのにギラッと光る眼鏡を向けてきたヒロは怖かった。
なので俺は何よりも頼りになるせーいちくんの所へ逃げ込んだ。

せーいちくんの背中に張り付いて隠れると、笑顔でヒロを止めてくれた。


せーいちくん格好いい!


「でしょ?」






あれ、俺何も言ってねぇのに。(二回目)


『っていうか。赤也気づいてたのかー…』
「仁王先輩は分かりやすかったッス」

「ぅ……うぐっ……」
「ウザいんでさっさと泣きやめくださいシバくぞ。」
「うわぁぁぁあああー!!!やぎゅの鬼畜眼鏡ぇぇええ!!!」

のの字を書き始めた仁王にヒロがボソリと呟いた。
何か、詐欺師コンビって言われてるのも頷ける。ていうか実はヒロが詐欺師だ。
ヒロの日本語おかしくなってるし。実は本性そっちだろお前。

これから仁王が大変そうだ、と思った。


で、一言言わせてもらいたい。





『仁王ーじゃねぇやヘタレー』

「ヘタレじゃなかぁぁああ!」


涙声で叫ばれても説得力皆無だし。




『お前、隠すの下手過ぎ』
「じゃ、じゃって……」



『でも、』






…――良かったな






同族は惹かれ合い、同族は嫌い合う
(うそ。大好き、だぜぃ)
(お、お、お…俺もじゃ!)



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