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 人を愛する殺人鬼



「折原臨也は人間を愛している。これは周知の事実だよね。池袋の人間ならばたいていが知っているような一般常識だ。俺は人間のあらゆる感情を行動を言動を存在を愛して愛して愛して愛している。だから俺は人間じゃないものには興味がない。そして人間の害となる人外を心の底から嫌悪している。首なしライダーと騒がれるデュラハンには興味がなく、人を人ならざる化物にしてしまう妖刀を嫌っている。もちろん…殺人鬼だって大嫌いさ。だって読んで字のごとく人を殺す鬼なんだよ?理由もなくただ呼吸のために人を殺す存在を嫌わずに人間好きを名乗れるかい?そんなに殺しがしたいなら身内同士で殺し合ってろって話だよ。うん、だからね。何が言いたいのかっていうと俺は殺人鬼の存在を肯定しているわけではないってことだ。存在すらも許したくはない。デュラハンよりも妖刀よりも怪力化物よりも認めたくない下劣で卑劣な集団だ。しかし勘違いしないでほしいことが一つある」


両手を広げて空を見上げる。
口から溢れ出る水のような言葉が広がる赤と混じって"彼女"の体を冷やしていく。


「だからといって、俺は俺を否定しない」


体が震える。
脳が死への恐怖で満たされる。


「人間は好きだ。人間は俺を愛してくれないけれど俺は人間を愛している。殺人鬼は嫌いだ。殺人鬼は俺を愛してくれるけど俺は殺人鬼を愛さない。」


目の前にいる黒いコートの人影は、確かに自分を愛おしげな眼で見ているのに。


「けれど大切だ。呼吸のための人間よりもはるかに大切な家賊だ」


腱を切られた両足の痛みよりも、その視線が痛い。


「さて、ずいぶん長い俺の一人語に付き合ってくれてありがとう。俺は君を愛しているよ。何故なら君は人間だから」



だがしかし。
そう呟いた瞬間に、彼の瞳から一切の熱が消えた。



「愛と呼吸は別問題だ」



振り下ろされた三日月の如き白刃が、最期の記憶



「以上、零崎愛識でした」






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