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  大空のための舞台


大会中であっても練習は欠かさない。
立海には昔からそんなしきたりがあり、幸村たちもまたそれを守っていた。

だが、いつもは生徒たちに部活動のほとんどを一任している顧問から呼び出されたためその練習を途中で抜け出し、幸村は職員室へ向かった。


「…え?大会が延期に?」

「大会最終日は1週間後に変更されたそうだ。なんでも運営側の都合とかでな」

「そうですか…分かりました。部員に伝えます」

「ああ、それともう一つ…」

「え?」



話が終わり、紙の束を片手に珍しいこともあるものだと幸村はさして考えることもなくテニスコートへ戻る。

しかし、


「美世先輩っ!今のスマッシュ見てました!?仁王先輩からノータッチエースっすよ!!」

「すごーい!見てたよ赤也!」

「ふっ、たった一球決まっただけで喜びすぎじゃ。そんなんじゃ足元掬われるぜよ」

「こーゆー1球が大事なんすよ!」

「美世、俺を見ときんしゃい。これからこの生意気なクソ後輩をズタボロに負かしちゃるけぇの」

「うんっ!2人ともがんばってねっ」


この有様だ。

真田は一人で自主練をしているし、仁王と赤也は審判も得点板もつけない試合もどきを勝手にやっているし、丸井はそれを見ながらお菓子を食べているし、柳生は丸井を注意しつつも練習はしていない。
ジャッカルの姿が見えないが、大方まじめに練習しない相方を放って外周にでも行ったのだろう。

