何か豪華な建物でした。
いつの間にか右手の痛みはなく、ふわふわと漂うような微睡みを楽しむ。
すごく柔らかくて暖かいものに包まれている。
でも、森の中みたいな新緑の匂いがしない。
おかしいな…と思って目を開けて、冒頭。
…どこ、ここ。
絶対トキワの森じゃない。
近辺の街でもなさそう。
何の建物なんだろう…まるで王様が住んでるお城みたい。
ガチャッ
あ、誰かきた!でも匂いが全然しない!?
ぴゃっ!とわたしは咄嗟に布団に隠れた。
ちなみに何故野良のわたしが布団とか知ってるかというと、サトシとかに聞いたから!
サトシのピカチュウとは仲良しだったのだ!
「目が覚めましたか?」
『ぴっ…』
優しそうな男の人の声だった。
でも何で匂いがしないのかな…?
「怪我はどうですかね…」
怪我?あ、わたし怪我してるんだった。
右手を見てみると白い包帯が巻かれている。
この人が治療してくれた…?
「おなかは空いてませんか?」
くきゅるるる〜
…………。
「……ぷっ」
なんて空気を読まないおなかの音!いやむしろ読み過ぎ!
笑われちゃったよ!そりゃあ笑うよ!
「あなたがなにを食べるか分からなかったのですが、とりあえずフルーツとココナッツミルクを持ってきました」
ココナッツミルク?ってなに?
おいしいの?
ちょっと興味が出てきて布団から顔を出す。
声がした方を見ると、緑色の布を被っているそばかすのお兄さんがいた。
雰囲気も声の通り柔らかい。
のそのそと布団から這いだして平べったいお皿に近寄る。
「どうぞ。」
『ぴっか!』
ぺろぺろぺろ…こくんっ
甘っ!うまっ!
すごいおいしいよこれ!お兄さんありがとう!
「おいしいですか?」
『ぴっかちゅ!』
うんっ!と大きく頷いて満面の笑みを浮かべる。
すると、お兄さんはすこし驚いたように尋ねてきた。
「…言葉が分かるんですか?」
『ぴかぴかちゅー』
あったりまえでしょ!という意味を込めて鳴けば、お兄さんはますます驚いたようだった。
「こんなにも知能の高い動物は初めて見ました…あなたは何なんです?兔?」
『ぴかぴか』
違うよー。
「ではネズミ?」
『…ぴかちゅ』
まあそうなるのかな…電気鼠、なんて失礼な呼び方したら怒っちゃうからね!そこんとこよろしく!
「ネズミですか…しかし言葉も分かるようですし…あの感触…」
なんかおにいさんがぶつぶつ言っている。
「あなた、私に飼われる気はありませんか?」
なんですとー?
(つまり)
(バトルとかしなきゃいけないのかな?)
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