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8-3






さぁて…日が沈みまた顔を出した時に出航ー…と、思ってたらまだ日が出てないうちからの出航だったよ…ヤサブローまだ寝てるし…。

昨日はあれから構って構って構い倒してやった。てか構え構え強請られたからそうせざるを得なかった…かわいいからいいけど。トイレにまで着いてくる勢いだったからさすがに焦った。てかホントにもうね、うん、ずっと一緒だったんだって伝われ!!!

ふと昨夜泣き寝入りしたヤサブローが過ぎりちくりと胸が痛む。何を言うでもなくただずっと静かに泣いて、嗚咽もその泣き声すらも隠そうと抑えて抑えて…今までそうしてきたのかと思うと…なぁー…らしくもなくセンチメンタルになるわけですよ…
そんなヤサブローは離れたくないと痛いほどにぎゅうぎゅうと抱きついてきてそのまま寝ちゃってな…こうして起こさずに抜け出すことにひどく苦労した…

そして港で今から乗る船を目の前にして私はそこでただ突っ立ていた。



『…私の知ってる船と違う』



でもまぁよく見てみれば先日乗った国親さんとこの船に似ているような気がしないでもない。とりあえず沈没しねぇならそれでいいやとまつさん達のあとに続いて乗り込む。



「名前さんこっちへおいでよ!」

『んー…?おー…』



乗った瞬間に早く早くとソーベーに背中を押される。このまま向こう縁から海に落とされたりしないだろうかなんて心配は杞憂だったようで甲板に出ると離されドカッと後ろから音がした。なんだ。

ってマジか。アンタそこでそのまま横になるのか、遠慮のねぇやつ。
遠くから注意するまつさんの声が聞こえるけど、私も横になりたい、まだ眠いというのでいっぱいで右から左へ受け流して同じように横になった。ああ…空がまだ青くない…ちくしょう…これまだ完全に寝てる時間だって…、なんだよ、みんな紀之介みてぇな体質かよ…

私はそんなんごめんだぞ…










『うっ、』

「あれ?名前さんもう起き…」

『………ッ、ッッ!!!…………ぉええぇぇ゛ええ…ッ』

「ええええええええ!!?!?」



ひどい嘔吐感に襲われ、身を起こして寝起きの体をフルに働かせて喉元まで出かかったそれを海へと吐き捨てる。

気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い、マジで気持ち悪い、おぇ、

嘔吐は更なる嘔吐を呼んで落ち着いたかと思えば口内に残っているそれや臭いでまた吐き出す。背中を誰かにさすられているが気休めにすらならねぇ…


落ち着いた頃には喉は痛いわ胃から肺にかけてもわもわするわ酸欠のせいか頭はぐらぐらするわで嘔吐中とは別の種類の気分の悪さに苛まれた…
まつさんの迅速な対応もあってか幾分かマシになったけどだめなものはだめ。気持ち悪ぃ…マジでこれどうにかならねぇかな…なんとかしてください。



「名前さん、もうちょいで港に着くそうだから辛抱な…」



うっすら開けた視界から心配そうに頭を撫でてくるそーべーを捉えたけど…声を出すことも頷くことも億劫で、きっと私の返事なんてわかってくれるだろうと目を閉じた。



ホント、船嫌いだ…















さいかいの約束




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