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  大空を失った日


俺は、1つ違いの妹を溺愛していた。

自覚はあったけど止めるつもりなんてなかった。

俺と同じ藍色の髪を撫でるのが大好きだった。
俺とは違う橙色の瞳で見つめられるのが好きだった。
俺を慕ってくれて、俺を頼ってくれて、本当に大好きだった。



…はずなのに。



いつから俺は変わったんだろう?

いつからあの子を見なくなったんだろう?

いつから俺の目には、




美世しか映らなくなったんだろう?





あの子の顔をまともに見たのはいつだったかも思い出せない。
どうして?
俺はあんなにあの子を大切に思っていたのに。

恋は盲目という言葉では済ませられない。

後から悔やんだって意味がない。



俺は、その日、初めて"喪失"を味わった。







まずは朝練。
朝が弱い美世は参加できないから必然的にあの子が担当することになる。

けれど、その姿は見つからなかった。

「部長!平マネ来てないッスよ?」 
「あれ…おかしいな?」
「サボリじゃなか?」
「寝坊だぜぃきっと!」
「珍しいな」
「いけませんね」
「寝坊もサボリもたるんどる!!」

あの子が貶されるのを黙って聞いてる人間じゃなかったのに。
一発お見舞いしてやってもいいくらいのはずなのに。

「そういえば…柳くんもいませんね」
「柳先輩、最近平とか準レギュの方にいること多いッスよ?」
「何故こっちにこないんでしょう?」

親友の違和感にも気がつけない人間じゃなかったのに
体調の機微すら分かるくらいだったのに

どうして?







次に昼食。
レギュラーは揃って屋上で弁当を食べる。
あの子もよく美世に連れられて参加していた。

やっぱりその姿はなかった。


「美世先輩、今日は平マネ一緒じゃ無いんスか?」
「会えなかったんだよー!教室にいなかったし、クラスの子も教えてくれなくて…」
「そいつらも美世のこと妬んでんのかよぃ」
「ホンに女は醜いのぅ…美世以外じゃけど」
「真田、蓮二はどうしたの?」
「む、クラスにはいなかったぞ。休みかもしれん」

あの蓮二が、自分の体調にはもっとも気を使っていた蓮二が休みなんておかしいと思うべきだった。
あの子のクラスメートが教えてくれない意味をもっと考えるべきだった。

どうして?








最後は放課後。

放課後の部活にも、彼らの姿はなかった。

部員のために走り回る藍色と、鋭い声色で鋭い指導をする漆黒はどこにもない。

「連絡もないのに…流石におかしいね」
「もうあの平マネ首にしよーぜ幸村くん!」
「やめてよブン太ぁ!私の親友に酷いこと言わないでっ!」
「いいい言ってねぇよぃ!」

じゃれている2人を見て、何かが俺の中で引っかかった。
否、それはヒビだ。
日常に走った小さなヒビ…だけど、

「俺、ちょっと先生に聞いてくるよ」
「あっ私も行くよ精市!」

 


胸の中で広がる焦燥が間違いであることを願って。


けれど、





「幸村市華と柳蓮二なら転校したぞ。知らなかったか?」

「「え?」」


てんこう…?

俺は耳から入った言葉が理解できなかった。
てんこうって、転校なのか?
どうして…?どうして?

俺は何も聞いてない。母さんからも、本人からも。

あの子と喋ったのはいつ以来? 

もう思い出せないくらいに記憶の隅に…


「そんな!市華ちゃんが転校なんて嘘です!!」
「いやいや、先生は嘘なんか言ってないぞ」
「嘘!嘘嘘うそぉ!!市華ちゃんは親友だもん!私の親友なんだもん!!私に黙っていなくなる訳ないっ!私の隣にいるべきなのっ!!」

頭の中がどんどん冷えていくのが分かった。




喚き散らす女を見て、頭が氷水を浴びせられたように冷静になる。


俺はなんてくだらないものに縋っていたのだろうか。


その代償に、俺はなんて大切なものを失ってしまったのだろうか。



頬に伝うものが、これが紛れもない現実だと知らしめた。







大空を失った日
(どうして、なんて)
(尋ねる権利もないのに)



………………………………


ひさびさぁ…

あ、明記していませんが幸村視点です。
分かると思いますが(`・ω・´)

これにて大空恋歌は完結です。
長らく応援ありがとうございました!




…なんちゃってー(笑)

大空恋歌は新章に入ります。
なので思いきってブックとタイトルも変えようと思いまして!

別名ボンゴレ逆襲編!


復活側はこれから継承式編と代理戦争編を経て、新章は約一年後にスタートって感じです。

できれば原作沿い書きたいんですよね…
特に家光vs綱吉(市華)のシーンに柳が乱入して「娘さんを僕にください」をやりたい(笑)

やるなら番外なんですけど(´・ω・`)

 

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