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3-1






掴まれ、と包帯の少年に声をかけると驚いたように少し目を見開いたあと、ヒヒッと個性的な笑いを小さくこぼしたあと私の首に腕を回した。



「やれ感染っても知らぬぞ?」

『何がだよ』



適当に少年の言葉に返事しながら女どもの居ない側の壁に向かって歩くとそれに背をもたれるように座る。必然的に包帯の少年は私と向き合う形で私の膝の上に座るようになる。



『知らぬのか?業病ぞ』

「だからなんだよ、それ。おい白銀の少年、こっち来い」



白銀と聞いてぴくっと反応する白銀の少年。こちらに向ける視線の悪きこと悪きこと。可愛い顔に似合わず目つき悪いな。
いやー、アンタの居るとこ女どもに近いから何かされるんじゃないかと心配なんだよね。



『悪いようにしねぇからこっち来い』



言うと渋々といった様子で眉間に皺を寄せながらもこちらに来る白銀の少年。
案外素直じゃん、と思いながら私の隣に腰掛ける彼を少し笑みを浮かべながら見る。と肘鉄を頂いた。なにげに痛ぇ…



「やれ童、主も早に離れよ。この者の言うことに大人しく耳を傾けていては主にまで不幸の星が降りやるぞ」



楽しそうに体を揺らす包帯の少年。なんだこいつ、動きとかもろもろおもしれぇ。



「わたしはわっぱではない。佐吉だ」

「ヒヒ、さよか。して佐吉よ、離れよ。移るぞ、ウツル」



主は移りたがっているように見える故くっついてやろう。われのなんと優しきこと…ヒヒッ!

そう言って頭を私の胸元に預ける包帯の少年。コイツ楽しそうだな。まぁなんでもいいが。


しばらくこの二人のやり取りを尻目に考え事にふけるとしようと包帯の少年を腕に通す。こいつ冷たっ…子供体温は?
思いながらも目を閉じて考え事に没頭しよう。包帯の少年が何か言っているような気がしないでもないが放置だ。


ここ明らかに私がいた場所じゃないのはわかる、学校じゃないしな。じゃあなんでここにいるって、昼寝してる間に来たんだから多分夢だろう、うん。でも感じるものとかはやけにリアルだし、夢にしては長すぎる。なんなんだ。


別の国、あるいは別の世界の住人だったなんてことねぇし、親からそんな話聞いたことねぇし、むしろ親と話した記憶すらそんなねぇし。
じゃあなんで?つかなんで自分?なんでこんなとこ?なんでこんな状況?


考えれば考えるほど謎は増えるばかり。なるほど、類は友を呼ぶとはこういうことを言うのかと多分違うんだろうが思う。



「だからなんだというのだ。それは貴様の知らぬ世での出来事だろう?」



そう言った白銀の少年…確か佐吉とか言ったか。佐吉のその一言でそちらに意識を戻す。そんな長いこと考え事をしていたわけでもないし、何一つ解決したわけでもないのだがわからないことを考えても仕方ないと思って考えるのはやめにした。



「さ、されどわれがやったことぞ。故にこのように…」

「だからそれが何だと言っている。前世などと記憶にないものを突きつけられたとて知らんものは知らんのだからどうしようもないだろうが、きさまは馬鹿か」

「ッ」

『おいこら佐吉、アンタ口が悪すぎるぞ』



フン、とそっぽを向く佐吉。
一方包帯の少年は佐吉の言葉に驚いているのだろう、複雑な表情を浮かべて彼を見つめる。その顔は泣きそうにも見えるし、嬉しそうにも見えるし、困惑しているようにも見える。
アンタ器用だな。


話を聞いていれば包帯の少年は業病というものを患っているらしい。前世に大罪を犯したものが負う罰だのなんだの。他の者はそれを恐れ、自分を気味悪がり、遠ざけようとする。だから佐吉にも離れよと説得していたが帰ってきたのが先の言葉。
私も佐吉の考えには同感だな。そもそもなんだ、皮膚病で前世とか大げさな…確かハンセン病のことじゃなかったっけ…中学の時に保健で梅毒とセットで習ったキィする。



『たかがハンセン病だろ、発症率が低いってだけで感染率低いよ』



そう呟くともう寝ろ、と髪をクシャっとしてやる。ほら佐吉も、と声をかければフンと鼻を鳴らしつつも身を寄せてくっつくようにして目を閉じた。



『もう遅いからな、今は休め。怖かったし、疲れただろ』



明日のためにも体力蓄えとけ
そう言って自分も目を瞑る。







胸元に強く押し付けられたそこから小さく聞こえる嗚咽に聞こえないふりをして。




















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