青 | ナノ




1-1






今日も今日とて青いな、空は。



毎日形を変える雲を目にしながら、気ままに動いてるはずのそれらはよくよく考えてみれば逆らえない流れにあるのかもしれないと思う。
いつもなら机に肘をついて、聞きなれた声を耳にしながらガラス越しに眺めるそれらは、いつもより近くにあるように感じる。



『手ェ伸ばせば届くんじゃね?』



手を伸ばしてみる。



……届かねぇ…。


諦めて腕を下ろして周りを見回せば大草原。こんな場所があったんだなと地平線の見える大草原を見渡す。
ここに来た覚えはない。ここがどこか心当たりもない。何もないただっ広い草原。いや、向かって左手には森だか林だか…とりあえず緑繁った空間がある。あとはー…地平線に向かってひたすら歩き続ければ何かあるんじゃないか?いや、ないかもしれないけど。


立ち話もなんだからとその場に胡坐をかく。立ち話と言っても話し相手は自分自身だから変な気を遣う必要はないのだけれど、本音として突っ立てるのが面倒だというのがあるので良しとしよう。


胡坐をかけばかいたで落ち着かないのでそのまま上半身を後ろに倒して仰向けになる。青いなぁ…空。ってか太陽がいい感じに照っている。雲に隠れるわけでもなく、照りすぎて眩しかったり暑かったりもなく。



『お前ちょっと東寄りじゃないか?』



東の方が好きなのかとかそんな馬鹿なことは思わないけど今って午前なんだな。
普段なら授業を受けてる時間帯だ…たしかこの曜日の次の時間は体育だったか…ここがどこだか分からないがシャトルランを一度でも逃れられてラッキー。走るのは苦手だ…


雲が右から左へと流れる。だから右が東なんだろうと勝手に判断してふとあることに気づく。
あの緑は西にあったか…となると地平線は東だから夕日はない。夕日に向かってダッシュなんて青春はできねぇな…そんなことして夕方にあの鬱蒼とした緑に突っ込んで日が落ちれば迷子確定だ。


うえー…やだやだ。太陽もなんか近いなー…
などと考えてると先ほどまで何もなかった地平線側から小さな黒い点が見える。



『…なんだ?』



とりあえず体をそちらに向けて横になった状態でしばらくそれを観察していると徐々に大きくなる黒い点。はて…本当に大きくなっているのか?見ようによっては近づいてきているようにも見えるぞ?


案の定はそれは動く何かでこちらに近づいてきているらしい。足音らしきものが耳に届いてきた。と同時にそれはこちらに向かって何か叫んでいるが…やっとこさ耳に声が届いてるだけで内容まではわからん。


緩慢な動きで身を起こす。あれが人であることは一応認識したから関係がなくとも話すことになるだろう。…正直面倒だがここがどこか情報を貰わないとな。



「……、 っ!! さ、……!!!」

「で、………今… 動く…、」

『……嘘だろ…』



遠目にも確認できるようになったそれは馬にまたがった人が三人。え、馬?
いやそれ以上にその者たちの手にあるものに目がいった。おいおい、光もんじゃねぇかよ!!


バッと勢いよく起き上がってそちらに体ごと向ける。光り物もとい刀らしきものを振り上げた状態で叫ぶ。
今のは聞こえたぞ…



そこを動くな



そう言われちゃあ逃げるのが人ってもんだろ!!


今振り上げてる光り物が振り下ろされれば間違いなく私の頭は胴から離れるだろうなと頭の隅で冷静に考えながらも全速力で走る。


ンだよせっかくシャトルランサボれたと思ったのにこれじゃあプラマイゼロどころか思いっきりマイナスだよ!!!命の危機にさらされてんじゃねぇか!!


いや、これは何かの撮影かも知んねぇし、もしかしたら巷で流行りのコスプレってやつかもしんねぇ…ほら最近歴女とかいうのが増えたらしいじゃん!!?ソイツらの催し物かもしんねぇじゃん!!?



「貴様!!!動くなといったのに逃げるとは!!!」

「やはりどこかの間者か!!!」



違ぇよ!!あ、いや、今まさにアンタらの手によって患者にされようとしてるとこだよちっくしょう!!!


ここには近づきたくなかったのにいいいいィィいイイイ!!!と脳内で悲鳴を上げるも足は今までで最速の早さで鬱蒼としたそれに近づいていく。







ええい!!どうにでもなりやがれ!!!





















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