11.5
困りましたねぇ…。
信長公の客人であるあの方が何者かに拐われていってしまった。前田殿の連れだと聞いてはいたのですが、合流させてしまう前に予期せぬ事故が起きてしまいました。どうしましょう。
「光秀殿!お探しいたしました、」
…この方は確か、まつという女ではなかったでしょうか。信長公が前田殿に婚姻を結ぶように言った前田殿のいとこの…
周りを見れば縁側には私と二人だけ、…ああ、私になにかご用なのでしょうか。しかし光秀とは…
「光秀殿!お久しゅうございまする。この度は那古屋城への道中にて、はぐれた名前殿をこちらまで連れてきていただいたと聞き、―――…」
ああ、私のことでしたか。
そういえばそうでしたね、先日元服を迎えたことをすっかり忘れておりました。いけない、いけない。
それにしても名前さんと、おっしゃるのですか。
「…―――それで、名前殿はどちらに、」
「……」
「………光秀殿?」
「…ああ、そうでしたね」
いけない、話の途中だということを忘れては、…仮にも信長公の客人。失礼に当たっては私の首が飛ぶ。……くくく、それもまた愉しそうだ。
「ふふ、」
「…あの、光秀殿、いかがされ――…」
「名前さんは、そうですね……拐われてしまいました」
「!!?」
ああ、これと失礼に当たるのでしょうか…。驚いた顔も中々見物だ…
「それは、どういうことにございまするか」
「どうもこうも言葉の通りですよ。私に着替えろと私を部屋に閉じ込めている間に何者かと言葉を交わして行ってしまわれました」
ふふふ…混乱していらっしゃる。
私の説明の仕方に問題があったのでしょうか、事実を述べただけだというのに…これは案外、面倒なことに巻き込まれてしまったようです。
名前さんはどうやら接触したものと何やら面識があったようですし、……私にこのような面倒事を残していくとは…
ふふ、高くつきますよ。
さて、どう説明しましょうか…
貸し
(ああ…信長公にも報告しなければいけませんね)