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  また明日、ミーの可愛い悪魔さん


ベルとフランが再会した同時刻。

帰路に就いていたとある少年が突如倒れ、救急車で運ばれた。

少年の名前は切原赤也。

とある少女に忠誠を誓った悪魔だった。













「…おもいだした」


少年は真っ白な病室で呟いた。

真っ赤に爛々と輝く瞳で怨嗟のように。



思い出した。

すべて、脳裏にはっきりと浮かぶ。

自分が作り出した赤。あの方が作り出した紅。

最期の声も、最期の瞬間も。

自分の首に自分の暗器を突き立てた瞬間も。

何も知らない自分の隣で全てを知っていたあの翡翠色の苦悩も。


「また…同じじゃねぇかよ…っ」


また、自分は何も知らなくて
また、自分は全て忘れていて
同じく、あの方は独りきりで
同じく、孤独に苦悩していた


「フラン様……ベルフェゴール様…」


思い出したなら、変えればいい。

あの方の苦悩の種を一つ残らず禍根も漏らさず根こそぎにしてしまえ。



『やっぱりあんた、アカヤだったんですねー?』

「!!」



溶けるようにガラスが消えた窓枠に、闇から滲み出るように翡翠が現れた。

あの頃と変わらずのらりくらりと掴めない雰囲気を纏ってそこにいた。

あの頃と変わらないということは、"今"とは違うということだ。

平凡で凡庸な世界に浸っていた人間の纏う空気じゃない。


「フラン様!」

『うわ。違和感ありますねー。今まで霧咲呼びでしたしタメ口でしたし』

「申し訳ありませんでした!!」

『いやいいんですけどねー。同級生ですしー』

「光栄です!」

『生まれ変わっても変わらないですねーあんたは。何なんですか先輩から聞きましたよ』

「う……っ」

『仲間の屍は踏みつけて進めと言ったはずですよねー?目を逸らさず直視して刻み込んで痛めつけて冒涜して越えていくようにと』


霧ならば、その冷酷さと残忍さを隠し通して進むべし。

暗殺者であるならば、仲間の屍など踏み越えて当然のこと。


「貴女の、死体は、ありませんでした」

『そんなの屁理屈でしょう。それは精神が脆弱だからですー。術士として致命的ですよー』

視線を逸らしながら震える声で言葉を紡ぐかつての部下で現在の同級生に、フランは嘆息した。






『またミーが1から鍛えてあげるしかないみたいですね』






「!!」

バッと視線をあげた。
改めて真っ直ぐに視線を合わせれば、翡翠色の右目と真紅の左目。

そして、

酷く儚く朧気に、優しく微笑む主がいた。


「俺を…また、使ってくださいますか」

『部下としてならこき使ってあげますよー』

「これ以上ない幸せです…」


視界が滲んだ。
この方のために尽くせる手がある。足がある。力がある。術がある。

それだけで十分だった。



「俺、イタリア行きます!」

『?』

「身体が訛りすぎです。こんなんじゃ貴女のお役に立てません!ヴァリアーで鍛え直してもらってきます!」

純粋な戦闘能力だけでなく、技術や経験や勘、反射神経なども過去と比べれば歴然とした差がある。

日本という良くも悪くも平和な国では取り戻せないものばかりだ。


『いやいやアンタ、テニスどーするんですか。義務教育すら終わってないですしー』

「テニスは…や、やめます!」

『…別にいいんですよーそんなにミーに尽くさなくても。アンタはアンタで生きてくれなきゃ困りますー』

「で…ですが、」

『ミーは18になるまで幹部候補生ですし、中学卒業までは日本にいます。イタリアに飛ぶのはそれからでも十分ですよー』


ひらひらと手を振って話すフランの後ろから、同じく滲むように金色が現れた。


「よっ!お前も生まれ変わってたのかよ。驚いたぜ」

「ベルフェゴール様!」

『何しにきたんですかー?』

「ちょっ、冷てぇな!彼氏に向かって!」

『標準装備なんで諦めてくださーい。』


言葉のキャッチボールどころか岩石のぶつけ合いのような会話が繰り広げられる中、赤也は先ほど引っかかった言葉を反復していた。




…彼氏?




「彼氏ィ!?」

『…はぁ、まあ。成り行きで』

「成り行き!?んなわけあるかボケガエル!」

「ベルフェゴール様落ち着いて!(ただの照れ隠しだからソレ!)」



どたんばたんザクザクドスッ!という物騒な音が病室に響く。

何事かと思った看護士が様子を見に来るが、そこには眠り続ける少年しかいない。

気のせいかと看護士がドアを閉めたところで藍色の霧が拭われた。



『術自体はあんまり弱ってないみたいですねー』

「一般人だから騙せただけッスよ…全然駄目ッス」

ぐーぱーと手のひらを動かして霧を出し入れするが、赤也にしてみれば脆弱にしか見えない。

「?お前そんな言葉使いだったっけ?」

「あ、なんか日本(ここ)で暮らしてたら慣れちゃったんで」

『それは別にどうでもいいですけどー。赤也、英語とかフランス語とか大丈夫なんですかー?英語赤点常連さん』

「うわ、英語もできねーとか…」

「うっさいッスベルフェゴール様!大丈夫ッスよ!つーか今となってはなんでできなかったのか分かんないッス…」

ヴァリアーの入隊条件は文武両道。最低でも七か国語は喋れなくてはならない。
前世ではもちろんその条件をクリアしていた赤也としては、簡単な英語もできなかった自分が信じられない。

『便利に記憶が戻ってよかったですねー。じゃ、特に心配はないってことで今日は帰りますねー』

「フラン、家泊めてくれんだろ?」

『アパートの廊下で良ければー』

「それ外じゃねーか!!」

「あ、えっと、俺なんかの為にわざわざありがとうございました!おやすみなさい!」





『A domani, Il mio Signore diavolo』




また明日、ミーの可愛い悪魔さん




(さあ)
(非凡な世界の幕開けだ)



………………………………

赤也成り代わりでもないのに英語ペラペラ赤也が出てくるのはこのサイトくらいであろう。

あとなんかすんなり"ボケガエル"って出てきたなって思ったらあれですね、ケ○ロ軍曹ですね。

フランはケ○ロファンかはたまたあんなのカエルじゃない!という否定派か。

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