青 | ナノ




10-3






『うわ…』



遠目から見た時でもなんかおどろおどろしいとは思ってたけど、これは…、



「何をしているのです」

『え、あ…いや、ここか?』

「そうですよ」

『マジか』



うわぁ…

表すならこの一言。私は今、織田さんの城の前にいる。これは、すごい。もうそれは、うん、いろんな意味で。



『この世に存在するやつら全員に一回見てほしいわ…』

「何をいっているのです」

『いや、こっちの話』



あれから一方的に話を続ける青年に半ば呆然としながらも耳を傾けていると、織田信長がいかにビックリな人物であるかが分かって先の事に対する哀傷より話題の方へと心が移った。
なんだ織田さん、そんなこともやらかしたのかマジか。何て思うけど始終この青年がニヤついてたから実際のとこウソかホントかがわかんね。


そういやこの青年の名前なんだろ。聞きそびれてしまった。
ゆらゆらと、小さく左右に揺れる青年に紀之介を連想させられる。

そういえばあいつも元気だろうか。また自分を卑下してなきゃいいけど…あ、でもあの辺りで同じように佐吉もつれてこられたってのとはあの二人、案外ご近所さんなのかもしれない。だったら佐吉が何とかしてくれるか。
思わず笑みがこぼれてしまう。



「愉しそうですねぇ…」

『ん?あ、笑ってしまってたか』

「思い出し笑いは気狂いの証なんですよ、ふふ」

『マジか。聞いたことねぇってかお前に言われてもな…』

「おや失敬な」



でもそうなるとお仲間さんですね、と楽しそうに笑う青年。
なんだろ、綺麗なんだけどどことなく不気味で、でもなーんか…憎めないってか嫌いになれないってか…まぁ嫌いになれるほど知らないからってのもあるんだろうけど。


城に入ろうとした途端止めなきゃいけないはずの門番が一瞬後ずさってた。首を傾げそうになっているとああそうかと青年の格好を見て納得した。あんな状態じゃ怯んで当然だと、ますますはじめに自分が気づかなかった事が不思議に思えた。
その後すぐ気を取り直したかのように追ってきた門番に

"客人です"

と笑んだ青年は怖かった。今にも首を絞めそうな勢いだったから慌てて許可をした門番同様、私も慌てて彼の背中を押した。



『あ、』

「…今度はなんです」

『そういや名前は?』



そうだ、名前名前。名乗りたくないならそれもいいけど知ってもいいなら知っておきたい。

聞けば青年は立ち止まり、緩慢な動きではあったが驚いたようにこちらを振り返った。



「………、…」

『……?』

「……くく、面白いお方だ。人の名を聞くときは、まず名乗るのが常識では…?」

『………質問を質問で返すのも非常識だ』

「くくくく…んふふふふふふふは、あふははははははは」

『うわ、』



どしたし急に…マジどしたし…怖。
ええい、鬱陶しい…もういいわ!そんなにおかしいんなら一生笑っとけ!!



「ま、待ってくださいよ…くく、道はそちらではありません、ッふふ」

『……………』



振り返って、睨み付ける。
そんなに面白かったか、ちくしょ…

でも、綺麗だ。いや、可愛い…?
微笑んだりニヤついたり、それらとは全く違った、青年が今まで見せたことのなかった柔らかな雰囲気。むくれてるのがバカらしくなって自然と苦笑が溢れる。



「早く案内しろ」



はぁとため息をつけば少しは落ち着いたのかすみませんと案内を再開しようとする。



『あー、お前の部屋に案内しろ』

「…………………………………………」

『……なんだよ』

「あれこれ言いながらも…あなたにもそう言うご趣味があったのですね」

『違ぇーよ、何考えてんだ』

「何って…ナニ、んぐ、」



きっとアホなことを考えている。そうに違いないってかそうだ。
なんでさっきまで大変な目に遭ってた青年に手ェ出さねぇとなんないんだよ。私にそっちの趣味はないってもう何度も、口を酸っぱくして…、

続きを言わせる気はないと手で口を覆ってやれば、また何を考えているのか一層愉しそうに表情を歪められた。
駄目だ、こいつに何かしても調子づかせるだけだ…離そ…



「っはぁ…、…それで、なぜ私の部屋などに…」

『…着替え、』

「……風の便りに、ふしだらな衣装を身に纏わせて行う行為があると耳にしたことはありますがまさか…ぁああっ!」

『普通に考えれねぇのか』



誰がコスプレなんかするか。そっちの道に…ってかよくそんなの知ってたな…
危ない。危ねぇやつ。こんな若いうちからこうでは大人になったときが心配だ。

髪を引っ張って黙らせればまた艶声にも似たそれが。てか、意外にさらさらだ…手が勝手に髪を遊ぶ。無意識に、夢中になる。



『お前、着替えてこい。あと髪と肌も拭おう。…その髪はあまりにも毒だ』



するっと髪を離した反動をそのままに、頬について固まった血を緩く拭う。ああ…肌の感触までもが癖になる…やばい。そっちの道に興味はないけどこいつを襲おうとする気持ちがわからなくもない気がし……ぁあー…



『ほら、早くいこう』



己のバカな考えを振り払うように乱暴に髪を撫でてやった。








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