幸村はコートの入り口で溜息を吐いた。


「あっ幸村部長!顧問の先生、なんて話だったんすか?」

「…今からその話をするよ。レギュラーは集合!」


影を落としている幸村には気がつかないまま赤也たちは集合し、彼の話に耳を傾けた。


「明日の関東大会最終日は1週間後に延期だそうだ。各自モチベーションは落とさないようにね」

「えええええ!!何でッスか!?せっかく俺シングルスの試合だったのに!」

「運営側の都合だそうだよ。蓮二、何か聞いて…」

誰もいない隣に話しかけた幸村を見て、真田はぐっと眉間にしわを寄せた。
部員たちにも気まずい空気が流れた。


「あ…ごめん。またやっちゃったね…」


表情をぎこちなく取り繕いながら笑う幸村に、さすがにレギュラーたちも気がついてざわめき出す。

「蓮二、どこに行っちゃったのかなぁ?精市たちに何も言わないで転校しちゃうなんて…」

「ライバルが減ったのは良いことじゃがのう」

「彼は理由もなしに失踪するような方ではありません。心配ですね…」

「私もだよ…。市華ちゃんもいなくなっちゃうし、寂しい…」

「別にあいつはいらなかっただろぃ?マネなんて美世がいればいいじゃん!」

「…丸井、俺の妹になんか文句でもあるの?」 

「えっ、やっ、べべべ別にないぜぃ!!」

「そういえば彼女は幸村くんの妹さんなのでしたね」

「全然似とらんのう。なんちゅーかオーラがないぜよ」

「凡人って感じッスよね!愛想も悪かったし」

「精市、まだ市華ちゃんがどこにいるか分からないの?」

「…うん。わからない。母さんたちに口止めしているようなんだ。どこかで下宿していることはわかったんだけど。」

それは幸村にとって触れてほしくない話題だった。
妹の異変にも気づけないなんて、兄失格だ。

彼らからの妹に向けた無遠慮な悪口に腸がぐつぐつと煮えるようだった。そんな感情を抱く資格などないと知っていてもどうしようもなくやるせなくて情けない。

全ては自業自得だった。

「顧問からの話はそれだけじゃないんだ。実は、この大会延期期間に合同合宿をやらないかって話が出ているらしくてね」

「合同とはどういうことだ?」

「強豪校を複数集めて強化合宿をしようってことらしい。今のところ分かっている参加校は氷帝、青学、四天宝寺と…並盛」

「なみもり?ってどこだよぃ」

「おいブン太忘れたのかよ。関東大会初出場でベスト8まで残ってる学校だったろ」

「関東初出場?なんでそんな学校が全国区合宿に呼ばれてるんじゃ」

「このままの勢いでいけば全国は間違いなさそうですが…」

「並盛はこの合宿の主催校みたいだよ」

「そんな学校が主催な合宿なんて…「面白そう!みんなに会えるね!」

不満げな赤也の言葉を遮るように言った美世に、レギュラーの反応が変わる。
ころりと手のひらを返したように合宿に賛成し始めたのだ。

あからさま過ぎる彼らの中心で、美世は首をかしげてにこにこしている。

幸村は何度目かもわからない溜息を吐いて、そう、と返した。


「じゃあ参加すると言っておくね。俺はまた職員室へ行くけど…サボったらメニューは倍だからね」

「そんなぁ!みんな大会の後で疲れてるんだからかわいそうだよ精市!」

「マネージャーは練習メニューに口を出さないでくれ。いいね、みんな」


覚めた声色で一蹴し踵を返す幸村に、美世はしばしぽかんとしていた。
慌てて丸井たちが彼女に駆け寄り励ましの言葉をかける。

「幸村の言うことなんか気にするんじゃなか」
「幸村くんもひどいこと言うぜぃ!」
「美世さんは我々の大切な仲間ですからね」
「もー練習ボイコットしちゃいません?」
「お、おい。それはさすがに…」


「貴様らッ!黙って練習を始めんかーっ!!!」


いきなりコートに響いた怒号に肩が跳ねる。
目じりを釣り上げた真田にみんなそそくさと散り、練習を始めた。

真田は柳がいなくなってから強く感じ始めた違和感をいまだに完全につかみ切れずにいた。
昔とは違う、このたるみきった空気の正体は何だ。

幸村も何か一人で思いつめている時間が増えた。


だんだんと、バラバラになっていく。


真田は今日もそれらから目をそらし、自分も練習に戻って行った。













一方、同時刻並盛中の部室では

「市華、合宿の件だが氷帝と四天宝寺からは快諾を受けた。青学も予定を調整して参加する予定らしい。あとは…」

『立海だけ、ですね』

「そうだな。自主的な参加が得られないと別方面から圧力をかけてもらわなければならない」

『大丈夫ですよ。参加しますから』

「…なるほど。超直感とはそういうものなんだな」

『そういうものですね。勘ですけど全国区でもないうちが主催であることに切原あたりが反論したところであの女が面白そうだから参加しようとか言い出してみんな手のひらを返すって感じだと思いますよ』

「ああ、俺のデータでもその確率が一番高いな」

そう言って2人はほほ笑んだ。
窓から差し込む光が2人の色の違う指輪を照らす。

すると軽いノック音が聞こえ、ドアが開いた向こうには逆行ゆえにパイナップルのシルエットが。


「市華、柳くん、計画は順調ですか?」

「骸。練習を抜けてきたのか?」

「いいえ、クロームに体を借りました。ちゃんと練習には参加してますよ」

『そっか、残念だな。サボりがいたらスパナが開発したばかりのボールマシンガンを試そうと思ったのに』

「ボールマシンガン!?ボールマシンではなく!?」

『そのボールマシンを改造してボールをマシンガンのように打ち出せるようにしたものらしいよ。ちなみにできたばかりだから試運転もまだらしくて』

「その試運転に僕を送り込もうと!?」

『しないよ。だから残念だって言ったでしょ?』

「昔の純粋だった綱吉くんはどこへ行ってしまったんですか…!!!」

「…俺は昔の市華を知らないが、今の市華のほうが好きだぞ」

『ありがとうございます、蓮二先輩』

「いちゃついてないで僕の質問に答えてくださいよぉおおおおおお!!!!!」

血の涙を流して地面をどんどんと叩く骸に、市華は仕方ないといった様子で計画の進行状況を話した。

「ほう。順調なようですね」

『蓮二先輩が練った計画だからね』

「ちくしょうナチュラルに惚気られた!!」

「…骸。俺の目が節穴ではなければ今コートで試合をしているのはお前の本体じゃないか?」

「君の眼は節穴というより糸ですけど…って僕の体がぁあああ!!?雲雀くんちょっと待ってください頭は!頭はよしてください!何かさっきから頭痛がすると思ったら!!」

『雲雀さーん!ラフプレイはやめてくださいね!骸以外には!』

「言われなくても分かってるよ市華」

「僕の場合も止めてください!」

部室の窓から見えるテニスコートでは雲雀から殺人ショットを何度も食らう骸が宙に舞っていた。
顔色を一変させて駆けていく骸に、ちゃんとクロームに身体返すんだよ、と言う市華。


今日も並盛中学合同テニス部…もといボンゴレファミリーは平和だった。
みんなが揃い、共に高めあい、互いを補い合って毎日を過ごす。


それが、誇り高き我らが大空の望む日常なのだから。






大空のための舞台
(さあ、もうすぐだ)
(自らの愚かさを知るがいい)


……………………………………

つくづく思います。駄文だと。
話すすまなすぎて笑えてきます。

これからますます酷い文になっていくんですが、勘弁してください…

数ある作品の中でも大空シリーズの文が一番酷い。

っていうか氷帝じゃなかったのかよ自分。合宿行っちゃったよ。


12/14誤字修正しました

 

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