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9-3






「ははっ、アンタ移動中だってほとんど寝てたって言うのに城についてまた寝たのかい」



そうです。あれからなんだか愛しく見えた畳にダイブすれば擦れた痛みはあるもののすこしじんわりと暖かい気もする畳が居心地よくてそのまま夢の国へと誘われたのです。



「そんでもって起こされれば途端に飯かい?働かざる者食うべからずって言葉、完全に知らないみたいだねぇ…」



その通りです。まつさんに起こされ、ご馳走を振る舞われ、何をするでもなく時間を持て余し、だらだらとしております名前です。

絶賛ソーベーに虐められ中…

なんだこいつ…なんなんだこいつ…こうも第一印象とかけ離れた中身を持ち合わせていたのか…怖、すげぇ怖。



『といってもな…私も働きてぇのは山々なんだけど、肝心の仕事がねぇ…』

「いいわけだね、そんなの」

『じゃあお前が仕事くれんのか?』












…なんて言った二日前の自分を殴りたい…。

あれからソーベーは満面の笑みで色んな仕事を私のところに持ってきた。仕事と言うより雑用と言った方が…いや、でも仕事であることに変わりはないから何も言わないけど…嘘だろって泣いて逃げ出したくなるほどの量の雑用雑用雑用…
廊下掛け皿洗い洗濯草むしりから巻き藁作りまで…。女中…っていったかな、彼女らの仕事の手伝いから兵士の鍛練やらなんやらの補佐等々から城医の薬草摘みまで…ものっっっすげぇ!!!!仕事をこなした。しかもやってる最中に次から次へと全くなんでこんなに…ッ



「何してんの、名前さん。仕事終わって暇?さすがだね、要領いいのか日に日に仕事が早くなってるよ」

『…………』



疲れと、寝不足がたたって飯を食う気も起きん。もともそんなんに興味はなかったし。日に日に冷たくなる風に手足は悴んでうまく動かん。痛い。寒い。

ぁああぁ…イライラする。

頭をガシガシと掻いていれば小馬鹿にしたような笑みを浮かべながらそんなことを言ってくるもんだからすごい視線で睨み付けてしまう。不可抗力だ。

正直、与えられた仕事は何一つとしてやったことがなかった。一人暮らしをしているとはいえ、家事なんて勝手に上がり込んで来る友人か恋人のどっちかが勝手にやっててくれてたから本当にわかんねぇし…まさかこんなとこで経験するとは…。

はぁとひとつ息をついてソーベーの頭にぽんと手を置く。びくっと、小さく肩が揺れた気がした。



『ん、湯浴みはすんだようだな。もう寝ろよ、結構夜も更けた』



力なく笑ってみせた。おやすみ、
悪ィな、構ってる余裕もねぇわ。とりあえず疲れた。もう寝たい。ここから自室に戻るのすら面倒だ…
眠気か疲れか暗がりだからか、すこしぼやける視界にまばたきをして歩を進める。



「名前さん」

『………………、んー?』

「…利が呼んでた」

『………マジか』



城主の呼び出しともなれば、眠気を理由に行かないわけにもいかないだろ…ひとつ深呼吸をして眠気を紛らわせる。



『わざわざそれを言いに来たのか。サンキュな』



さて…犬さんの部屋、どっちだったかなーとゆるく思考を巡らせながら呼び出しに応じた。



「………………………なんだよ、さんきゅって」












『こんばんはー、名前です。ソーベーから呼ばれてると伺ったのですがー…』

「おお、夜分にすまんな!名前殿」



何とかしてたどり着いた犬さんの部屋。もうどうやって来たのか覚えてねぇ…
自分でも緩いと分かる声のかけ方をすればすぐに犬さんは答えて襖を開けてくれた。から入る。ああ…今正座したら私立てん気ィするわ…ぁああぁ…まぁそうも言ってられないか…。緩慢な動きで座ることは許してくれ…



「それでだな、名前殿」

『はい』

「急で悪いが、先刻那古屋城からお返事が参った」

『ほう』



と、もうしますと?なんて事を視線で訴えてみる。オブラートに包まれても今の私の脳じゃ残念ながら処理しきれません



「うむ、明日の」

『……』

「朝一に那古屋城に向かう。お許しが出たのでな!」



て、ことはやっと織田さんに会えるってことか!!!!!!!そっか!!!
ぁああー、そっか…ふ、ふふ…うむ



『それは、よか、…たです』

「うむ。…………………………………名前殿?」

『………………………』

「名前殿、名前………寝ているぞ…」









本性



(…部屋まで運ぶか)




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