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あれからしばらくするとここの見張りらしい男が来た。
「へへ、いい女がいんじゃねぇか…」
うしろでひっ、と怯える女の声がするけどこの際無視だ。私らを捉えるくらいだ、手を出すなんてことはしないだろう。そんなのに構ってるくらいなら私はまずこの腕にいる白銀の子を大事に大事に腕に閉じ込めていよう。
他の者がこの子に近づかなかったのはきっと髪の色が彼女らと違うから恐れたのだろう、私の瞳の色が違うのと同じように。
この子はきっと親と離れている間は不躾にその目線を注がれているせいで両親と離れた記憶を刻みつけた身体が無意識の内に震えているのだと思う。
だからこの子が親御さんの元に帰れるまで私が守る。
エゴ?まぁそうなるな。ただ単にこの胸に何かを抱いていたほうが私が落ち着くというのは秘密にしておこう。
冷静を装っているがこれでも未だに我が身に起きたことがうまく理解できていない。
この薄汚い小屋に閉じ込められてから何時間くらいになるのだろうか、外からは少し赤みを増した日差しが入ってきてるあたり随分経ったのがわかる。
さて、どうしたものかな…
逃げようにも手足の自由は奪われているしな。
これからどうしようかと考えていると腕の中の子が少し動く。
「ん…、」
『お、起きたか?』
顔を覗き込んでみる。起きたようだ、私をその視界に捉えると目をこれでもかというほど見開き怯えたように揺れたあと私を睨みつける。
「きさま!!何用だ!わたしをとらえてどうするつもりだ!!!」
『いやいや落ち着け少年…私もアンタと同じ捉えられている身だ。ほれ』
そう言って見えるように腕を持ち上げるとその反動で私の腕の中からずり落ちゴッ、と鈍い音を立てながら頭を思いっきり床にぶつける。
『あ、すまん』
「き、っさまァ…!!」
「るっせぇぞ!!何騒いでやがる!!!」
ぶつけた頭がよっぽど痛いのか涙目の少年。その顔で思いっきり睨まれても全然怖くねぇぞ。
少しそのやりとりの声が大きかったのだろう、見張りの男が怒鳴りながらこちらに近づいてくる。それを見た少年がびくと肩を震わせたあと、泣くまいと唇を噛み締めながらその男を睨みつける。
「てめ、いっちょ前に殺気出してんじゃねぇぞ!己の立場をわきまえろ!!!」
「…ッ!!」
『、ぐ…ッ!!』
少年の目が気に入らなかったのだろうその男が少年を蹴ろうとしたので咄嗟にかばう。自分でもなんでこんな痛い目に遭うのをかって出たのわかんねぇ…
くっそ、痛ぇ…
ぜってぇ横腹痣になってんだろ…手加減しろや、子供相手に…
『す、みません…静かにし、ときます…』
「…わ、わかってんならはじめからそうしやがれ!!」
はい…、
少年を蹴ったと思ったのに私を蹴ってしまったのに驚いたのだろう。少しどもりながらそう言ったあと、私が小さく返事したのを聞くとまた女の子たちがいるところに戻っていく。まだからかい足りねぇのか…
しかし痛ぇ…
どうでもいいがいい加減脱出方法考えねぇと…
ちらりと横に目を向ければ驚いてるのか何なのか身動き一つせずこちらに目を向ける少年。
『ホント、どうしような…』
横腹を庇いながらも起き上がると、少年の頭を撫でながら小屋に差し込む夕日の日差しに向かって小さく呟いた。
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