×
「#ファンタジー」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -



  我らの大空に玉座を


男子硬式テニス東京都大会


激戦区と言われる都大会では、例年いくつもの強豪校がひしめき合い、しのぎを削り頂点を目指す。


トップクラスの強豪校は例年固定されているが、氷帝や青学といった関東・全国常連校への下剋上を狙う学校は多い。


そんな中、ダークホースと囁かれている学校があった。


不動峰中学。


レギュラーの大半が2年生という異例の学校だ。

彼らはシードも何もない全くの無名校だったが、破竹の勢いでのし上がってくる。




しかし。




彼らの華麗な技に湧く観客席の隣のコートでは静寂が支配していた。

ボードに表示されたゲームカウントは6−0
それが3つ並んでいる。

ラブゲーム。

どころか、彼らは失点一つしていない。

まるで点の一つすらも誰かの所有物であるかのように。

「今日は極限に調子が良かったな、獄寺!」

「うるせぇな芝生メット!俺はいつでも絶好調なんだよ!あの方のためならな!」

「でも今日は来られなくて残念なのなー」

「仕方ないでしょう、それが作戦ですから」

「骸も雲雀も淡々としすぎなのな!もうちょっと楽しんでもいいんじゃね?」

「僕らは楽しむためにテニスをやっているんじゃない。全てあの子のためにしている使命なんだって自覚を持ちなよ山本武」

両手と両膝をついて顔面蒼白になっているのは、確か去年二回戦で氷帝と当たってしまったゆえに敗退してしまったが関東大会にも出場記録がある強豪だったはずだ。

それをものともせず、歯牙にもかけず、眼中にないといった様子の新参校。




並盛中学合同硬式テニス部







時はさかのぼり、試合開始前。

彼らが整列したとき、相手校は首をかしげた。



人数が、足りない。

試合はダブルス二試合シングルス三試合。計七人を必要とする。
さらに選手に不足の事態が起こった場合のための控え選手が一人はいるはずだ。

しかし、


「あー…君たち、人数が足りていないようだが」

「足りてる」


なぜか腰にベルトを巻いた銀髪の選手がぶっきらぼうに言った。
ギラギラと尖ったオーラは主人の手を離れた凶暴な番犬のようだった。


「ダブルス二試合とシングルス一試合分の人数がいりゃ十分なんだよ、こんな雑魚」

「な、何だと!?」

「獄寺!もうちょいビブラートに包めって!」

「オブラートだろ!?こんなとこで歌ってどうする気だテメエ!」


人のよさそうな黒髪の少年が言った言葉にキレた彼はぎゃんぎゃんと言い争いを始めると、それはほかのメンバーにも伝播していった。

終いには乱闘が起こりそうになったが、それまで静観していた全身黒ずくめの男(監督?顧問?)が一言、


「てめーらさっさと片付けねぇと"あいつ"が待ちくたびれるぞ」


"あいつ"というとある人物を示す単語が出た瞬間にヒートアップしていた彼らは冷静さを取り戻した。

「俺たちは何が何でも玉座に辿りつかなきゃならねぇ。そのためには目の前の敵を一つずつ叩き潰すのみだ。わかってんだろうな?」

ぴたりと口を閉じた彼らの瞳に浮かぶ凶暴な闘争心と確固たる決意。




そして、試合が始まった。




D2として出てきた銀髪碧眼の選手、2年獄寺隼人と朗らかなスポーツ少年といった風体の同じく2年山本武。

獄寺の空気を切り裂くようなショットは次々に相手コートに突き刺さった。
山本の両手を変幻自在に使った攻防バランスの良いプレイは易々と得点をもぎ取った。


次いでのD1では両者とも三年生。二人とも黒髪に切れ長の瞳をもつ秀麗な美青年だったが、雲雀恭弥は不機嫌を隠そうともせず、一方六道骸は感情を一切読み取らせない不敵な笑みを浮かべていた。

雲雀は独特の構えから細腕のどこにそんな怪力があるのかというほど重い球を息切れすることなく連発した。
六道が打った球はふらふらと不規則に揺れたり時折消えたりと予測不能に相手を翻弄した。

ほぼチェックメイトに近い状況で、S3に出てきたのは始終叫んでいる熱い男。体格はそこそこだが無駄のない筋肉が隙なくついた肉体に自信を漲らせて堂々と立っている。

笹川了平という男は獣のような雄たけびを上げながら荒々しいパワーボールのみで点を取り、あっという間に試合を終わらせてしまった。



圧倒、という言葉をここまで肌で感じることになるとは。






そして冒頭へ戻る。

絶望に打ちひしがれる相手校を尻目に、勝者である彼らはそれが当然だと言うように淡々と帰り支度をしている。



「何なんだよ……っ」



相手校の部長が背を向けて帰ろうとする彼らに投げかけた。



「何なんだよお前ら!無名校のくせに…!」


「無名だってんならこれから打ち建てるまでだ」



負け犬の遠吠えなど聞いている暇はない。

俺たちは駆けあがらなくてはならない。

俺たちは最強であらねばならない。


あの人のために


何よりも玉座と王者が相応しい我らの大空へ


我らは強く、気高く、そして何より誇りを胸に




我らの王へ、玉座をささげる守護者なのだから。





「"最強"をな」





どの世界でも、いつ何時も、


"ボンゴレ"は最強であることを証明してやろう


黒い死神の言葉を聞いた相手校は、完全に委縮してしまい、彼らの背中を茫然と見送るしかできなかった。



………………………………………

名前変換はいずこ…?

市華も柳も出てこないというね。
次も出てくるか怪しいもんですよね、この流れ。

次回は氷帝か青学でしょうか…氷帝かな。私の好みで。
もうちょっと詳細に試合描写ができればなぁ…

みなさん進級して獄寺たち二年、雲雀たち三年です。
雲雀の独特の構えは甲斐の裏手。骸はこっそり幻術使ってる(笑)

 

[back]