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俺は頭を掻き毟って崩れるようにしゃがみ込んだ。

何だ、なんだこれ。

あったかくて冷たいものがぐちゃぐちゃと、俺の中をかき回す。

てまりちゃんや弟たちが必死に落ち着かせようとしているけど無理だった。




頭の中が熱くて痛くて

心の中が冷たくて寂しくて

空っぽの本物と小奇麗な偽物が混ざり合って俺の心を蝕んでいく。

分からなくなった。

何も分からなくなってしまった。


強くならなくちゃいけないのに俺は全く強くなかったんだ。

俺は独りで頑張らなくちゃいけないんだ。

でもみんなにいてほしいと思ってるんだ。



分からない。

俺はどうすればいいのか分からない。




弟たちはてまりちゃんに促されて奥の部屋へ引っ込んだ。

てまりちゃんだけがぽつりと残っていた。

強く、決意した瞳で俺を見ていった。


「今度こそ、あたしがあかねちゃんを守るから」




そう言って、てまりちゃんも帰った。









俺はそのまま、全てから逃げるように眠った。


もう、やだ。


頑張りたくないよ。


誰かに縋りたい。


支えてほしいよ。


隣にいてほしいよ。







もう、つかれたよ……っ








それから一週間、俺は学校へ行かなかった。


家の中だけで過ごした。

赤也や蓮二が来てくれても、何も言わなかった。

一度、しつこく食い下がった赤也を頭ごなしに怒鳴った。

ジャッカルや幸村くんがこなかったのは、来ても無駄だと分かっていたからなんだろう。




それからは誰も来なくなった。

唯一例外に来たのは、てまりちゃん。



一日一日ちょっとずつ

俺に話を聞かせていった。




俺の世界にはまた新たに人が入ってきた。

少しずつ、俺を支えるモノが増えていく。

俺の世界が、開けていく。

空っぽだった世界は、とっくに宝物で溢れていた。




さあ、お別れの時間だ。













放課後になるまで部屋にいて、誰にも見つからないように部室へ行った。

黒いパーカーのフードを深くかぶった俺にみんなは驚いた目を向けていた。

隣で俺の手を握っているてまりちゃんが俺以上に震えていてふっと頬が緩みそうになった。


「丸井、もう大丈夫なのかい?」

『……分かんない』


小さく、ゆっくりと口から漏れるのは恨み言だ。

これは紛れもない怨嗟。

怨嗟の皮をかぶった本当の言葉。



『みんなのせいだ』



部室の空気が固まった。



『みんなが、そばにいたせいで、俺は分からなくなっちゃった』



あのまま独りでいられたら

何も感じない空虚でいられたら



『知りたくなかった』


この場所が愛おしいと


『気づきたくなかった』


大切にされていると


『独りで、いたかった』


そう思い込んでいた自分の本心を見たくなかった。





『でも、決めた』





ずっと逃げてきた。


だからもう逃げない。


自分の過去から逃げるのはもうやめる。


わたしから目を逸らさずに


まっすぐに見つめよう





『全部話すよ』






空虚なお人形さんにばいばい
(はじめまして)
(これが、醜い惨めなわたしです)

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