×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -



  元氷帝生宮地さんと鳳成り代わり


その日、秀徳高校バスケ部レギュラー達は練習試合を終えて帰路に就いていた。

190pほどの大男がぞろぞろと歩いているだけで迫力があり、道行く人は自然と端に避けていた。


「今日の試合も快勝でしたねー!真ちゃんの3Pもガンガン決まってたし」

「今日の蟹座は2位だったのだよ。ラッキーアイテムも身につけているのだから俺の敗北などない」

「相変わらずだな真ちゃん!!」

「別に強豪校でもなかったんだから当然だろ。負けたらむしろ潰すぞ」

「ちょうどジャガイモが大量入荷したぞ。」

「高尾、そんなことよりお前の順位は11位だったのだよ。あまり俺に近づくな」

「ちょっ、ひでぇ!!別に大したこと…うぉっ!?」

『きゃっ!』

高尾が少し後ろを歩く緑間の方を振り返った瞬間、ゴツンと固いもの同士がぶつかる音がした。

高尾の広い視界に星が飛び散り、しりもちをついてしまう。

しかし、痛みよりも気になったのは声だ。

高く澄んだソプラノボイスが自分の少し上から聞こえたような…

「高尾!何をやっているのだよ!」

「ってー…あ!すんません!俺、前見てなくて…っ」

『い、いえ、私の方こそぼーっと歩いていて…お怪我はありませんか?』

自分と同じように地面に座り込んでしまっている人影。

その人物をようやくまともになってた視界で捉え、高尾は内心でヒュー♪と口笛を吹きたくなった。

目の前で自分を申し訳なさそうに見ているのは同い年くらいの女の子。

しかも、少し癖のある長い銀髪と清廉な雰囲気を持つ美少女だった。

慌てて立ち上がった高尾が手を差し伸べよとした瞬間、後ろから声が降ってきた。


「……ちよ?」

『え?あっ!!宮地さんっ!!!』

「へ?」

銀髪美人は高尾の後ろを見上げて目を輝かせた。

「いつまで地べたに座り込んでんだ、体冷えるだろーが。ほら荷物。」

『ありがとうございますっ!お久しぶりです宮地さん!!』

「中学以来だから3年ぶりだな」

『はいっ!凄く背が伸びたんですね、一瞬誰だか分かりませんでした!』

「ちょい待って宮地さん!この人と知り合い!?」

「あ?中学の後輩だよ。お前とタメ」

『申し遅れました、氷帝学園高等部1年鳳千代子です。宮地さんには幼稚舎からたくさんお世話になったんです!』

曇りない笑顔。
宮地の手を借りて立ち上がった彼女を改めてみると…

「背…たか…!」

『え?』

「高尾黙れ刺すぞ。ちよもこんなのに律儀に挨拶してんじゃねーよ」

「こんなのってなんすか!?」

鳳と名乗る彼女は高尾の決して低くはない身長(重要)より頭一つ分大きい。
それに衝撃を受けていたらそれを遮るように宮地に暴言を吐かれた。

「高尾と同い年なら2つ下か。幼稚舎…って小学校のことだよな?」

「宮地、氷帝だったのか?」

「あー…まあ、な」

木村と大坪が少し驚いたように言うと、宮地は歯切れが悪そうにどもる。

「ちよ、部活どーした?亮は?」

『今日は午前中で終わりなんです。宍戸さんたちもいます!声かけてきますね!!待っててください!』

きらきらと瞳を輝かせた鳳は大きなバッグを宮地に押しつけるように任せ、近くのスポーツショップに飛び込んでいった。

それを見て、高尾が一言。


「大型犬…」

「黄瀬と一緒にしたら失礼なのだよ高尾」

「それを言うなら犬と一緒にしたらだろ轢くぞ」

「意図もたやすく行われるえげつない行為。」

何の違和感もなく黄瀬=犬と認識されている現状に木村がつっこんだ。

ふと、大坪は宮地が抱えている鳳の荷物を見て言った。

「そのバッグ、テニスか?てっきりバスケ部の後輩だと思ったんだが」

「バスケも上手ぇよ、あいつは。でもテニスの方が好きだっつってたからな」

