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  意外な事実


翡翠の少女が消えた後、幸村は仮退院が認められた。

まだ万全とは言い難く、通院も頻繁に繰り返さなければいけないのだが、それでもこれは大きな進歩だった。


「おめでとーございますっ!幸村部長ーっ!」

「赤也ぁああ!幸村に飛びつくな!」

「まあいいじゃないか弦一郎。今日くらいはな」

「む……」


喜びのあまり幸村に飛びついた赤也が真田に怒鳴られた。

柳が押さえたが、赤也の気持ちは全員が分かっている。

立海レギュラーが全員集まり、ファミレスで簡単な祝賀会をすることになった。


「俺がいない間、何か変わったことは?」

「部活全体の士気がやや減少したな。俺達も頑張ってはいるが」

「一人抜けたくらいでたるんどる!」

「それは幸村くんがすげー存在だってことじゃん!」

「ふふ、ありがとう丸井」


わいわいとファミレスの一角で騒ぐ一同を、従業員を含め、大勢の人間が熱い視線を送っていた。

それもそのはず、レギュラーは皆とても顔が良い。


「うーん…相変わらずだなぁこの視線も」

「あー鬱陶しいなり」

「そんなことを言ってはいけませんよ仁王君」

「でもホントの事じゃないッスかー」


女子の熱い視線に男子の嫉妬、それらには慣れてきたもののいい加減うんざりしていた。


「うちにマネージャーがいないのもこの所為なんだよね…」

「男子は俺達の中に入ってきたがらない。女子ははなから仕事などしないし…俺達の士気に関わる」

「自己管理だけでは補いきれんか…」

「あ!だったら!」


丸井とフライドポテトの奪い合いをしていた赤也が元気良く挙手した。

爛々と目を輝かせ、立ち上がる。


「俺、良い奴知ってます!俺達のこと知らないって女子なんすけど!」

「へぇ…」


ぱっ、と数名の脳内に一人思い浮かぶ。

神出鬼没で大胆不敵。

デフォルトの無表情を崩すことなく接してくる………


「名前、分かんないんすけど、緑色の髪してて…」

「ほう……?」


キラッ、と柳の目が開き、素早くノートを開いた。


「身長は150半ば、薄緑のショートカットで右目を隠している。左目は翡翠色で目の下に逆三角形で藍色の痣がある。服装はサイズの大きいセーターで下はハーフパンツ、ワイシャツは襟を立てて着用。小さめのロリポップを好み、表情は常に気だるそうな無表情。語尾を伸ばした喋り方で口調は敬語、神出鬼没で不思議な雰囲気を纏っている。容姿から見るに中学生であることは決定的だがそのような容姿の生徒は立海大附属中学には在校していない。」

「な、何で知ってるんすか柳先輩!?」

「つーか…」


驚愕を露わにする赤也に続き、丸井、仁王、幸村が反応する。


「俺もそいつ知ってるぜぃ!」

「俺も会ったことあるせよ」

「俺も病院の屋上で…」

「ほう……?」


ますます興味をかきたてられたのか、柳は急いで新しいページに書き連ねた。

少女を知らない柳生とジャッカルは何のことかと首を傾げている。


「旧校舎の屋上で会った!」

「俺もじゃ。すーぐ逃げられてしもたけどのぉ」

「俺もそこで会ったつーか、助けて貰ったっす!部長達は…?」

「俺と弦一郎は、精市の見舞いに行く途中に車に轢かれそうになったところを助けてもらった」

「あ、じゃあその後かな…?病院の入り口で頭から血を流して倒れたんだよ」

「なっ!?血糊だというのは嘘だったのか!?」

「良い人ですね…」

「ホントだな」


次々と出てくる証言に、幸村の口角も徐々に上がってきた。



「その子は俺達には全く興味がないようで、しかも柳に見つからないくらい姿を隠すのが上手い。これは、良いんじゃない?」

「そうだな。女子からの嫉妬も上手く交わすことが出来るだろう」

「何の話っすか?」

二人の話が読めた仁王はにやりと笑った。

状況が理解できない丸井や赤也達は首を傾げている。





「その子に…マネージャーを頼みたい」





凛、と変わらぬ威厳を持って幸村が言った。


「みんな…死ぬ気で探すよ」

「「「「「イエッサー!!」」」」」







(必ず君を見つけてみせる)



…………………

マネージャーフラグ。

マネに就任したらすぐに師匠のターンです






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