大空が帰る日
まるで国際級の重要人物を護送するときのようにみんなに囲まれて道を歩く。
たどり着いた家を見た瞬間に、俺はまた泣きそうになった。
いつも子供たちが出はいりできるようにと開け放してあるドアをくぐる。
みんなは外で待っていてくれるらしい。
何となく足音を殺して進むと、見慣れたテーブルについている人影があった。
コーヒーを片手にぼんやりと座っている。マグカップはオレンジ色で、真ん中に間抜けなライオンのイラストがあるものだった。
"俺"のマグカップだ。
カタン、と何かに足をぶつけて軽い音が鳴った。
虚空を見上げていた視線にぱっと色が戻り、音源である俺の方に視線をやる。
「……?」
一瞬だけきょとんとした表情がだんだん崩れていった。
『…母さん』
「…ツッ君…ツッ君なの?」
『母さん俺だよ。ごめんね、ただいま』
この年(合計するともうすぐ三十路)で母親に抱きつくのは結構恥ずかしかったけど、全然気にならなかった。
母さんも一目で俺だと分かってくれて、嬉しくて暖かかった…
今日はなんて素晴らしい日だろう?
今日一日で、みんながいない十四年間が埋められていくくらい、素晴らしい。
『俺、今は違う人の子供なんだ…ごめん』
「それでもツッ君は私の子よ?気にしないで、その人のことも母さんと呼んであげてね?」
『……うんっ!』
俺はもう一度笑った。
笑顔は全く変わらないのね、と言われて少し照れくさかった。
その後バタバタと大急ぎで帰ってきた父さん(夕飯とりに行ってたんだって)に暑苦しい包容をされた。
うっとうしいよ!と言って突き放したが、顔がにやけていたのは自分でも分かった。
あぁ、幸せだ。
ここは今でも"俺"の家だった。
ここは今でも…俺の家族。
「九代目に連絡してきた。後日来日するそうだ。出来るだけ早くな」
『う、うん。分かった』
九代目かぁ…久しぶりだな。色んな人と、再び会うことが出来る。
それが嬉しくて溜まらない。
「あ。後、ヴァリアーもな」
『へぇ…って、はいぃぃいい!?』
ヴァリアー?嘘でしょ!
え?俺が女になったからもっかい倒しに来たとかそんなん!?
ブラッドオブボンゴレじゃないのに後継者なのが気に喰わないとか!?
「ヴァリアーもお前も認めてる」
『嘘ーっ!?』
嘘だぁぁあ!!あのザンザス達が!俺を認めるなんてあり得ない!
え?だってヴァリアーってことはベルフェゴールとかマーモンとかルッスーリアとかスクアーロとかもってことだよね!?
「お前が亡くなり、後継者はザンザス以外にはいなくなった。だが、その話をザンザスは頑なに突っぱねた」
『え…何で?』
だって、俺を殺しても奪いたかった地位なのに…
「"あのカス以外には付かねぇ"それが、ヴァリアー全員一致の解答だ」
いやそれザンザスだよね。ザンザス以外にまでカスとか言われたら傷つくよ流石に。
でも…うわぁ、嬉しいなぁ…
「頑張れよ、ツナ」
『…もう市華だよ、父さん』
それでも俺は、"沢田綱吉"を忘れない。
みんなの心にも、残り続ける。
そして"幸村市華"を始めるんだ。
空が赤くなり始めた。
今は夏、日は長いがそろそろ帰らなくてはいけない。
「市華、転校の件は俺に任せろ」
『うん……よろしくね、リボーン』
転校か…あのアウェーからようやく抜け出せるんだ…
でも、
『蓮二先輩とは…お別れか』
「何か言ったか?」
『ううん、何でもない』
…どっち道変わらないよ。
俺は将来、イタリアンマフィアボンゴレファミリーのボスになるんだ。
一般人と関われるわけないじゃないか。
それがちょっと早まっただけ。
俺はこれから仲間達のために生きるのだから脇目を振っている暇はない。
『…はぁ』
マフィアだからって誰かと別れるのは…これが初めてだ。
そうか、これが覚悟を決めるって事なんだ。
こんなことで…一々揺らいじゃいけないんだ。
芽生え始めた感情を摘みとることもできなくて。
ただそれに、そっとフタをした。
『あぁぁああ!!買い出し何もやってない!』
茜色の空に、俺の声が響いた。
(と思ったら、落としてたメモを拾った獄寺君が全部買ってきてくれました。)
……………………
久しぶりうp
携帯スマホにしたら打ちやすい打ちやすい。
いつでも何処でも更新が出来ます!
あ、レヴィを忘れてるのは仕様です(笑)
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