甘える





部屋に戻ってきたら、何故か私のベッドに膨らみが見えました。
…というか


「誰なの」


まぁこの家にはヴァンパイアしか居ない筈だが。
この前調べたのだが…ヴァンパイアって招かれないと部屋に入れないんじゃなかったっけ?


「(あの人達には通じないんだろうけど)」


さてどうしてくれようかとベッドに近付き掛け布団を捲ると、金髪のふわふわ癖っ毛が。


「(これは、…シュウさんじゃないの)」


そこに居たのはすやすやと寝息を立てる逆巻シュウだった。
なんだってこんなところで…


「シュウさん、…シュウさん起きて?」


…やっぱりこの人を起こすのは骨が折れる。
これ以上起こしてもな、と思いそこから離れようときびを返す私を、後ろから何かが引っ張った。


「っ!、」


急な事態に踏ん張れるはずもなく、重力に従ってベッドに倒れた。
顔を上げるとそこには青い瞳のシュウさんが。
…何故だか、少し不機嫌な気がした。


「…シュウさん、起きてたの?」
「…………」


無言だ。
このひとは、一体何がしたかったのか。


「…どうしたの?」
「…………」


やはり返事はなかった。
彼は無言のまま私の肩口に顔を埋め、強く抱き締めた。
彼のふわふわの髪の毛か当たり擽ったい。
しかし何故こんなことをしたのか、表情さえも窺えなければ分からない。
…大方私がなにを言っても聞いていないだろうから、諦めて私も彼の背に腕を回した。
するとシュウさんはふいに頭を上げた。
ばっちりと目が合う。


「(…さっきとは違う、目の色だ)」


先程は怒っているような、そんな色だったが、
…今はなんというか


「…寂しい、の?」
「…は、何言ってんのアンタ、…誰もそんなこと言ってないだろ」
「言ってはいないけど、目は口程にものを言うんだよ」
「…絶対に違うからな」


そう言いながらも私の身体に回した手は緩まなかった。
少しの間目を合わせたままだったが、シュウさんはゆっくりと顔を近づけてきた。
私と彼との距離はいつの間にか数ミリ程度になる。


「…顔、近いよ」
「…………ん、」
「!?」


何故だろうか、彼との距離がゼロだ。
いや繋がっている、唇、が
それはほんの一瞬であったが、私を混乱に陥れるには十分だった。


「な、にして…」
「キス。ねぇアンタ俺のこと好き?」
「…え、なに?どういうこと?」


なんか今日はシュウさんに問いかけることしかしてない気がする。
私が意味が分からないというような顔で居ると、シュウさんはゆっくりと口を開いた。


「…俺はアンタが俺のものだって思ってる」


今日はなにがあるのだろうか。
そんなことを思うくらい私は動揺した。
まさか、まさかあの逆巻シュウがこんなことをしてこんな事を言うとは。
しかも、私を、


「シュウさんのもの、って」
「あぁそうだけど。アンタは?」
「…急に、どうしたの、シュウさんらしくない」
「…………」


彼は少し押し黙ってから、言葉を発した。


「…アンタがスバルと一緒に居るの見て、…なんか苛ついた」
「苛つくって…ちょっとスバルと会話しただけだよ?」


確かに自分の部屋に帰ってくる前に、私はスバルと話をしていた。
スバルは暴力はするけど、一番絡みやすいのは彼なのだ。


「スバルは優しいんだよ、だから話しやすいの」
「……へぇ」
「それに、ライトとかよりは良いでしょ?」
「…あいつには近づくなよ、変態だから」
「…まぁ、何かはされるよね、確実に」


変態的な事をされるのは御免だ。


「スバルだろうがライトだろうが、アンタが他の奴に近づいてるのを見るのは気分が良くない」
「シュウさ、」
「アンタがどう思おうが知らない。
俺のもの以外になるのは許さないから」
「………」


思わず絶句だ。
彼がこんなにも口を動かしものを言うなんて、夢にも思わなかった。


「今日は、やけに素直だね」
「……」
「私シュウさんのこと好き」
「…は?何言ってんの?」
「何って…シュウさんが聞いたんじゃん」


さっきキスされても嫌じゃなかったのは、きっとシュウさんだったからだろう。
…それじゃなくても私は、前から少なからず好意を抱いていた。


「……変わってるな」
「シュウさんこそ、
…話すなっていうなら、極力頑張ってみるけど」
「…別にもういい」
「、どうして?」


彼はまた私に軽くキスをすると言った。


「なんかスッキリした、…それくらいなら許してやるよ」
「……やっぱりいつものシュウさんじゃない」
「ただし吸血されたり犯されたりしたら死ぬ間際まで、血、吸うからな」
「…いつものシュウさんだ」
「今日は離してやらない…」
「え、ちょっ」
「黙れよ…寝るから」
「あ、……もう」


私は再び強く抱き締められ、彼は目を閉じる。
私も目を閉じ、心地好い時間に身を投げた。









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