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  623成り代わりが異常で過負荷2


「本日の会議もロクな案が出ないでありますなぁ〜」

日向家では本日も不毛で無駄な会議が繰り広げられていた。
地球侵略に来た宇宙人も今では捕虜の座に腰を落ち着かせてしまい、日々雑用に追われている。

形だけの侵略会議も一向に進まない。

「なぁんで侵略進まないかなぁー。我輩たちには武器も科学力もあるっていうのにさ」

「それは貴様のやる気がなさすぎるからではないのか…」

完全に自分を棚に上げた隊長ケロロに意見した赤い宇宙人はギロロ。手にしている銃を今にもぶっ放さん迫力だ。

「えー!こういう時に個人を責めちゃだみだよギロロくん!雰囲気が悪くなるでしょ!?」

「ペコポンに関する情報収集すらままならないこの状況以上に悪い雰囲気になんかなるか!!!」

「えー!?大丈夫だよそれは我が隊の優秀な参謀殿がどーにか…」

「クックック…んなメンドイこといちいちやってらんねーぜぇ」

ヘッドホンからじゃかじゃか音漏れさせていながら会話はしっかり聞いている、優秀だけど嫌なヤツ代表クルルが陰湿に笑った。

「してくれてなかったー!えーっじゃあ本部に定期報告は!?」

「催促メールは見なかったことにしてるぜぇ隊長を見習ってなぁ」

「なら急いで情報だけでもなんとかするですぅ!ペコポンに脅威がないかどうかとか…」

しっかり手を挙げて発言したしっぽ持ちの新兵タママ。しかしその手にはしっかりとロリポップが握られていた。

「ペコポンの脅威は夏美殿くらいであります…」

「本部にそんな報告をするつもりか?夏美に危険が及んだらどうする!(ちゃんと調べてから報告しろ!)」

「本音と建て前が逆になってるぜおっさん。仕方ねぇな…大したことも出ねぇだろうが一応調べてやるよ、天才の俺様がな」

クルルは含みのある笑いを小隊に向け、ウィーン…と椅子が自動で床に吸い込まれていった。




『クルル〜今日のごはんは623特製ハンバーグの予定だよ〜…って忙しそうだね』

「悪いな睦美。今日も隊長からの無茶ブリがあったせいて帰れそうにないぜぇ。ま、俺様にかかれば明日には終わるだろうがな」

『そっかぁ…じゃ、今日はてきとーに済ますから明日一緒に食べようね!』

「食べてやらねぇこともないぜぇ。てきとーって言ってもカロリーメットとかウェダーにすんじゃねぇぞ」

『えー…しょうがないなぁ。じゃ、お仕事がんばってねクルル!でも侵略はほどほどにねー』

「クックッ…考えといてやるぜぇ〜」


睦美のマンションと繋がっている超次元ゲートからひょっこりと顔を出した北城睦美はパートナーの忙しそうな背中を見つけた。
クルルは彼女の気配をすぐさま察知するが振り返るどころか作業の手求めずに会話した。

彼が仕事で手いっぱいだと知るとあっさりと引っ込んでいった睦美の声が途絶えてから数秒後、クルルはぽつりと


「……どこの夫婦だ今の会話はよぉ」


らしくなさに頭を抱えつつ彼女の夕食をカメラでばっちり確認している自分に気づいて思いっきり機材に頭を打ち付けた。

しかしその後、大きなディスプレイに表示された文字を見つけ、怪訝な顔をする。

「アブノーマル…?ペコポン人の分類か…?」


薄暗い光が照らすラボ内に、カタカタとキーボードを打つ音だけが響いた。








「調査結果が出たでありますかクルル曹長!」

「昨日の今日ですぅ!」

「ク〜クック…この俺が調査したんだから当たり前だろぉ?まあ途中なところもあるっちゃあるが、取り急ぎ報告しなきゃやべぇことはこれだな」

「ヤバいこと??」

ぴろん、と大きなスクリーンに表示されたのは「異常」「普通」「特別」「過負荷」の四つ。

「何だこれは」

「どうやらこれはペコポン人の分類らしくてなぁ。こりゃ先行調査はおろか俺たちが派遣された後も見つけられなかった情報だぜぇ〜」

「おおっ!これは本部へのポイントが高いであります!」

「普通っていうのは一般人のことですよね?他はどういう人たちなんですかぁ?」

「まず特別ってヤツはスぺシャルと読むらしい。運動が得意っだったり芸術性に秀でてる奴らのことらしい。日向夏美や日向秋はこの部類だなぁ」

「さすがはママ殿でありますなぁ」

「問題なのは異常(アブノーマル)と過負荷(マイナス)だ。こいつはかなり希少らしいがやべぇ力を持ってる。俺らで言うノンケロンみたいなもんだと言えばヤバさは伝わるよなぁ?」

基地内に衝撃が走った。
ケロン軍でも御しきれないノンケロンのような存在が、地球にも?
それは侵略の弊害どころかケロン星の脅威だ。

「そ、それは誰だ!?俺たちの存在がそいつらに露見する前に始末しなければ…ッ」

「ちょっと待ってろ〜。どうやら日本にその異常や過負荷を集めた学校があるって話だぜ…ん?」

「どうしたクルル。何か問題でもあるのか」

「いや…箱庭学園…?どっかで聞いたような」

首をひねるクルルは数秒熟考すると、ぽんと手を打った。

「睦美の学校じゃねぇか」

「なぬ!?睦美殿の学校!これは潜入の口実ができたであります!」

「(ま…関係ねぇだろ)データベースに侵入するぜ」

気に入っているという白い制服に身を包み、今日もバイクで登校していった親友を脳裏に描きながら嫌な予感を振り払うように手を動かす。

しかし、3年13組の名簿をスクロールした際に見つけてしまう。

大切な親友の、
初めて出会った理解者の、
クルル自身も自覚していない感情を向けていた彼女の、その名前を。


鼓動が大きく耳に響く中、大きく画面に表示されたデータは、




氏名:北城 睦美(ホウジョウ ムツミ)

所属:3年13組

験体名:電波系倫理(ロンリーロジカル)

分類:異常

能力:重軽意志(リバティフロート)

性質:広域殲滅タイプ

ランク:SS

危険度:B

配偶者;なし

備考:異常の中では珍しく世間に適応しておりタレントをしている。
異常の中でも特異なオールマイティタイプにして高い攻撃力と応用力を持つ広域殲滅タイプであり軍用化も進められている。






「む…睦美殿が……」

"広域殲滅"という言葉に呆然とする小隊をよそに、クルルの意識は別のところにあった。

クルルの眼鏡には一生溶けることのない氷塊のような瞳の睦美が映っていた。

いつもの花が舞うような朗らかな笑顔はそこにはなく、感情どころか思考もないような無表情だった。



少しずつ、彼らの電波は波長を違えていった。





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