大空が首を傾げる日
「市華市華!可愛かったよ!さすが俺の市華!新入生の誰より、っていうか立海生の中で一番可愛いよ!」
『兄さん、本気で恥ずかしかったよ…』
本音です。
入学式が終わり、部活見学に行くって時に兄さんが来た。
芸術品のように整ったその顔を満面の笑みで染めている。俺の背後で黄色い声が止まないんだけどちょっと待とうね君たち。俺の目の前にいるのはただのシスコンだ、見た目に騙されるな!
兄さんは1人ではなかった。2人ほど引き連れるようにしている。かなりの長身で何となく威圧感がある人達だ。
「む、幸村?そいつは誰だ?」
初対面でそいつ呼ばわりか。
失礼だな…ていうかこの人先生じゃないのか。
「精市の知り合いである確率87%…先ほどまで精市が教室にいなかった事も関わっているだろう」
こっちの人は糸目か。
和風美人さん…だけど言っていることが意味不明だ。確率って何だよ。この人数学マニア?数学Aマニア?
「市華、こいつらが俺の友達ね。真田に柳。」
『兄さん友達をこいつ呼ばわりして良いの?』
まったくこの兄は…
友達は大切にしなきゃだめだよ。兄さんみたいな人と仲良くしてくれるなんて貴重だよ?
見事に閉心術を身に着けた俺は心の中では何でも自由に考えることができる。しかし俺のお腹の中がどんどん黒くなっていく…
「ほう、精市の妹か」
「そうなのか幸村?」
「市華が兄さんって言ってるんだから当たり前じゃないか何言ってんの真田。ボケた?」
兄さんここでも最強だね…
老け顔の真田さんって人の顔色が一瞬で真っ青になった。
でも糸目…柳さん?の方は全然堪えてないね、凄い。
「…ふむ。名前の漢字と生年月日と血液型と身長と体重…いや、これは別に構わない。後は趣味やその他の好みを教えてくれないか」
…もうどんな反応をしたらいいのか分かりません。
向こうで兄さんは真田さん?とやらを笑顔で蹴り倒して弄くりまくってるからこちらに気づかないし。
「答えられる範囲で構わない。精市が弦一郎を弄っている今しかチャンスがない確率は96%なんだ」
『…どこからそんな確率出してるんですか』
「初めて口を開いてくれたな」
美人という言葉は男女共通だと思った。
美人が微笑むと破壊力がハンパ無いってこともね。
柳さん分かってます?貴方が微笑んだ所為で俺の後ろにいる人たち倒れましたよ。
主に女子。男子も数名いるんだけど道踏み外しちゃったのかな…
『漢字は普通に市華ですよ。誕生日は10月14日で血液型はA。身長は現在は157pですが成長期は小学校の頃に終わってしまったのでもう伸びないと思います。体重は46.5sです。こっちは増えるかもしれませんね。趣味はゲームですね。音ゲー落ちゲー何かが好きです。甘いものはあまり好きじゃないです。ジャンクフード全般苦手です。勉強は大体できます。スポーツも。合気道を少しやっています。嗜む程度に』
「ありがとう、良いデータが取れた」
むしろ話すスピードと同格にノートに書き記した貴方は凄い。
わざと区切りなしノンブレスで喋ったのに…!息切れてるのに!
「お前が追いつけるわけがないと思って話した確率85%」
『貴方ストーカーと言われたことはないですか』
「あっても気にはしない」
そうかあったのか。
「俺に用があったらテニス部かクラスへ来てくれ。間違っても精市には言うなよ」
『間違っても行きません』
「テニス部は…あまり来て欲しくないがな」
『…?』
俺は最後の言葉に首を傾げた。
兄さんはテニスがとても強い。ということは同じ部活に所属している柳さん達だって相応の強さなんだろう。
兄さんが
なぜ、来て欲しくないのだろう。
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