今日もわたしを愛している?

わたしの一日はベッドの中で、この一言から始まる。勿論、問う相手はわたしの恋人である逆巻スバルだ。
彼はいつもと同じように当たり前だ、愛してる、とわたしを見つめ呟き、そして、お前は、と続ける。わたしもいつもと変わらず、愛してると言い彼の胸に顔を埋める。

こうでもしないとわたしは、彼に愛されていないわたしになるようでとても怖い。そんなの生きてる意味がない。彼に愛されているわたしこそが価値のあるもので、そして彼を愛しているわたしも同じく価値があるものだ。もしそれがなくなったら?答えは明白だ。生きていられない。つまりわたし達の間に愛がなくなったその瞬間、わたしに価値などなくなってしまうのだ。

愛されるためにわたしは彼の言うことなら何でも実行してみせるし、逆もまた然り、彼はやさしいからわたしの言うことを叶えてくれる。わたしはその度に喜びを感じ、このためにわたしは生きているのだと実感する。


「ねえスバル?」
「なんだ、リア」
「わたし、とってもたくさん足りないところがあるのに、スバルはこうしてわたしを愛してくれるのね」
「……お前に足りないところ?……ハッ、ねえよ」


ああ、やっぱりスバルは優しい。

わたしはスバルを見つめながら微笑んだ。
こんなにもわたしの気持ちを満たしてくれるのは彼以外ありえない。そう、彼以外の存在なんていらない。あっても必要ない。だってわたし達二人だけで全てが足りるのだから。
スバルと一緒にいる限り何一つ不自由なことなんてないし、寧ろ幸せなことばかりだ。彼に近づく邪魔なひとを追い払うことだってできるし、ずっと彼を見ていられる。こんな幸せなことがあるだろうか?

―――もし、彼を別の人に取られたら?

ふとそんな考えが頭をよぎった。
そんなことありえない、まさか。そう信じたいけれど万が一のこともあるかもしれない。そうしたら?わたしはどうなる?
頭の中にごちゃごちゃと色々な思考が飛び回り私の胸を掻き乱す。そうしているうちに呼吸をするのも苦しくなってきて、わたしは胸と頭を押さえながらスバルから視線を外し、俯いた。


「っは、……ぁ、あ」
「リア?リア!?」
「いや……いや、そんなの……いや!」
「リア、どうしたんだ!」
「スバル、ねえスバル、他のひとを見ちゃいや」


わたしが縋るように彼の腕を掴みながら震える声で必死にそう言うと、彼は一瞬驚いたような顔をしたがすぐ愛しいものを見る目つきに変わって、喉を鳴らして笑った。
わけがわからずに涙で潤む目で彼の言葉を待っていると、スバルはわたしの後頭部へと腕を回し、わたしを抱きしめてつぶやいた。


「今更何言ってんだ?俺はお前しか見てねえ」
「でも、それでも、」
「なんだ、リアは俺を信じてねえのか」


瞬間スバルの目つきが鋭いものへと変わる。ひとを殺せそうな目に怯み、喉がヒュッ、と鳴った。
固まった身体では為すすべもなく、腕を強い力でシーツに縫い止められる。スバルはわたしの目に視線を合わせたまま私の上に覆い被さり、唸るような声で言った。


「違うよな?……そんなわけ、ねえよな?」
「ぁ、スバル、ごめんなさい……っ、信じてるから嫌いにならないで!」
「……リア……」


わたしがそう叫ぶと、スバルはゆっくりと手の力を弱め、悪ぃ、そう言いながら掴んでいた腕をそっと撫でた。その彼の行動に早鐘を打っていた鼓動は自然と止み、強ばっていた身体の力も抜ける。
スバルはわたしを強く抱きしめ、弱々しい声でこう続けた。


「……疑ったりして悪ぃ」
「スバルは悪くない……私が、ちゃんと考えないから」
「……俺はお前だけいればいい」


スバルのその言葉にわたしも、と返し彼の背中に腕を回す。わたしも同じように強く力を込めると、密着する身体に妙に安心した。
もう日も沈みかけ、部屋は真っ暗だ。夜が近づくその時間、わたしたちは愛を確かめ合う。なんて、素敵な毎日なのだろうか。潤む目を閉じながら、スバルの冷たい身体に自分の体温を分けた。



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