【設定】 ヒロイン貴族。デフォ:リア
それを奪いにいっちゃうユーリさん
お互いに一目惚れw





今日は結婚式。
他人事のように言うが、これは私事である。
本当に、望まない結婚だ。


「……」


私は無言で空をを見上げた。
空は晴れ晴れとした蒼さ…と言うのだろうが、それは私の心情の所為か無性に淋しく見えた。


「(…あの人、)」


今は何をしているのだろうか?


「……忘れられない、な…」


下町でふと見かけた、黒髪が綺麗な長身の男性。
何故だろうか、気がそちらに向いてしまう。
そう言えばあの時、目があった気がするな……また、会えたら…
そんなことを思っていたせいで、後ろからの声に気がつかなかった。


「……ま、…リア様、」
「!…あぁ!はいっ!すみません…」
「いえ、時間でございますが…」
「……はい、」


あぁ。
ついに来てしまった。
私はこれから全くの気の向かない相手と結婚し、付き合っていかなければならない。


「旦那様がお待ちになっておられますよ、さぁ、こちらへ」
「…はい、今」


でも、相手は私を愛しているようだった。そこまで必要とされると拒めないのが人間らしい。


「…(行きたくない)」


誰かが奪ってくれるのなら…
そう願うが絶対に叶うことなどはないと解りきっている。
苦しい心の内をひたすら隠し、できるだけ幸せそうに笑った。



* * *



「あぁ、リアさん!やっと来てくれた…」
「お待たせいたしました、今日はよろしくお願いします」
「そんなに堅くならないで、…緊張しないでくれ」
「…はい…」


私は貴族で、相手も貴族である。
彼曰く、美しい貴女に一目惚れした、だそうだ。


「さ、行こうか。
用意はもう既に出来ているんだ」
「(夢であったら良いのに)」


化粧を直される間も、結婚式に対する期待、憧れは薄れて行く。
前は、昔は結婚に期待や憧れを持っていたのに。
…どれもこれも、私が貴族に生まれた所為か…

化粧を直し終えると、結婚の相手が近付いて来た。


「あぁ…やはり君は美しいね…
早く君と幸せに、なりたいよ…」
「…ッ……」


顔を見つめられ言われたその言葉に、私は何も返すことができなかった。
やっぱり嫌だ…っ!

彼は式場で皆が待っている、と言って私の手をとった。



教会の内部に繋がる大きな扉が開くと、私と彼は衆目に晒される。
私は目を伏せ、ゆっくりと一歩を踏み出した。
二、三歩歩き顔をあげると、金髪碧眼の男性と目があった。
そしてその男性は私を困ったような笑みで見ると、ゆっくり口を動かした。

…ごめん、ね……?

そうすると私が疑問を浮かべるより前に、腕を掴まれ強い力に引かれた。
驚き、引かれた力の方を見た先には。

―あの、黒髪の綺麗な男性が居た。

私の心はその一瞬で、躍った。
その男性はざわつく人々の中私にしか聞こえないような声で、だが叫ぶように急ぎ言った。


「今の状況が嫌ならオレを信じて走れ!」
「…!はい!」


私が返事をする前に、私の足は動いていた様だった。
引き止める声、ざわざわと煩い声の中、私と彼は懸命に走った。



* * *



「はっ……はぁ、っ…は…ん、」
「、っは……ここまで来りゃ、もう…大丈夫、だよな…」


人通りのない、寂れた裏通りに二人の乱れた息と声が通る。
ウェディングドレスとは、本当に走りにくいものなんだな…
とか、何故かこの場に似付かない事ばかりを思う。
私は、大貴族の結婚式を途中で放ってきたのに。
それが可笑しくてつい笑ってしまう。


「っふ……くく…っ」
「…は、…あんなことして気でもおかしくなったか?」


まぁやらせたのはオレだけど、そう言って彼も笑う。
あの貴族とは一生縁がないであろう、優しく純粋な笑みだった。


「…ふふっ…それもあるかも知れません」

私が微笑みながら彼を見て言うと、彼は面食らったような顔をした。
そうして少しだけ照れながら、


「…あんたが笑った顔、すげぇ良いな、…可愛い」


と、やはり綺麗な笑みで言ってくれた。


「あ………じょ、女性の扱いに、慣れていらっしゃるんですね…」
「オレがこんなこと言うの、あんたにだけだけど」
「う……お上手ですね」
「だからな……
…聞くけど、何でお前…リア、のことかっ拐ったか分かってるか?」


…私が余りにも不幸そうな顔をしていたからだろうか…
そんな事を考えたのが顔に出てたのか、彼は深い溜め息を溢した。
違う…ってことか…


「分かってないだろうな…
リア、オレと会った…っていうか
見かけた日、分かるか?」


…それは勿論だ。
多分それから、私は彼に想いを馳せていた。


「…オレ、さ…もう言っちゃうけど、
…お前に一目惚れ……して」
「わ、たしですか…!」
「それで…今日お前が結婚するって話、
ある奴から聞いて」


あぁ因みにオレにお前の名前教えてくれたのもそいつ、そう彼は付け加えた。


「どうしても諦めきれなかったんだよな…
…で、拐わせて貰った。……嫌だったか?」
「ありがとうございます!」


質問されたことと答えが結び付かない。
…それでいい。


「あの結婚…私は本当に嫌で……
式の直前、いいえ、貴方に手を引かれるまで、
ずっと、誰かがこの身を奪ってくれたのなら、…そう思っていました」


…それを貴方は、


「それを貴方は、叶えてくださった。
私も今思うと…貴方に一目惚れ、その言葉がピッタリだと感じます」
「…マジ、か?」
「え…えぇ、あの時から貴方のこと考え続けて…、
…って、あ、あの…!?」


彼は私が言葉を言い切る前に、私の肩を掴み、裏通りの壁へそっと寄りかからせた。
顔が…近い…!


「…なぁ、リア…
こっち向いて、…恥ずかしがるなよ」
「でっでもっ……あ」


私は彼の顔を直視出来なかった、が、
彼が私の頬に手を添えたことによって、無理矢理にだが直視することになった。

―彼は、熱に浮かされたような、酷く甘い顔をして私を、見つめている。

目を逸らせない。
私はなんと言おうか、緊張、のようなもので溜まっていた唾液を、乾いた喉を潤すため嚥下した。


「リア…キス、するけどいいか」
「え、きっ、き……!」
「悪い我慢は、出来ない」
「!…ふ…、ん」


そのキスはどの誓いのキスよりも甘く、熱かった。


「は………好きだ」
「、…私も……好き、ですよ」


そうして私達は微笑み合った。
これからどうしようか、なんて分からない未来の事を話しながら。



神様でなくていい。
お互いに、愛を誓おうか。





名前も知らない愛を





(…そういえば、私…貴方の名前も知らないです)
(…あ……名前も知らない相手とこんなことしちまったな、ははっ)
(もうっ…名前…呼びませんよ)
(…ユーリ、…ユーリ・ローウェルだ)










うっひょい終わった(^O^)
長いな…まじ相手キモイ←

ふれん君はユーリ君の代わりに謝ってくれましたw
友情だね!←


失礼します。

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