大空が出会う日
それからたった三日後。
私と蓮二先輩は並盛中学校に転校した。
私は前と同じ1年A組に、蓮二先輩はお兄さん(了平さん)と同じ2年A組に。
何故こんなにも早く転校が叶ったのか、私は細部を聞かされなかった。
奈々母さんに聞いても何だか生暖かい目を向けられるだけだし。
あ、一応母さんには精市兄さんには私の転校先や連絡先を教えないように念押ししておいた。
首を傾げていたが、まあこちとら身体的には思春期なわけで、なんとか納得してもらえた。
問題の立花さんのことだけど、お別れどころか転校するとも言ってない。
準レギュと平部員のみんな、それからクラスメート達には丁寧にお別れを言って、昨日なんて急だったのにも関わらずお別れ会を開いてくれた。
その所為で部活に遅れたら、兄さんを始めとするレギュラー陣から相当なバッシングを受けた。
危うく真田さんの裏拳を喰らいそうになったときに、蓮二先輩が割って入ってきてくれた。
もっともらしい理屈を並べ立ててレギュラー陣を納得させていた。
…かっこいいな、もう!
そんな脳内自動ノロケモードな私は、ある問題に気がついた。
…あれ?リボーン達になんて説明するの?
奈々母さんはいいとして家光父さんがなんて言うか分からな…まあいっかあの人は。
リボーンはファミリーが増えるのには賛成かな…獄寺くんあたりが煩そう。
なんとか言いくるめなくちゃ…獄寺くんも蓮二先輩も比べられないくらい大切だ。
大切な人たち同士で諍いなんてしてほしくない。
「…市華、市華?」
『はいっ!?』
「眉間にしわが寄っていた。どうかしたのか?」
『い、いえ!問題ないです!』
わ、忘れてた…!
今は並中初登校中で、蓮二先輩と並んで歩いているのでした…!
突然目の前に現れた蓮二先輩の綺麗な顔
びっくりして、顔に熱が集まる。
ぷるぷると首を振るが、どうやら納得していなさそう。
「…市華?隠し事は…」
『してませんっ!ただ、リボーン達になんて説明しようかって…』
「単に市華の恋人で新しいファミリーの一員ですと言えばいいのだろう?」
『あ…はい…』
この人には羞恥心がないのだろうか…
私がどうナチュラルに伝えようか頭を捻っていた部分をどストレートに行くなんて。
「入ファミリー試験とやらがある可能性も高いが、市華が心配しているようなことには絶対にさせないから安心しろ。」
『でも…怪我とかしたら…』
「そんなに柔ではない。」
そんなこと知ってますよ!
でも相手は銃器に爆発物に刃物ですよ!?
場合によってはミサイル級のパンチや五感を支配する幻術、ボンゴレ最強のトンファーがくるかもしれないのに…!
「お前の恋人はお前が思っているより遙かに強かだぞ。」
すでに癖なのか、ぽんと私の頭に手を置くように軽く撫でて職員室に入っていった。
…行動がいちいちイケメンです。
私は熱くなる頬をパタパタと扇ぎながら、先輩の背中を追って職員室に入った。
1−Aの教室の扉の前。
き、緊張する!
教室内はかなりガヤガヤしている。
…そわそわした獄寺くんと笑ってる山本が目に浮かぶなぁ。
「幸村!入ってこい!」
『は、はいっ!』
うわ、ダサい!どもった!
昔とよく似たくせっ毛を片手で押さえつけて、ドアをがらりと開けた。
見知った顔が並ぶ。
俺をパシってたヤツ、虐めてきたヤツ、馬鹿にしてきたヤツがたくさんいるけれど…まあ、前のことなので気にしないことにする。
いわゆる水に流すって奴だ。
前の俺が虐められやすい人間だったのも問題なわけだしね?
女子は…端の列に京子ちゃんがいた!
