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  大空がときめく日


入部して一週間ほど。

部員の顔と名前がようやく一致してきた頃、俺は重要なことに気がついた。

さっきからテニスコートが騒がしいが知ったこっちゃない。
…何だこの部室は!見事に角の方だけ埃たまってるよ!


『…四角い部屋を丸く掃く。』


うん、その通りだ俺!
俺だって掃除得意じゃないのになぁ…

取りあえず床に膝をついてふき掃除を始めた。


「…関心だな」
『ひぎゃぁぁあああ!!!』


やばい女らしくない叫びになっちゃった!女になってから女らしくしようと努めてきたのに…


「その悲鳴は女らしくないから止めた方が良い確率…」

『100%ですね自覚はしてます。…何の用ですか、柳先輩』


うううう後ろに立たないでください…!
黒属を死活問題打破法として身につけたからと言ってチキンは治ってないんだから!


「特に用はないが」
『………あーそーですかー』

ついやる気のない声が出てしまった。なら来るなよ。邪魔だよ。

「立花は掃除が不得意なようだな…ドリンクもだが…」
『洗濯もですよ。』

「お前は…『オブラート?そんなもん知りませんよあっははははあのバカ兄の所為で友達は出来ないわ出来たと思えば即刻排除だわ兄狙いの奴らだわもううんざりなんですよねー無理矢理入部させられたと思えば自分はオンナノコに現抜かしてやがるし何なんだよもう!!』


ゼェゼェと肩で息をする。

しまった柳先輩にあたってしまった!彼は何も悪くないのに。
ばつが悪くてそろそろと顔を上げる。と、



ぽん、



柳先輩の手が頭にのった。暖かい体温。
骨張っているが綺麗な手がゆっくりと俺の頭を撫でる。

胸の奥が、きゅっと締まった。



「無理をさせてすまない。…が、俺は幸村に入部してもらえて嬉しい」



男前っすねー…という茶化した言葉は出てこなくて、ただ顔が熱くなっていることだけが分かる。時間が止まっているような感覚がした。


「仕事、頑張ってくれ。精市達は…何とか説得してみせる」


颯爽とコートへ戻っていく柳先輩は文句なしに恰好よかった。

…ってちょっと待て俺。
俺は男。見た目身体はともかく中身は完全に男!

なに男にときめいてるの!胸の奥が…とか表現古いよ!




あぁ!もうどうしよう!




『これじゃ…やめられないじゃん』


 

それもこれも柳先輩が男前だから悪いんです、はい。


「それと幸村、床を掃除するならジャージを着たほうがいい。膝に負担がかかるぞ」
『早く練習いってくださいありがとうございます!!!』
「?」



 

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