4-1
「きゃあああぁぁああああっっ」
悲鳴を聞いて佐吉は目を覚ます。
外がいつも以上に騒がしい、中に居る女どももそれに気づいたようできゃーきゃーと叫ぶ。キン、キンッと金属音が交わる音が聞こえてくるから何か争っているのだろう。
きょろきょろと不安そうに揺れる瞳で辺りを見回す佐吉を抱き寄せる。
『大丈夫だ…落ち着け、』
何が大丈夫というのだろうか、そう書いてある顔でこちらを見るが構わず抱きしめる。
佐吉の隣には同じように不安そうな紀之介が居たが佐吉の視線を感じると大丈夫だと言うように頭を撫でた。
ここから逃げるといったが頬は腫れてるわ、足首捻ってるわ、横腹に青痣出来てるわと改めて自分の体が意外にもボロボロだということに気づいて知らず舌を打つ。
その時、バァアンッ!!と大きな音を発しながら壁が壊れた。見ると外から吹き飛ばされてきたのだろう、男が気を失っていた。
その手にはボロいが刀が握られていて、それを見た瞬間やることは一つ。
『ぐッ…!!』
「なまえ!!何をしている!!」
「やれとうとう頭がイカレタか」
縄で縛られた足で器用に歩く、といっても限度があるからちまちまとしているが解こうとした努力のおかげか初めよりはだいぶ緩くなっていた。そのまま男に向かっていく。遠巻きに見る女どもが何かを言っている気がしないでもないがそんなのどうでもいい。
痛い、いっってぇ…ッ!!!
体を走る激痛に顔を歪ませながら男の元にたどり着くとその場に座る。それを見た紀之介と佐吉が駆け寄ってきたため少し離れているように言う。して紀之介が佐吉をなだめながら離れてくれた。何をしようとしているのか察してくれたのだろう、紀之介は聡い子だ。
刀を取って足の間に挟むとまずは手の縄を切り、開放された手で足の縄を切る。
痛む足に鞭を打ちながら佐吉たちの元に行き、佐吉の縄を切ると刀を女共の元まで滑らせる。本当はこの外の方が危険だから手放したくなかったんだけど別のを拾っておこう。
『逃げたきゃそれで自分の縄を解いて逃げろ』
女どもを助けてやるほど優しくはないが見捨てるほど冷酷でもないつもりだ。
紀之介を背負い、佐吉についてこれそうになかったら呼べと声を掛けると小屋を後にした。
案の定外では戦いが起こっていて、それが幸い、私らの事には気づかなかったみたいで上手く小屋から離れられた。尚も木々の中を走っていると後ろから佐吉の声がした。
「つ、つかれたぞ…、なまえ!」
「わ、れの腕もそろそろ…」
申し訳なさそうな顔で二人にそう言われ、紀之介を前に抱えると、佐吉には背にくるように言った。
「む、無茶だ!!」
『止まってるわけにはいかないんだ、アンタならこれくらい頑張れるだろ…?』
と一旦紀之介を下して頭を撫でてやると涙目ながらも頷いてくれたのでわしゃわしゃと少し乱暴に撫でたあと首にしっかり腕を回すように言った。確認すると紀之介を抱えなおし、力を振り絞るように立ち上がると走った。
さっきよりも早く、もっと遠くに行けるように。
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