青 | ナノ




5-1






「…っ、 …、ッ!!!!」



遠くから声が聞こえる。少し切羽詰まっているように聞こえるのは、気のせいだろうか。
だがあいにくと今はそんなものに構っていられないんだ、疲れたし痛いし私は不死身ではないから休憩が必要だ。いつの世もいかなる時も人は自分が一番カワイイって生き物だ。私だって例外じゃない、だからこのまま眠り続ける。


しかし体を揺すり続ける揺れは治まるどころかひどくなる一方で…



『地震か!!!紀之介ッ、さき、、、っぐ、』



自分が今どこにいるかくらいわかる。寝起きは悪いが追われている身で、しかも守らなきゃいけない子供を連れているからいくら疲れていても頭の隅から緊張感が抜けるわけはなく彼らの安否を確認しようと名を口にする。地震でこの場が崩れ、生き埋めになる前にここからでなければ。
だが、最後まで呼ばせてもらえず何者かによって後ろから口元を押さえられることによって途切れてしまった。
咄嗟にそれに攻撃しようとするがそれより早く「やれ少し落ち着きやれ」と聞きなれた声が耳元で聞こえてきた。



「外に何者かが居やる、あまり騒ぐでない。見つかれば文字通り袋のねずみよ」

『…紀之介…?』



振り返れば見慣れたものの顔がそこにあり、よく見てみれば私の口元を抑えてた手は包帯で巻かれていて、間違いなく紀之介のものだった。
その隣を見れば馬鹿が、とよく悪態をつく口がいつもどおり健在の佐吉が座っており、先程まで私が慌てていた原因の揺れも気づかないうちに治まっていた。


ということは私はただ単に彼らによって起こされたというだけであって別段地震があったとか命の危機に今あるとかいうわけではないのかとホッとするのもつかの間、先ほど紀之介が発した言葉が耳からやっとこさ脳内に到達した。


外に何者かが居る…?


意識を外に向け、しばらく静かに様子を伺っていれば確かに話し声はして、複数の男のものだということがわかる。
横目で佐吉を見れば気丈を保とうとしているが隠しきれていない恐怖が握り締めた拳の震えから見て取れる。同じく紀之介も恐怖を抱いているんだろう、自分を落ち着かせるために発したいつもの笑い声がかすれていた。


スカートを頭から羽織おるようにすると外と繋がる穴に背を向け、二人を腕の中に抱く。外から見える“色”の部分を出来るだけなくす。ここに人がいないと思わせなければこの子らが危ない。痣どころじゃすまない、骨折や切り傷なんて出来たらと思うと血の気が引いていく。


二人を抱きしめる腕に自然と力が入る。



頼むよ、来るな…



来ないでくれよ…ッ



自分の鼓動すら耳に入らなくなるほどの緊迫の中、ひたすらに息を殺して隠れていた。

と、ぐっと息がつまり、前方へと体が傾くのを感じて腕の中に目を向けると真っ赤な顔で襟元を思いっきり引っ張る佐吉がいて、隣の紀之介はというと少し青白かった。
何事かと腕を緩めて顔をよく見ようとしたとき、二人が思いっきり肺に空気を取り入れた為にむせて、やっときつく抱きしめすぎて彼らが息をまともにできてなかったのに気づき、申し訳ないことをしたと思いながら背中をさすろうと手を伸ばす。少しは落ち着くだろう



「名前ッ!!」



触れる直前、佐吉に名前を叫ばれ、その目が後ろに向いているのになぜかすぐ気づき、反射的に彼らを背に隠すように振り返り、拾った短刀を構える。


片膝を付いた状態でそれは目の前にいた。


“それ”というのも…黒ずくめの人が目の前に一人居たというだけだけど……
…なんつったらいいんだろ。私らを追っているだろうと思われる賊とは違う。雰囲気からすべて。

のど…ぼとけが見えるから男なのだろう、顔は少し隠されていて、外からわずかに差し込んでくる光を反射して彼の髪に写る色は赤。


この緊張の中、その色…彼の髪に目を奪われてしまった。




















[index]



人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -