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  背中に衝撃、背後に轟音


たまの休日。

俺、柳蓮二は友人である真田弦一郎と共に同じく友人である幸村精市のところへ見舞いに行く予定だった。


我が立海男子テニス部部長である精市は"神の子"という異名で呼ばれるほど、いっそ神々しくさえある無慈悲で絶対的なテニスをする奴だ。



そんな彼が原因不明の病で倒れたのは中二の冬。



あいつが練習中に突然倒れ、救急車で搬送されていったのを空しく見送ったことは記憶に新しい。


精市は病にも悲観することなく(一時期はあったが)今はリハビリに明け暮れている。




「部員達の様子はどうだ?」

「見た所特に目立った問題はない。メニューをそろそろ変えた方が良いかもしれないな」

「今日はそれも話し合うか…」

「そうだな。精市もいてくれた方がいい。」


横に並んで歩く弦一郎の片手には果物が入った袋がある。

丸井たちと見舞いに行く際はケーキ等が多いが、何分男二人でケーキショップにはいるのは少々戸惑われる。

丸井はまったく気にしないがな。




「…そういえば最近少し暑くなってきたか?」

「そうだな。季節的には初夏といってもいい頃だ」

「ふむ…こまめに水分をとらせるようにしなくてはな」

「季節の変わり目だ。体調の変化にはよく目を凝らしておこう」




歩きながらも精市に報告すべきことやこれからの部活に関することを話し合う。


俺が"熱中症が発症する確率72%だ"と続けようとしたときだった。

















キキキキキッーッ!!!という甲高い音がすぐそばで聞こえたかと思うと、背中に強い衝撃が走った。










走った、というレベルではなく、中学生にしてはかなり大きい方に入るであろう俺と弦一郎がまとめて数メートルも突き飛ばされた。





「…ッ!」

「大丈夫か蓮二!?」

「…あぁ、問題はない。怪我は…!!?」




俺は辛うじて受け身をとることができ、怪我はない。武術を心得ている弦一郎も当然受け身をとったようで無事だ。


しかし、開いた口が閉じられなくなるほど衝撃的な光景が広がっていた。








横転した大型トラック、拉げたガードレールに砕けたアスファルト。








そして何より…




「なっ!?女子…か!?」

「あ、あぁ…まさかこの子が…」







俺たちの少し後ろ、正確に言えば俺たちよりもトラック側に近い位置に女子と思われる体躯の子供が倒れていた。



倒れていただけではない。






体…特に頭部から夥しい量の血が溢れていた。

鮮血であるに違いないそれは文字通り赤々と地面に広がり吸い込まれていく。







綺麗なエメラルド色の髪は地面に散らばり、皮肉にも太陽を浴びて飛び散る血液と共にキラキラと輝いていた。


「まさか…俺たちを庇って…!?」

「…確証はないが、その可能性は限りなく高い。」

俺も弦一郎も声が震えている。


この出血量。

見ただけで重傷だと分かるほどのものだ。




これが、俺たちを庇った所為で…




俺は立ちつくす弦一郎の隣りに座り込んだまま下唇を噛みしめた。







…………

事故っちゃった!

そしてヒロインの運命や如何に!








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