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  全てを忘れて馬鹿みたいに楽しくやってたお話


一悶着の末に僕と比呂士は恋人同士になった。

僕が精神は女で肉体は男という、ある種の性同一性障害のような状況であるため世間一般には受け入れられがたいカップルだ。

けれど、僕も比呂士も欠片も気にしちゃいない。

僕は比呂士がいればいい。比呂士あっての僕の世界なんだから。

若も雅輝もお祖母様もお祖父様も大切で大好きだし、宍戸と向日と芥川も嫌いじゃないよ。

その全ての根底に"柳生比呂士"があるというだけで。



比呂士はというと、僕とは少し違うみたい。

正直僕よりひどいと思う。

世界の全てが僕で、僕以外のものは石ころと同じかそう変わらない…らしい。

すごいねぇ。他人事のように感心しちゃう。

でも、それはとても心地良い愛情だ。


普通の人には重すぎるかな。僕にとってはその重さが丁度良い。もっと重くても良いかもね。
だって僕は人一倍愛を受けずに育ってきたから。注いでも注いでも満ち足りやしない。
もっともっともっともっと、渇望してしまう。


愛したい比呂士と愛されたい僕。なんて理想的な恋人だろう。


共依存、狂依存。だからなんだ文句があるのか。


僕らはこんなにも愛し合っているじゃないか!!


だから、僕は、とても幸せだった。


この世界に生まれてしまってからもうすぐ10年。


僕は忘れていた。


この世界のこと。


自分自身のこと。


全ての運命のこと。


僕は


僕は






この世界にとっても"不要"であることを


全てを忘れて馬鹿みたいに楽しくやってたお話
(そうか)
(僕は俺ではないのだった)

 

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