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  赤銅色の針は進んで




木を隠すなら森の中

蛇を隠すなら…








『…今んとこは、問題あらへんね』

[主さんは隠すの上手ぇからな]



霊圧を取り戻して早1年。

小学校という面倒くさいことこの上ないものに通い出して数ヶ月。

今のところは何もない。

時折、姿を見せる虚も人が直接襲われてなければ手を出していない。

…というか



『どうやって死神化すればえぇんか分からんねーん☆』

[☆じゃねぇだろ主さん。どうすんだよ]

『何とかなる気がするぅー』

[生まれ変わっても変わんねぇなオイ]


生まれ持ったお気楽さは後世にも受け継がれてしまったようだ。

けらけらと笑って黒いランドセルを揺らす彼女は下校中だった。


「銀露ちゃーんっ!銀露ちゃん待って待っ て!」

『んぉ?あぁ雅治や…。隠れぇ神鎗』

[あぁ]


しゅる…白蛇の姿になった神鎗は服の中に潜 り込んで左腕に巻き付いた。

こいつが来てからと言うもの、ピッタリとした服が着れなくなってしまった。

まぁ元より洋服よりも和服のようにゆったりした服が好きなのでいいのだが。


「銀露ちゃんとクラス別れてから一緒におられんで寂しいぜよ…!」

『あーはいはいそうやねー』

「適当すぎるなり!」

『適当やないでー』


右腕に縋ってくる雅治に、内心は冷や冷やだ。

これが逆だったら危ない。ボクの魂の一片が潰されるとこやった。

…まぁそんなんで潰れるわけないんやけど。


『(まあ死神になれんでも不自由は…)… ん?』


ふと立ち止まった。

そこは一見ただの古びた駄菓子屋だ。

…そう、霊圧のない者には分からない精密な結界が張られた店だ



『(この霊圧……知っとるなぁ)』



同じことを考えている男がもう一人、



「(この霊圧……微かだが、まさか!)」










『雅治、ボク学校に忘れ物してん!ちょお先に帰ってぇな♪』

「え?なら俺もついてく!」

『えぇってえぇって、ほら行き!』

「お、おん…」


にっこりといつものポーカーフェイスを向けると、雅治の顔が真っ赤に染まる。


あー…ちょっと罪悪感。

雅治が自分に惚れていることなどとうに知っている。

イタズラの類は好きこのんでやる自分だが…人の心を弄ぼうとは思っていないのだから。


『(こっちもこっちで大問題や…こんなガキに惚れられてもなァ)』


只でさえその小さな背丈と銀髪は"彼"を彷彿とさせるというのに。

唯一の救いは彼の瞳が金色だったことだろう。これがあの翡翠だったらと思うとぞっとする。

"彼"と同じ色を宿した者に思いを寄せられるなど…拷問にも等しい行為だ。

雅治を帰し、ガシガシと銀髪をかき混ぜた。

むかしは乱菊に小うるさく言われ、まるで男のように短く切り込んでいた髪も背中まで伸びた。

スタスタと店に近づき扉の前で止まる。




ガタン!




奥から大きな音が聞こえた。

足音が近づくにすれ、口角が上がってゆく。


ガラッ!!



「まさか…ッ!」


『どうもお久しゅう、




           浦原喜助?』
 





あちらのことを知る、千載一遇のチャンス。

今日は気まぐれに通学路を変えて良かった。

薄く目を開き、水色の奥をちらつかせた。






赤銅色の針は進んで

 

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