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「#幼馴染」のBL小説を読む
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  月島くんと桜井成り代わり


桜井成り代わり主の地元が宮城。
月島の彼女。
月島がだれおま。甘い。











はるばる首都・東京まで遠征に出た烏野高校男子バレー部の面々は、立て続けの練習試合に得るものも多く足りないものに気づくことも多かった。

特に向上心の強い変人コンビは改善点を頭に描きながら昼休みに入るための軽い片付けと掃除に勤しんでいた。

と、そこで変人コンビ(大)は体育館の入り口に日向に似たふわふわヘアが揺れているのに気が付いた。

「何か用か。」

『ヒッ!スイマセン!!』

変人コンビ(大)こと影山が声をかけると、その頭はビクゥ!!!と大袈裟なくらい跳ねた。
自分たちとは違う、黒を基調としたジャージをきっちりと着込んだその影は小柄で西谷くらいだろう。

ちょっと声をかけただけでここまで過剰に反応し、しかも謝罪までするということは…

「まさか偵察じゃねえだろうな!」

『てっ偵察!?スイマセン違います僕バス「偵察だと!?」

偵察という言葉に反応した西谷と田中が駆けつける。
影山が発見した人物は小柄な体をさらに小さく縮めてガタガタと震えだしてしまった。

『ちっ…ちが…ちがいます…スイマセンスイマセンスイマセン…っ』

「ちょ、何女の子泣かせてんだそこっ!!!」

「「「女の子っ!?えっ!?」」」

菅原の言葉に三人はその人物をよくよく見直す。
すると薄い茶髪は長く、桜色のシンプルなシュシュでくくってありこめかみのあたりにピン留めも見える。俯いているため顔は見えないが震える肩は薄く細い。
真っ黒なジャージでは一見すると分からないが、まぎれもなく女子だった。

泣かせたらヤバい!と4人が揃ってオロオロし始めたところへ、ボールをいっぱいに抱えた山口が通りかかり意外な一言を口にした。

「あれ?ひょっとして桜井ちゃん!?」

『や…山口くん…っあの…』

「えっ山口の知り合い!?」

「分かってるよ!今呼んでくるね!」

山口の呼びかけに反応してぱっと顔を上げたその人物に、
驚く菅原たちを置いてきぼりにし、山口が一目散に駆けていった先にいたのは、無論…


「ツッキーツッキー!!!」

「うるさい山口。何?」

「ごめんツッキー!桜井ちゃんきてるよ!そこに!!」

「!!」

それを聞いた瞬間に条件反射よりも速く振り向いた月島。
桜井の表情がぱっと華やいだ。

『蛍くん!』

「何やってんのリョウ。くるなら連絡してって言ったよね」

『あの、でも…昼休みに抜けてきただけだからあんまり時間がなくて』

「メールする時間くらいあったでしょ。走ってきたの?」

『はい、ロードワークに。あっでもお弁当は大丈夫です!揺らさないようにしたから…』

「そういうことじゃないでしょ。…主将」

「はっ!?え、なんだ月島」

「僕、先にちょっと抜けます。夜の片づけはその分多くやりますから」

「あ、ああいいぞ」

『えっ、あの、僕待ってますけど…』

「時間ないんでしょ。早くいくよ」

『はいっ』

親しげ、というよりも若干糖度が高めの会話に、烏野高校の面々は背筋を凍らせる。

「山口あれ誰!?」

「月島のこと蛍くんとか呼んでたぞ!?」

「つーかめっちゃ可愛いなさすが東京!!!」

「さ、桜井ちゃんは…えっと、見ての通りツッキーの彼女ですよ。」

「なんで東京に彼女作れんだよあいつ!」

「桜井ちゃん、もともと宮城にいたんですよ。でも高校は推薦もらって東京に行ったんです。今は確か寮に入ってるとか…」

体育館からそろって出て行った美男美女といえるカップルを思い、田中は世の中の理不尽さをかみしめた。


月島たちは見慣れないロータリーのようなところにあるベンチに腰かけた。もちろん桜井の座るところにタオルを敷くのも忘れない。

『蛍くん、あの、お昼休みは大丈夫ですか?』

「それ僕より自分が気にすることでしょ。リョウは?」

『あ、大丈夫です。青峰さんが見つからないので休み時間が長くなって…』

「じゃあ僕も大丈夫」

『じゃあってなんですか!?もう…』

相変わらずだ、とでも言うようにため息をつく桜井に、こっちが同じことを返してやりたくなった。

「っていうかなんで連絡しないの?迷惑だと思った、は通じないから。お前が僕にそういうこと思わないの知ってるし」

『なっ思いますよ!ちょっとは迷惑かもとも思いました!』

「はい言質とった。ホントの理由は?」

『うっ…蛍くん久しぶりなのに意地悪です……蛍くんがバレーしてるところ、こっそり見られるかもって…』

「そんなことだろうと思った…中学の時に充分見てたでしょ」

『そんなことじゃありません!それに中学とは違います!だって、蛍くんは…会うたびに背も高くなってるし、体もがっしりしてきたし、かっこよくなってるし…僕の知らない蛍くんになっちゃっていくんですもん…』

どんどん声が小さくなっていく桜井に、月島は少し目を細くして話しかけた。
むっと唇を噛んでむくれる彼女が愛しくていじらしくてたまらない。

「リョウ、あのね…」

『ぼく悪くないもん…』

「誰も悪いなんて言ってないでしょ。それを言うなら僕だって同じだよ」

『え?』

「髪が伸びて雰囲気が大人っぽくなった。おさげよりも今の髪型の方が似合ってる。肌がきれいになってるし、白い。スタイル良くなってる。…びっくりするくらい、可愛くて綺麗になってる」

『や、あの、そんなこと…』

「僕の見てないところで、僕がいないところでそんな綺麗になってさ。どうするの?どうしたいの?男に襲われても僕は助けに行ってやれないんだよ」

『僕は…だって…』

声を詰まらせながら月島に目を合わせた。
引っ込み思案で謝り癖が酷く、それでいて誰かとしゃべることが恐ろしく苦手な彼女だが、その芯だけはいつも通っている。その瞳が、好きだった。

『蛍くんに、可愛いって言われたくて。もっと好きになってもらいたくて、頑張ったんです。桃井さん…友達にもいっぱい相談して、今日はジャージだったけどデートのための服も買ったりして、その…っ』


ああ、もう、これだから。

馬鹿で泣き虫で弱虫で、超がつくほど負けず嫌いの頑固者。そして、世界で一番大切な、自慢の恋人は。



これだから、愛おしい



「可愛いって、今言ったけど」

『もっと言ってくれなきゃいやです…』

「はいはい。可愛いよ、僕が上げたシュシュも似合ってるし、髪もサラサラだね。僕に触って欲しいから?」

『…そうですよっ!』

真っ赤になりながらヤケクソだと言わんばかりに声を荒げる桜井に、月島は家族にすら見せないっほど穏やかで優しい笑顔を向けた。








桜井良子
月島にはリョウと呼ばれている。
身長170p、髪はゆるふわセミロング。宮城では平凡な容姿だったが上京して垢抜けて美人さんに大変身。月島は彼女が美人だってことくらい初めから知っていたけど。
月島、山口とは小学校と中学校が同じ。
月島にはスイマセンが発動しない。割とはっきりものをいう。
負けず嫌いでバスケに情熱を傾けているので上京前にひと悶着あった。けど結局お互い大好きバカップルなので元鞘。周囲には必ず爆発しろと言われる。

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