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「#幼馴染」のBL小説を読む
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  大空が不快に思う日


今日も朝から憂鬱な気分で目が覚める。
最近寝つきが悪い気がするし目覚めも悪い。理由なんてわかりきっている。


まず、立花美世さん。

名前呼びの強要に始まり、先輩後輩なのに敬語無し命令。そのくせ従わなければ先輩発言。さらに譲らなければ兄さん達に泣きつくそして俺は兄さん達に激しく咎められる。

「あたしたち親友だもんねっ♪」

そう、これが決めゼリフ。お前はどっかのヒロインか。


もちろん屈するわけがない。

そのせいで今や俺は部活中レギュラーのみ完全アウェーで単独行動中。
立花美世によるスキンシップという名の妨害は除く

ちなみに俺は馬鹿じゃない。

前世でのダメツナはとっくに克服済み…着々とクラスと学校では味方を増やしている。
やっぱりテニス部のマネージャーだから嫌われるなんてことはなかった。もちろんミーハーっぽくレギュラーの話を聞いてくる子はいるがそのほかの女友達はとても優しくしてくれる。
休み時間にはお菓子を交換したり持ち込んだ雑誌を一緒に読んだり。

それに平部員や準レギュも、俺の方を信用してくれてきているみたい。



そして兄さん達。というか兄さんは、一年前のシスコンぶりが嘘のような変貌。

……あぁ、すっきりした。

なんてことが言えるほど、俺のメンタルは強くない。
流石にずっと一緒だった兄さんに縁切りみたいに振る舞われて、傷つかないわけがない。

『………はぁ』

朝練のために来た部室でそっとため息を吐いた…その時。

「お前が気を病んでいる確率100%」
『うひょあっ!?』
「女らしくないな」
『ううううう、うるさいです柳先輩…!』


心臓に悪いぃぃぃい!!

何でこの人はいつも唐突なんだっ!

いきなり無音で背後に立つなんて…リボーンみたいなマネしやがりますね!


「あんな堕落しきった奴らに気を揉む必要はない」
『堕落しきった、ですか…』
「……なんだ?」
『貴方だって傷ついているんですよね、柳先輩』

悲しいよね、貴方も。
俺よりもずっと近くで彼らが堕ちていく様を見ていたんだろう。
王者という誇りが穢される様子も仲間同士の空気がギスギスと尖っていく様子も、すべて。

「……そうかも、しれないな」
『どうすればいいんでしょうね、俺達は』


それだけ言って、俺は部室を後にした。


「…………俺…?」










今日は、どこかの学校と練習試合らしい。

面倒くさいなぁ…何で俺がこんなことしなくちゃいけないんだろう…

何で俺の世界は下らないものばかりで構成されているんだろう。


「今日は氷帝と練習試合だ。市華、校門まで迎えに行ってきて」


命令かよ。
兄さんは昔から理不尽でぶっ飛んだ発言は多かったけど、ここまであからさまな命令はなかった。高圧的だ。
しかしここで逆らうなんて無駄どころか批判の嵐で俺のHPが削られることになるだけなのでおとなしくうなずく。


『…うん、分かったよ兄さん』
「私も行くっ!市華ちゃん行こっ!」

『…あの、「美世は行っちゃダメ。」「何で!?」

二人揃って俺のセリフに被るんじゃねぇ!!果たすぞっ!

って獄寺くんか、俺は。
違う違う、断じてあんな不良ではない。
根は良い奴だけど。


あ、ヤバイ、泣きそう。



「…市華」

『や、なぎさん…』

またまた気配を感じられなかった…

柳さんはいつの間にか俺の真後ろに(またかよ!)来ていて、見えているのか開いているのか分からない目を俺に向けていた。


「あれはいつものことだ。早く諦めてしまった方が市華の身のためだ」

『…え、えぇ…まぁ』

勘違いさせちゃったな。
…まあ、それも0じゃないんだけどさ。
あれ?柳先輩の呼び方が名字から名前になってないか?兄さんと呼び分けにくいから変えたのかな…でも兄さんのことは名前で呼んでいたからそんなこともないと思うんだけど。






ナニあの集団…

校門に着くと白と青を基調とした上品なデザインのジャージを纏う人たちがいた。

おそらくあれが氷帝なんだろうけど、髪の色がうちに負けず劣らずけばけばし…いや派手…えっと豪華な色合いだ。


『…氷帝テニス部の方ですよね?お迎えに上がりました。テニスコートまでご案内します』
「はあ?誰だよお前!」

お前こそ誰だチビ。
おっとまずい。女の子はこんなこと言わない。

しかし何で俺はこんな敵意むきだしな歓迎を受けているんだろう…あれ、歓迎って言わないや

「ミーハーはどっか行けよっ!」
『誰がミーハーですか?』
「お前に決まってんだろ、あーん?」
「立海も落ちたなぁ。マネージャーもう一人おるんやて?」
「クソクソ立海!ミーハー連れてく気かよ!」

俺の身に纏う空気がどんどん降下していくのが分かる。
あ、今なら構え無し炎無しで零地点突破ファーストエディションできそう。


『うるさいですね黙ってください』


「あぁ!?何だt『黙れっつってんですよ聞こえてないんですか俺様自己中が。世の中は自分中心に回っているとでも?ばかばかしい。世の女子全てがあなた達に興味津々だと思っているのなら哀れ極まりないことこの上ないですよ。確かに今のレギュラーたちは堕落していると思いますよ、それは否定しません。立花さんに現を抜かしてやがる馬鹿ばっかりですからね。しかしそんな奴らと一括りに"立海"と称さないでください不愉快です。私はもちろんですが準レギュラーや平部員の方々は真面目に活動しています。あと柳先輩もです。間違ってもレギュラーといっしょくたにしないでください。』


……………


最近ノンブレスしても息あがらなくなってきたんだよね。


「た、立花って誰や?」
『2年から入ったって言う女子マネですよ。』
「現を抜かしてるだと?」

『本人達にその気は無いと思いますけど、客観的に見ればそうとしか思えませんよ。どの道…』



俺はオレンジ色の瞳を細め、鋭い冷酷な光を彼らに向けて言う。



『俺は貴方達もそうなると思いますがね』



気分が悪い。
あんな集団と一緒にされるなんで侮辱に等しい。

あんな奴らと…"仲間"だと思われるなんて。俺の仲間はもっとずっと、比べ物になんてならないくらいに素晴らしい人たちなのに。



もう、いないけど。



(ああ、消えちゃえばいいのに)
(全部全部、俺すらも…っ)


 

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