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第3回BLove小説・漫画コンテスト結果発表!
テーマ「人外ファンタジー」
- ナノ -



  大空は困惑した


炎真たちシモンファミリーとは和解できた。
虹の代理戦争も終結した。
アルコバレーノの呪いも解けた。
継承式も終わり、幸村市華は正式なボンゴレ]世に就任した。

しかし未だ学生であり未成年のため、本格的に仕事が始まるのは成人してからということになった。

今は書類を安全なルートで送ってもらい、仕事に慣れることを目下の使命としている。


と、いったものの、


穏やかな学生生活を満喫している毎日だ。

そんなある日の昼休み。
いつものように屋上でファミリーと輪になってお弁当を食べていたときの、死神の一声。


「よし、オメー等テニスやれ」


……………。



『いきなりどういうことー!?』

全員が固まっていた中、突飛な発言に慣れている市華が最も早く覚醒し、ツッコミを入れた。

「怨敵共はみんな全国区のテニスプレーヤーだって言うじゃねぇか。敵は相手の土俵で倒してこそだろ?」
『って今から始めるのに!?何年かかると…』
「一年でやる」
『絶対無理でしょ!?』

空に吸い込まれるような大声を上げて困惑する市華とそれを微笑ましそうに見ている柳。
離れたところにいる守護者たちは先はどのリボーンの発言について協議していた。

「テニスかー獄寺やったことあっか?」
「…小せえ時にカジった程度だ。素人と変わりゃしねーよ」
「僕もありませんね。娯楽など嗜む立場ではありませんでしたし。…貴方は?」
「俺は極限にボクシング一筋だぁああ!」
「…だと思いましたよ」
「僕もやったこと無いよ。」

結論は全員ズブの素人だということ。
常識的に考えればよほどのことがない限りたった1年で全国区レベルに到達するのは不可能なのだが…

「お前等よーく考えろよ」

選ばれし七人の中でも一目おかれる天才、リボーンの言葉で常識はひっくり返る。

「全国区ってことはそいつらはテニスに関しては馬鹿高ぇプライドを持っているはずだ。それを無名のテニス部、テニス歴1年のお前等に負けたらどう思う?オラ、市華答えろ」

『え、私!?たぶん…ショックじゃないかな?』

「10点だな。柳!」

ぼんやりとした答えになってしまった。市華は王者と呼ばれるテニス部の敗北した様を思い浮かべることができなかったのだ。より正確に言うならば、敗北した兄なんて想像することも不可能だった。
辛辣な採点にがっくりしつつ、柳の回答に耳を貸す。

「俺のデータでは小学生の頃からテニスをやっているものが多い。生活の大半をテニスに費やし、テニスは人生そのものと言ってもいい。それをぽっと出の俺たちに敗北すれば人生の否定人格の否定となる。それだけでなく今まで培ってきたものはたった1年で片付けられる程度のものだったと知れば精神的ショックは計り知れない。軽くてトラウマ、最悪は精神錯乱状態になる可能性もある。肉体的には誰も傷つかない、暴力を嫌う市華にとっては良い復讐方法だ。さらにファミリーの絆を見せつけ橘に悔い改めさせることもできる。」

まるで原稿を読み上げるアナウンサーのごとく淀みない長文解答。
隙のないその言葉に守護者たちの目の色が変わっていく。

…というか、目が据わっていく。

「流石だな。100点の解答だぞ。で、どうする?」

「やります!」
「やるのな!」
「極限にやるぞ!」
「やるよ。」
「やりましょう。」

『えぇえええっ!やるのーッ!?』

何でみんな即答なの!骸と雲雀さんの目が輝いて…違う、ギラついてる!
危ないよ!絶対あれは殺る気の目だよ!

と焦りまくる市華の肩を柳は慰めるように叩く。
その気遣いにほっと気を緩める市華だったが、はたと気づく。

『火付け役貴方じゃないですかーっ!!』

「火付けをしたわけではない。俺はファミリーのためにデータから予測できる未来を告げただけだ。ただし…」

薄く目を開いた柳は言う。



「そうなればいい、というかなってしまえという気持ちが83%くらいあったが」



…………オイ。

『ほとんど私情!?っていうかその3%なんなんですか?気持ちなら切りよく80でいいのに!』

「気分だ。」

『気分なの!?あ、なんですか!?』

ついつい敬語がはずれ気味になる市華に、それをわかっていて楽しげに軽い調子で会話をする柳。

ほのぼのしているところ申し訳ないが、柳の背後が殺気とかいて"やるき"と読むもので満ちている。


「顧問には俺が入ってやる。部長はイチで副部長が柳だ。会計は獄寺でいいだろう。…どうだ?ボンゴレ]世」

『私情しかないことにボンゴレ持ち出さないでよ…』

「馬鹿いえ。これはボンゴレの威信に関わる問題だぞ」

『え…?』

「新・ドンナボンゴレに手を出した一般人を野放しにしておくなんて敵対ファミリーに知れたらことだぞ。それは弱みになり、無用な抗争を生むかも知れねーだろ」


う、と市華は言葉に詰まった。
確かに市華はまだ若いどころか幼く、しかも女性だと言うことからナメられることが多い。
敵対ファミリーは躍起になって新・ドンナボンゴレを引きずり落とす要素を探っている。
たとえ小さいとしても、火種となりえるものは根こそぎ排除するべきだ。 

『でも掟には引っかからないの?マフィアが一般人に…』

「武力行使にでなけりゃいいだけの話だ。より正確に言えば"不殺"でさえあればマフィアは自由だ。その分争いが増えるがな…」

『…自由のせいで、』

「ああそうだ。だからわずかな弱みも見せちゃならねぇ」

自由は必ずしも良いものでは無い。
だからこそ裏社会が無法地帯と化して表に影響がでないように"ボンゴレ"という絶対的にして最強の"枷"…抑止力が必要となるのだ。

「それにファミリーのモチベーションも上がるぞ」

『そうかな?』

「そうだろう。見ろ、奴らはやる気だぞ」

『やる気って言うか殺る気だよアレ。一般人に手を出したらヤバいんじゃ…』

「復讐者はもういねーし、そんなことにならねぇようにお前がストッパーになるんだ」

もっともらしい理由を並べ立てるリボーンに勝てるはずもなく、市華は丸め込まれた。
そっとため息をつきながら、そう遠くない未来に再会する兄とその仲間と女を思い浮かべ……すぐに消した。


今はもう、関係ないのだ。 

兄であろうとボンゴレに徒なす輩は許さない。





今の私は、


世界最大のイタリアンマフィア、ボンゴレファミリー

その、十代目ボス。

ボンゴレ]世。





もう、"幸村精市の妹"ではない。





「並盛中学合同テニス部発足…だな」
『そうですね。これから忙しくなりますね。』





大空は困惑した
(けれどそれは、愛しい困惑だった)



………………………………………
新章突入!
合同テニス部なのは市華が女の子だからですね。


でも一つ問題があるんですよ。
獄寺のボンゴレギアってバックルじゃないですか。

…ユニフォームにどうやってつけんの?ってことなんですよ。

山本はネックレスで了平はバングルで雲雀はブレスレットで骸はイヤリングで市華と柳は指輪で……1人だけテニスウェアとの違和感がハンパない!

全く考えてなかった…どうしよう。

 

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