やっぱり獄寺くんも山本も一緒で安心した。
教卓の側まで行き、凛とした声で名を告げる。
"私"の名を。
『幸村市華です。神奈川から転校してきました。よろしくお願いします。』
「幸村は笹川の隣だな。笹川、手ぇあげろ!」
「はいっ!市華ちゃん、こっちだよ!!」
『京子ちゃん!』
「お、知り合いかー?」
『友だ「親友です!ねっ?」…はい、そうです。』
遮られちゃったよ京子ちゃんに。
でも何でかなー、立花さんに親友発言されたときはあんなに腹が立ったのに、京子ちゃんだと逆に嬉しいや。
人徳の差ってやつかな…
あ、私の言葉遮ったら煩いヤツが…!
「オイ笹川ぁ!十代目の御言葉を遮るんじゃねぇ!」
「まーまー、獄寺!気にすんなよそんなこと。市華も気にしてねーって」
『獄寺くん落ち着いて!!』
「ぐっ…り、了解しました十代目…」
おおっ!?というどよめきが上がった。
校内でも飛び抜けて有名な不良、獄寺が同い年の女子におとなしく従ったのだから。
そしてこちらも人気者な野球部エース山本と、並盛のアイドルである笹川京子とも仲がいいらしい。
転校生、幸村市華はこうして瞬く間に有名になった。
『あ…あの、さ…』
「どーした?ツナ…じゃなかった、市華!」
「お名前を間違えるなんて失礼すぎんだろ!何ですか十代目!」
『みんなに紹介したい人がいるんだ。昼休みにどっか集まれないかな?』
「おっ、じゃあ久しぶりに屋上いこーぜ!」
「俺は他の奴らに知らせてきます!!」
『あっ、獄寺くん!…行っちゃった』
「ははっ!そそっかしいな〜まさか黒曜まで行く気何じゃねーか?」
『ひ、否定できない…』
…っていうかさ、さっきから教室の掃除ロッカーから見知った気配がするんだ。
南国にある果実で、フォーク…じゃなかった槍を持っていて、ろから始まってろで終わる名前の私の霧。
ガチャ、
『…お前こんなところで何やってんの、骸』
「くふふ…流石です市華!僕の気配を察知するとはなんと素晴らし『じゃ、昼休み屋上ね。』
バタン。
もちろんガムテープで隙間なく目張りしてやった。
大丈夫だよ、昼休みには出してあげるからさ。
あいつのストーカー気質はどうにかならないもんかな。
そして昼休み。
ガッタンガッタン煩い掃除ロッカーを丸ごと窓から放り投げて授業は平和に進んだ。
黒川が俺のことを覚えていなかったのは少し寂しかったが、同性として改めて友達になれて嬉しかった。
「極限にどうしたのだ沢田ぁ!」
「芝生頭ぁ!沢田じゃねぇ幸村様だ!」
「貴女が召集をかけるとは、よほどの用事が?」
「転校初日に何かあったの?」
ひ、雲雀さんが私に優しい…!
不覚にも泣きそうになった。
そう、今まで苦労してきた分、身に染みて嬉しいのだ。
別に骸が打ち身だらけなのは私のせいじゃない。ないったらない。
「さっさと用件を言いやがれ。」
『あっ、ごめん…あのね、ファミリーに加えたい人がいるんだけど…』
「だ、誰っすかそいつ!」
「俺達の知ってるヤツかー?」
「貴女直々の推薦ですか…」
「強いの?」
「何処の何奴だ、連れてきやがれ。それとも…さっきからそこにいるヤツか?」
給水塔の影に、リボーンの黒い眼が向いた。
…凄いな。
リボーンも凄いけどそんなこと知ってる。
雲雀さんや骸も気づかないくらいに気配を消せる蓮二先輩が凄い。
『流石リボーン。……そうだよ。蓮二先輩、出てきてください!』
私の恋人は、思っていたよりも遥かに強かかもしれない。
…………………………………
応援してくださっている方へ、ささやかなお礼です。
急遽書き上げたのでめちゃくちゃな文章で申し訳ありません。
今週末のセンター、皆様の応援を胸に頑張って参ります!!
以下、誤字報告してくださった方へのレスです。
前話で"厚意"という字が間違っていると指摘してくださった方へ。
好意は相手を慕っている気持ち、厚意は相手を思いやる気持ちという意味で、
この場面の場合は厚意の方が適切だと私が勝手に判断いたしました。
気持ち悪かったら申し訳ありません。
個人的には誤字ではないと認識しておりますので、修正はいたしません。
報告・応援ありがとうございました。
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