大空が消えた日
『γ!!ユニー!!』
γとユニの服だけがふわりとその場に崩れた。
アルコバレーノのおしゃぶりも、輝きを失わないまま地面に転がった。
「ねぇちょっと…何してくれてんのさ?」
慌てて駆け寄るが…もうそこには何もない。
守りたかったものは、消えてしまった…
「やっと見つけた最後の1ピースが死んじゃったよ…すべておじゃんじゃないか…」
白蘭の声が遠く聞こえる。
自分の体の中には絶望感が満ちていて、手足から力が抜ける…
「73を覚醒させ時空を越えた覇者になる僕の夢は…君たちのくだらないお友達ごっこのせいで散ったんだ…」
友達、ごっこ?僕の夢?
お前は何を言っている…お前の、お前だけの所為で…
「この意味が…分かっているのか!!」
ふざ、ける…なよ!!!
全身から力が沸き上がった。
それは憤怒、憎悪、哀愁…それが全て、俺の力となって吹き出した。
『誰がユニを殺したと思っているんだ…』
俺の炎に当てられて吹き飛ばされた白蘭にゆっくりと振り向く。
『お前がこんな世界にしたから…ユニは…』
怒りは、悲しみは…唯一の行き場に標準を合わせた。
『死んだんだ!!』
視界が醜く歪んだ。
まだだ。泣いちゃいけない。
いつもいつも逃げてばかりで、弱虫で、泣き言ばかり言っている俺だけど、
今だけは、逃げない。
お前だけは、逃がさない!
『うぉぉぉおおお!!!』
俺は、全力を尽くしてあいつを倒したはずだった。
アルコバレーノが復活し、安全で平和な過去にやっと帰れると思った。
その時、
「…帰さ、ない…よ……綱吉くん……?」
ドッ!!!
「ツナ!」
「十代目!」
「ツナさんっ」
「ツナくん…!」
色んな人が俺を呼んだ。
衝撃が走ったのは胸の中心…痛みはない。
視線をゆっくりと下げ、自分の体を見ると、
胸にぽっかりと穴が開いていた。
パーカーに書かれた"27"が綺麗に無くなっているほどの大穴だった。
『…っ……』
体がゆっくりと傾き、視界が揺れる。
仰向けに地に伏した俺が力を振り絞って視線を動かすと、後ろで掌をこちらに向けている白蘭がいた。
もちろんその体は血まみれで、文字通り最後の力を振り絞っての攻撃だったのだろう。
「ふ、はは…ははははははっ!!!」
「テメェ…白蘭!十代目…っ!」
「も、う…助からないよ………心臓を、丸ごと吹き飛ばしたんだ…から……ね」
白蘭の言う通りだろう。
薄れゆく意識の中で、ひゅーひゅー、と口から抜けていく息の音が嫌に耳につく。
『…ごめん、ごめん……みん、な…』
過去に、帰れなかった。
ごめん、母さん父さん。
ごめん、みんな。
ごめん、リボーン。
最後まで弱い俺で、本当にごめんなさい。
俺は、大切な仲間を、家族を、ファミリーを、
全て残してこの世を去った。
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