7-4
「へぇ…そうだったのかい」
引き止めて、誤解が解けるよう弁明してみた。彼も中々に聡い子のようですぐに分かってくれたのはいい、が…
「でも本当にいい人がいなかったのかい?」
『なんでその話を持ち出す』
「いいじゃないか、減るもんじゃないだろう?」
『減る、私の神経が磨り減る』
全体的に黄色い少年だった。年齢はヤサブローと同じくらいだろうか、性格は真反対な感じだけど。
いや、目をキラキラとさせて興味のある話に食いついてくるあたりは似ているのだろうがなんでそこで恋愛なんだアンタは…、なんでヤサブローが女の子的容姿で男の子的分野に興味を持って男の子的容姿のアンタが女の子的分野に興味を持っているんだ。なんかウケるぞ。
ウケるがやめてくれ。切実に頼む。
「もったいないねぇ…恋はいいよ?」
『その年で何悟り開いてんだ』
「あっ…」
わしゃわしゃと撫でる。と人懐っこい笑みを浮かべてくすぐったいよと小さく返される。育ての者に大事に育ててもらったんだなと笑みをこぼしていると、そういえば小さく声を上げていたようないなかったようなヤサブローに袖を引っ張られた。
『ん?どうした?』
「う、ううん…なんでもない」
『そうか』
とりあえずヤサブローの髪も撫でてやる。やべぇ、最近撫でる以外の行為をしてないぞ。私は撫でるために生まれてきたのか。ナチュラルボーン撫でラー。
「そういやアンタだろう?名前ってのは」
年上をアンタ呼ばわり…一瞬思ったが年齢を気にしないいい考え方を持った子じゃないかと思ってスルーすることにした。
なんで私の名前を知っているんだ私はアンタの名前を知らないのに。とりあえず聞かれたから頷く。
「国親のおっちゃんが呼んでたよ〜」
『マジか』
「うん、それ頼まれた」
『そうか、ありがと』
……行くか。
「あー、そっちの銀髪の子は残って俺と話してようよ」
「え…で、でも…」
「俺あの部屋にいるの退屈なんだよな〜…」
「えと…え、と…」
…。
大丈夫、ヤサブローは食べられるような子じゃないしこっちの少年はそんな子じゃない、はずだ…。てか一人で置くのはさすがに心苦しいからな…
『すぐ戻るから』
「……わかった…」
ヤサブローは物分りがいい、たまにそれが心配になったりもするけど、…大丈夫だろ。でもまぁ、こっちの少年に預ければ大丈夫な感じがある。根拠はないけど確信はしてる。つかすぐ戻ればいい話だし。
『じゃちょっと行ってくる』
「アンタ、恋してるね」
「へ!!?」
目を見開き、驚いた顔を見せてくれるこの子は、確かやさぶろーって言ったかな。国親のおっちゃんが言ってた長男だ、きっと。
なんでこんな格好をしてるのかはわからないけど、そういうのが好きなんだろ。個性的でいいねぇ。俺も何か特徴的なモンを身につけよっかなぁ…
「なっ、なんで…」
「分かりやすいねぇ…」
「カマかけたの!?」
「いーや?そういう顔をしてたからだよ」
隠しきれてないのは可愛いねぇ、自分の感情に素直なのはいいことだよ。大人になるにつれてそれは抑えなきゃいけないんだってまつ姉ちゃんが言ってた。けど、自分に素直で居れなくなるくらいなら大人になりたくないような気がする。
やらなきゃいけないことに縛られて、やりたいことに目を向けることが許されなくなる。そんなのは…哀しい。
「あなたは…だれ…?」
「ん?俺かい?俺は宗兵衛ってんだ。よろしく」
「宗兵衛…僕、弥三郎」
「ん、国親のおっちゃんからちょっと聞いてる」
まつ姉ちゃんはここの魚が好きだからなぁ…国親のおっちゃんと話を弾ませてるかもしれない。そんなにトシのために必死になれるなら早く婚姻を済ませればいいのに。
みんながまつ姉ちゃんとトシみたいなら、戦のない世の中になんてすぐなるのに…。この子はそれを分かってくれるかもしれない。
話すのが楽しみになってきた。
こどもから見た世界