青 | ナノ




4-2






太陽の位置で方角を確認しながらひたすら西へ西へと逃げた。


東に行けばきっと私が居た大草原に戻る。そうなれば追っ手が来たときに隠れられる場所がないからすぐに捕まって逆戻りになるだろう。
その上きっと何か危害が加わる。私だけならまだいい、いや、全然よくないけど。


それでも私はまだなんとかなる。でもこの子らは?数日飴以外のものを口にせず怯えながら傷の痛みに顔を歪ませて…
少しでも早く家に返してあげないと…



「なまえ、なまえ!!」

「やれ名前!!」



足元にひやりとした感触を感じ二人に呼ばれていることに気づいた。
足元を見るとそこには水が流れており、ああ川かと一人納得する。見渡せばあちこちに段差やら軽い崖やらがあって、太い木の根があちらこちらで地から顔を出している。
耳を済ませると川の流れと葉が擦れ合う音意外聞えない。


なんとか、逃げれたかと思うと一気に身体を襲う倦怠感。このままだと倒れてしまうのでなんとか川から出て小さながけの下で洞窟状になった木の根の中に入る。


外から見えない程度まで入ると二人を下し、スカートを脱いでそこに敷く。
二人はなにやら騒いでいるが…悪い、耳に入ってこない。半ズボン穿いてんだから大丈夫だろ…。二人をそこに座らせるとフレザーを脱いで紀之介に、セーターを脱いで佐吉に羽織らせる。



「お、おんなだったのか!?」

『ちょっとそこで待ってろよ、飲みモンと…見っけたら食いモンとってくるから』



女特有の身体の丸みを目にして驚く二人の言葉は正直言うと耳に入ってこなかった。絶対に動くなと釘を刺した後外に出る。


ここに来るまでに、あの場にいた誰かが落としたのだろう短刀を見つけたので拾っておいて本当によかった。中々上等なもので、多分盗品なのだろうな、よく切れる。本当によく切れる。


少し歩くと、切られたのか倒れたのか知らないが足元には何本か横たわる竹があったから筒状になるようそれを切っていく…
本当によく切れる短刀だ…


4、5本筒を切るとうまい具合にそれに穴を開けて千切った袖をそれらの蓋代わりにする。
川に行くと竹筒とその蓋をよく洗って水を汲む。持ちにくいが水分を調達できただけよしとする。
よく見れば川には魚が居て、ここは上流なのだろう、刺身でも口に出来る淡魚があった。よかった、火がないからと少し諦めていたけどこれなら大丈夫そうだ…筒を川岸に置いて魚に向かって短刀を投げるという無茶苦茶な両方を何度か繰り返すと5匹くらい取れたのでよしとする。


すげぇ疲れた…けどこれ下ろさねぇと…。
なんとかそれらを捌くとちゃっちゃと刺身状にし、それを捌いていた綺麗な岩の上に置いたまま何か皿代わりになる葉っぱを摘みに行く。
ついでにその葉のある木の隣に木の実が成っていたので試しにとって口にすると甘い。
緑からピンクのものがあり、熟しているものには赤いものがあった。そういえばこれは南国に成るものじゃなかったか…幼い頃の事だが、数少ない親との記憶の中で南国に言ったときそこの者に甘いからと勧められた記憶がある。


なんで南国のモンがここにあんだよ…と思いながら籠代わりにした服に入る分だけ取る。
戻って葉を洗うと刺身をもう一度洗って葉に乗せ、面倒だが木の実も洗っていく。


すごく持ちにくかったがなんとかそれらをもって根の中に戻るとおそいぞっと泣きそうな顔で佐吉が迎えてくれた。


私が持っていたものを見ると目を見開き、手伝ってくれた。紀之介の元につくとそのまま座り、水やら魚やら木の実やらを安全だからと軽く説明しながら食わせる。



『名前は博識よなァ…』



女とは思えぬと笑いながら物を口にする紀之介を横目に木の根を背もたれにしながら目を瞑る。



『食い終わったらそこの隅に置いとけ、残すなよ。腐ると面倒だから』



あと危ないから出るな…どうしても出たいなら私を起こせ、

本当に疲れた…少し休もう。


なまえは食わないのか?と佐吉に魚を差し出されたがお腹がすいていないことを伝えると彼の頭を一撫でして私は眠りに落ちた。









脱走




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