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  大空が再会する日


それは突然のことだった。


「市華、買い出しを頼んでも良いか?」
『えっ!?私がいなくなったらドリンクやタオルはどうするんですか!?』

柳先輩の突然の申し出に俺は驚いた。
レギュラー達は別にいい。立花さんに構い倒してればいいじゃないか。
でも、準レギュラーや平部員の人たちは…それに、柳さんも…!

「今日、俺は生徒会が入っていて部活には参加できない」
『や、でも、平部員の人たちとか…』
「今日はレギュラーだけの練習で平や準レギュはオフだ」
『あ…そういえば』

わぁ、俺の馬鹿!予定表もっとちゃんと見なきゃ!
羞恥であわあわとしていた俺の頭に、またぽんっと柳先輩の手が乗った。

「気にするな。お前は本当に良くやっている」
『え、う…ぁあ、ありがとうございまひゅ…っ』

頭の中がぐるぐるして呂律が回らない俺に柔らかく微笑んで、柳先輩はいった。
顔が赤くなるからやめてほしいのにっ!

『や、柳先輩っ!』
「何だ?」
『名前で呼んでも良いですかっ!』
「…ふっ、もちろんだ」
『えっと、じゃあまた…蓮二先輩!』
「あぁ、またな市華」

やった、と小さく手を握ったら周りから視線を感じた。

そういえばここ…っ!1年の廊下でしかも昼休みじゃないか!
うぁぁああ!周りからの視線がなんだか柔らかいよ暖かいよ!?

「市華ちゃんと柳先輩って美男美女でいいカップルだよねー」
「ね!2人ともお互いだけの空間って感じだったし」

クラスの友達がそんなことを言っていたのであわててとめた。
カップルじゃないし美女でもない。俺が蓮二先輩のことしか見てなかったことは否定しないけど、変な噂になったら彼に迷惑がかかるからやめてほしい。





そして放課後までさんざん友達にからかわれた俺は重い足取りで部室へ向かう。蓮二先輩に向ける顔がない。

『じゃあ、ちょっと買い出しに行って来ます。仕事お願いしますね』

まあ無理だろうけどな。と言葉の裏に縫い込んでぶつけてやったがおめでたい脳構造をした立花さんには伝わらないだろう。
もはや完全に貼り付けた笑みを向けて、俺は立海を後にした。


昔は愛想笑いなんてすぐに見破ってくれたのにね…兄さん。





《つ…は………な…もり…》

パチッ!

俺は慌てて両目を開いた。
しまった、バスに乗ったら寝てしまったようだ。

ぼやける視界で、何とかバスの電光掲示板を見る。
必死に焦点を合わせようとする俺に、信じられないアナウンスが飛び込んできた。


《次は並盛ー。並盛に停車します》



…うそだろ?






唖然とした。
そこは"俺"が生まれ育った町そのものだった。


気がついたら駆けだしていて、懐かしくて堪らない並中へ無我夢中で向かった。

校門のところで一度立ち止まって、乱れる息を急いで沈めて、向こうから歩いてくる集団を見据えた。

もう下校時間ギリギリであろう夕暮れ時。

赤く染まった道路の、校門のその向こうに……



夢にまで見た仲間達。





ずっと会いたかった、とか

何でみんないるの?とか




言いたいことはたくさんあるんだ。




ごめんなさいと謝りたい

ありがとうと感謝したい



なのに、言葉は出てきてくれなくて

みんなとの距離は近づくばかり。




みんな、こっちを見て、俺に気づいて








『みんな…!!』




喉の奥が酷く痛む。

目の奥が凄く熱っぽい。





みんなと、目があった。




「十代目…?」

「ツナ、なのか…」

俺の記憶よりも少し大人っぽくなったような獄寺くんと山本。
二人ともカッコ良いままで、やっぱり自慢の友達のまま。

「…綱吉」

「沢田綱吉…ですか…?」

未だに風紀委員の腕章に羽織り学ランの雲雀さんに、同じく未だに黒曜中の制服のままの骸。

「うぉぉお!!極限に沢田ではないか!」

「ツナが女の子のカッコしてるもんねー…」


変わらず熱いお兄さんにまだまだ子供っぽいランボ。


「ツナさん…!」
「ツナくん…?」
「ボス…っ」
「ツナさんっ」
「…可愛くなったわね、ツナ」
「ツナ兄!」

ハル、京子ちゃん、クローム、イーピン、ビアンキ、フゥ太…





「お前、何でここにいるんだ…ツナ…!」





俺の…口が裂けても言わないけど自慢の家庭教師、リボーン。




声が出ないよ、会いたかった会いたかった会いたかった!

ふらふらと近寄って、その存在が嘘幻ではないかと触れ合い確かめて、






その温もりに涙した。







神様、"未だ何者かの意志"と呼ばれる奇跡…


ありがとう、ありがとう、ありがとう、感謝します。


みんなに再び会わせてくれて、本当にありがとう。








…………………

もっと長くしたかった…なぁ…

次回は奈々さんたちと再会…予定?



 

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