勿忘草の誓いを秘めて
銀露…
あんた、何で死んだりしたの?
私は…ただあんたと一緒にいたかっただけなのよ…
銀露……私はあんたに…
「まぁーつーもーとぉぉぉおお!!!」
「きゃー隊長ってばそんなに怒ったら血圧上がりますよー?」
「誰の所為だと思ってやがる!!」
今日も、一日はいつもの通りに回っていく
あんたのいない時間が…どんどん重なっていく。
でもね、私の中でのあんたはまだまだ鮮明よ。
何百年も一緒にいたんだもの。
何百年も追いかけていたんだもの。
「緊急集会だ、松本」
「きんきゅう?何かありまし……」
「そうだ。この間の…霊圧」
現世で突如現れた、隊長格とも劣らない絶大な霊圧。
何の前触れもなく現れたかと思うと、技局が完璧に捕捉する前に消えてしまった謎の霊圧。
それについての集会だった。
「…隊長」
「?どうした?」
日番谷は思い詰めたような松本の顔に、眉を 寄せた。
彼女がこんな表情をするなんて珍しい。
「…銀露の、」
「!?」
日番谷が言葉に詰まる。
市丸銀露。
彼女の幼馴染みで、かなりの戦闘力を持っていた元隊長。
藍染の元に単身で潜り込み、盗まれた彼女の魂魄を取り返さんと死力を尽くした人物。
「銀露の、霊圧でした…」
「…何?」
「間違えるはずがないんです…あれは銀露の霊圧ですッ!!」
叫んだ。
自分が間違えるはずがない。
彼女の霊圧を、推し量り間違える何てありない!
「…そのような申し出が、もう一つあって のぉ」
「総隊長!」
廊下の前方より、総隊長たる山本が歩いてきた。
もう一つ…?
「僕から…です」
「吉良!」
松本が青年の名を呼んだ。
彼の名は吉良イヅル。
銀露の部下…一番身近にいた人物だ。
「僕だって…ずっとあの人の側にいました。間違えるはずありません」
そう言って、吉良はぐっと手を握りしめた。
感じているのは憎しみではない。
胸に穴があるような喪失感…そして僅かな希望。
いるかもしれない。
彼女が、現世に…
「それに関しての緊急会議じゃ。早急に集まれい!」
「「「はい!」」」
三人は揃って返事をして、集会場所に向かっ た。
勿忘草の誓いを秘めて
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