暫くすると、店の中から地鳴りのような足音が聞こえ…たかと思えば3人の影が飛び出してきた。

1人はワインレッドのおかっぱ、1人はふわふわの金髪、1人は黒髪だが青いキャップを被っている。

うわぁ、信号だ!と思う間もなく3人のうち2人は宮地に突っ込んでいった。


「「「宮地さんっ!!!」」」

「うぐっ!?」

「マジで宮地さんだ!背ぇ高っ!!クソクソよこせ!」

「でも顔とか髪とか変わってないC!」

「お前らテンション上がんのは分かるけど飛びつくんじゃねぇよ!」

『ジロー先輩も向日先輩も元気ですねっ!』

「「ちげぇ!止めろよ!!」」

天然全開な鳳は嬉しそうに4人を見ている。正確に言えば飛びつく2人とそれを引きはがそうとする2人だが。

宮地は相変わらず鈍感天然ほわほわ系の鳳に頭を抱えそうになった。

『宮地さんとは縦割り班が一緒で!』

「なるほどな。」

「氷帝ってお坊ちゃま学校だと思ってたけどそういうのは同じなんだな」

『そんなこともないですよ。確かに裕福な家の人もいますけど、一部ですよ』

大坪たちは朗らかに笑う鳳とそんな会話をしていたが、その鳳が"一部"に含まれることくらいは容易に想像がついた。
何しろ所作が上品極まりない上にまとっている雰囲気が上流階級のそれだ。

向こうで宮地とわやくちゃになっている3人とは空気が違うように思える。

『宮地さん、これからお暇ですか?』

「ん?ああ、まぁな」

「じゃあみんなでどっかいこーぜ!」

「ご飯食べに行きたいC」

「…お前ら空気読めよ!」

『大勢で楽しいですね宍戸さんっ!』

「お前はもう少し貪欲になっていいんだぞちよ!?」

「亮、何の話してんだ?」

「宮地さんはちょっと黙ってろください!!」

「黙ってろください!?」


一瞬残念そうな顔をした鳳だが、すぐに明るい笑顔で賛同する。
それをみた高尾は悲しいかなハイスペックを発揮し、現状を悟る。

「罪作りな先輩を持つと苦労するだろうな…」

「何の話なのだよ?」

「真ちゃんもなかなか罪作りだけどな」

「だから何の話なのだよ!?」

その後、宍戸向日芥川鳳と秀徳バスケ部レギュラー達はそろって某マクドなナルドへ。
鳳が片手で数えるほどしか来たことがないと爆弾を落として騒然となったり向日が頼んだ納豆チーズバーガーに高尾の腹筋が鍛えられたりしたが、両校とても仲が深まった。

いろいろな意味で胸が暖まった鳳が軽い足取りのまま家へ帰ると、母から衝撃の言葉を受ける。



「千代子も今年で16歳になるのだから、そろそろお見合いでもしましょうか」



上流階級に住む者にとって、お見合いとは婚約・結婚と同等の意味を持つ。

避けては通れない道だとは理解していたものの、先程まで心ときめく時間を過ごしていた鳳にとってはまさに天から落とされた気分だった。




同時刻、よくよく見知った彼が同じ言葉を受けているとも知らずに。


……………………………………………

鳳成り代わり。
というより隠れお坊ちゃん宮地が書きたかっただけなんですけどね。

上流階級ならば婚約者ネタは鉄板だろ!!と思って投下。

察した方もいるでしょうが、鳳→宮地です。しかし実は鳳→(←)宮地です。宍戸さんは可愛い後輩と頼りになる先輩を絶賛応援中。

簡単に説明↓
鳳千代子(ちよこ)
愛称はちよ。
長い銀髪をハーフアップにし、十字架のネックレスを愛用している。見た目からして超箱入りお嬢様。
身長は高尾よりも高い180pそこら。宮地さんがそれより高いので内心とても嬉しい。
テニスをしているときはちょっと怖い。
幼稚舎から宮地さんに桃色片思いだけど告げるつもりはない。

宮地清志
上流階級のお坊ちゃん。なんか恥ずかしくて秀徳メンツの誰にも言ってない。
宍戸や鳳を始めとする中学の後輩が可愛くて仕方がない。
可愛い後輩だと思っていた鳳のことを、最近なんかちょっと違う気がしてきている。


ま、とーぜん婚約者はこいつらですよwww

prev next

[back]