11-2
と、決意したそばから変えられた移動手段。
はは、やっぱ重かったかー。それはすまんかったと頭を撫でようとしたら避けられた。傷ついた。ちょっとだけ。
いまはなんかパラグライダーっぽいのに乗ってる。乗ってるって言い方もなんだか語弊はあるけど、何にせよ人生初体験。
でも実は鳥か何かに乗れるんじゃないかと思ったりもしたのは秘密。だって羽!!!羽落ちてたからさ!!!!!しゃーねぇじゃん!!!!!
『あ、羽といえばそうだった』
返さなきゃいけないんだった。これ返せんかったら本末転倒よなと背中に巻いてた風呂敷を前に回してごそごそとスカートを手探る。
ポケット…ぽけっとー…あ、あった。よかった、羽もちゃんとあった。
『はい、これ落としもんな』
「……」
『あの穴蔵っぽいとこの前でお前、行く前に落としてったから。会えたら変えそうと思って』
そんだけのためにー?とか思われたとこで会えなかったら栞にでもしようと思ってたからなー…なんとも言えん。
いつまでたっても受け取ってくれない青年に首を傾げそうになって気づく。
は、はは、乗りもん変わっても両手に私らを抱えてる事に変わりはないから意味ないか。手ェ使えねぇんなら渡しようがねぇよなー。うん。どうしよう、とか考えてたらぱくぱくと青年の口が動いた。
『…あ?………え、くれんの?』
「……」
くれてやるって言ったように見えた。てかお前、声ねぇのか。なんか予想外の事態が起きたぞ。
てか要らねんだけど、いやくれるって決まった訳じゃねぇけど、無反応だし。
『10数えて無反応のままだったらこれ私がもらうぞー、いいのかー』
「……」
『……………じゅー…、…きゅー……』
「……」
『はーち…………………………76543210!はいしゅーりょー、この羽は栞にしてやる』
相変わらず無反応な青年。まったく、さっきから私一人でしゃべって、アホみたいだ。誰かに聞かれてたら絶対アホだと思われる。てか危険人物扱いだね。よかったー、誰も聞ける状態にいなく……て、
『おい黄色いの、今笑ったな』
「っ」
びくっと黄色いのが震えた。やっぱり聞こえてたのかあああぁああああああああああなんか負けた気分だあああぁああああああああああ!!!!!!!!このやろぉおおおおおお!!!って髪かき乱そうとしたけど手が届かなかった。くそぅ。
なんか黄色い布?着物?みたいなのを羽織ってるから気づかなかったけど、結構たくましい体をしているというか、自分より小さい子であることは分かるけどあっちの方が断然筋肉ついてる。ちくしょう。
てことは少年か。いや偏見をする訳じゃないけどこれで少女だったら終わる。私の中の色んなものが終わる。終止符を打たれる。
『ま、手ェ出そうってんじゃないからそう怯えんなよ』
「………」
『手ェ出そうにも届かねぇし、何よりこの青年がそんなん許さねぇと思うし』
「………」
まぁ話したくないーとか人見知りなんですーとかならしゃーねぇけど。
自分自身もそんなに喋る方ではない…と思うんだけど、ここ最近喋りっぱなしだったからかなー。なんか静かなのに違和感を感じる。あと気まずいっていうのもある。
あ、
『そういや!そういやさ、佐吉と紀之介、無事届けてくれたか?』
これが一番大事な用なのに!忘れてたとかそんなん許されないぞ!今日この瞬間まで結構気にかけていたんだから
じっと青年に視線を送る。
青年は運転に忙しいのか何なのか知らないけどずっと進行方向を見つめてて、でも聞こえてないはずはないんだ。返事をしてくれるまでこの視線は外さないぞと辛抱強く見つめていれはわ案外早く青年は折れてくれて、ちらっとこっちを見るとこくりと、確かに一回、頷いてくれた。
『……よかった、』
それさえ聞けりゃあいい。なんか、任務をまっとうした気分になる。ああ、よかった。ほんと。
『ありがとう』
そっかー、なんか心配の種が消えるとこうもスッとするというか、やる気みたいなもんがなくなるのか。ま、いいや。
はああぁー…と脱力する。ああー…きもちいー…
なれてみればこんな高さにあっても案外優雅に過ごせるものだ。なんか不思議と落ちる気はしない。
あと、横から凄い視線を感じるっ
『……』
「……」
「……」
…シュバッと目を向ければ慌てたように外される。…なんだ。
『……』
「……」
「……」
そして黄色いのから視線をはずせばまた突き刺さる視線。このやろっ
『……』
「……」
「……」
『……………………。』
そしてまた視線を外される。何がしたいんだあああぁああああああああああ!!!!!
なんて思ってても表に出さないのがクールな私のやり方だ。まったく、子どもは天の邪鬼だから困ったものだ。HAHAHAHAHA。可愛くない。
自慢じゃないが子どもの扱い方は分からん!!!どうすればいい!!簡単だ!!
子ども扱いしなければいい。
では相手が子どもでないのなら、どう対応する?
………簡単だ
『私は名前ってんだ』
まず、自己紹介をすればいい。
空中飛行