青 | ナノ




2.5






いつものように寺の掃除をしていると、見慣れない人影が少し離れたところでした気がして目を凝らした。
フン、どうせまたふていなやからが汗をかいて金をかせぐ事もせずに寺のものを漁ろうとしているのだろう。そんなもの、わたしがざんめつしてやるゥ!

なるべく音をたてないように、気配を消して人影があった付近へと近づく。すこし、すこしずつ…



「…………、ッ!!んぐぅううう…っ!!」

「へっへっへ、それで隠れてるつもりかい、坊主」

「んん"ーーーッ、むんんぅ"!!!」



は、な…せぇぇえええええええええええええええ!!!!!!!!!!!!
私に触れるなぁああああッその汚らわしい手でッげびた顔でッ馴れ馴れしく近づくなぁああああ放せぇええっ!!!


いつの間にかわたしの背後に回り込んだ男がわたしの口元をむえんりょにふさぎ、量腕の自由をうばう。おーい、と他の連中呼ぶとなんだなんだと言いながらもぞろぞろと出てくる男ども。男はそのままわたしを担ぐといいエモノがあったなどとほざきにやける。



「中々の上物じゃねぇか」

「コイツならいい値段で売れるな」

「んううぅう"!!!ッーーーー!!!」

「イキも良いし、何より珍しい髪色してんなぁ」

「な、なんか見ようによっては神々しいよな…たたられねぇ?」



それはねぇだろ、ギャハハハハハハハ!!!!えぇええええいいい!!!!!!うるさい!!!いいかげん放せ!!わたしをッ!放せ何かってに移動しているうぅううううう!!!!!


こんなにも騒いでいるというのになぜ寺のものは誰も気づかない。否、聞こえていないはずはない。となると身の危険を感じて静かにやり過ごしているということか、あるいはわたしなどいてもらわない方がいいと考えてとった行動か…

どちらでもいい、あんなところになんの未練もない。が、


いいかげんその汚い手をどけろぉおおおおおお!!!!!!












…疲れた。
暴れてもどうにもならないということが分かってじっとしていれば男たちは特に何をするでもなかった。ぞくにしてはていねいな扱いだったと言ってもいい。
いつの間にかわたしは眠っていたようで、目が覚めれば見慣れない小汚ない室内にいた。フン、あの男どもにはふさわしい場所だと思っているとわたし以外にも誰かいるようで、見れば女女女…

ね、寝ぼけていたとはいえりふじんにあたり散らかしたというのに(いや、あれはわたしに許可なく触れたあの女が悪い)女は何を考えているのかは知らないがわたしをそばに置き続ける。



『どうやって脱出しようかなぁ…』

「ヒヒッ、ぬしが外の蛆虫を潰せばよいのよ」

『それができりゃとっくにしてるってんだ』



女は名をなまえと言っていた。なまえも物好きだがもう一人、紀之介も物好きだった。よくわからないがいねんにとらわれ、納得できてもいない現状を受け入れていたのは腹が立った。



「何ゆえ人には手足があるのであろうなぁ…」

「生きるために決まっているだろう」

『…………』



時々、今のように紀之介がおかしなことに疑問を持つときがある。



「………やれ名前や、ぬしはどう思う」

『…んー………』



いつも足のあいだに紀之介を座らせるなまえだが、たまにそこにわたしが座ることがある。今もそうだ。
なまえは考え事をするとき、どこかにあごを預けるくせがある。それは自身の膝だったり紀之介の肩だったり…わたしの頭だったりする。別に不快なわけではないが時々ぐりぐりとあごを動かすときがある、それがくすぐったい…そういうときはそのまま頭をいきおいよくぶつけてやっている。フン、その時のなまえはなかなか見ものだ。



「何を悩む」

『いや、今まで祿に考えたことなかったからさ』

「考えるまでもないだろう」

『んー…』



本当にわけが分からん。分かったところでどうにかなるわけでもないが…
紀之介は何がおかしいのかたのしそうに悩めナヤメと体をゆらす。付き合いが短い身ではあるが、紀之介は人がなやんだり頭を抱えたりするさまを見るのが好きなのがわかった。あくしゅみだと思う。



『あ、』

「ヒッ、なんぞ閃きが舞い降りたか?」



不意になまえが顔を上げた。そのさいに少しはなれたなまえの温もりと頭上の重みに…よくわからん、きょうぶが居心地悪いようなかんかくがしていっしゅん、ぁ、と不覚にも小さく声を上げてしまった。



『楽するためだ』

「…はて?」

『手足があったら色々と便利だろ?でもなくても生きてけなくなるわけじゃない。現に持ってねぇ奴はいるしな』

「そんなことのために…それはただのたいまんだァ!!」

『じゃあ佐吉、手足もいどくか?』

「それとこれとは話が別だァアアア!!!」



笑顔で顔をのぞき込んでわたしの手を握るなアァアアアアアア!!!!

ふんっ、となまえのうでから脱出して睨み付ける。…もうきさまのひざには乗らん。



「なれば…われはぬしらより不便な身の上よなぁ」

『そうだなー、ま、でもその分生きていく上での知識が色々身につくだろ?いざってときに生き延びれる』

「ヒヒッ、イザという時まで生き延びれるかが問題となるか」



…たまにこういった会話になる時に思う。考える必要のないことまでも深く考え込み話す二人こそ世の中のがいねんにとらわれて生きていないんだと。



「すまなかった」



紀之介に、偉そうに言った時のことを思い出す。下らないがいねんに気をとられているのは紀之介だけじゃなく、わたしもだった。否、わたしの方がそうなのかもしれない。
小さく呟くと聞こえているのか聞こえていないのか、なまえと紀之介が一度だけ静かになった気がした。気のせいかもしれない、二人はまた当たり前のことを当たり前の事としてとらえないかのように話を続ける。








当たり前の定義



(佐吉の前髪はなんでこんな形をしてんだろうな)

(われもそれは不思議に思うておったこと。されど名前や、世には触れてはならぬこともある)

(それもそうか。なんかごめん)

(そのような目でわたしを見るなあああぁああああ!!!!!!!)






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