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3-3






それから少しすると佐吉も目を覚ました。
そして包帯の少年を目にすると貴様、人が名乗ったというのに名乗らないとは、と毛を逆立てた猫のような反応を見せるので包帯の少年は独特の笑い混じりにわれは紀之介というと名乗った。


二人は気が合うというわけではないが気が合わないわけでもない。いや、どちらかといえば仲のいい兄弟のようだけど。ぎゃーぎゃーと佐吉が紀之介に噛み付こうとしてもその頭を撫でながらそれを宥める。仲良きことは美しきかな…


それを眺めながら懲りもせずここからの脱出方法を考えていると、外の男の声が減ってしばらく経った頃だろうか、ぐぅう…と、どこからか腹の虫の鳴き声がした。
二人に目を向けると佐吉が顔を真っ赤にしていたからきっと彼のだったんだろう。



『紀之介、私のポケットあさってくれ』



たしかいくつか飴が入ってたはずだ。
ぽけ?と聞き返してくる。衣服の表面になんか袋みたいな穴みたいなのがあるだろ、とブレザーの左ポッケを顎で指すとああ、と言ってそこに手を突っ込む。


そこから出てくるのは色とりどりの飴。ミルク味が多いのは指摘してくれるな、私が好きだってだけだ。



「なんぞ、これは…はて、見たことない包だが」



紙ではないのか?といつの間にか顔の赤みの引いた佐吉が紀之介の手の中を覗き込むと一つ手に取る。



『プラスチックだよ。紀之助、私の手に一つ白いのを置いて自分の分取ったら他は戻しとけ』



言うと素直にそれに従ってくれたのでこうやって開けるんだと見せる。面白そう、と書いてある顔で二人共同じようにやってみるが紀之介と違って佐吉はうまく開けれなかったようで飴出ねぇだろってサイズの穴しか開けられなかった。
諦めず逆も、とやったはいいが結局四ヶ所とも同じようになってしまった。



「なぜだ!!!」

『いやいや落ち着け』



笑うのをこらえる私と違って紀之介はヒッヒと笑うと佐吉に見せつけるように飴を口に入れた。

性格悪ィ…



『真ん中の方で試してみろ』



言うと今度は開けれたが勢い余って中の飴が飛んでしまって運の悪いことに床にあった隙間にそれは落ちた。
ホールインワン…なんか、逆に色々すげぇな…


なんて感心していると大きくなる紀之介の笑い声と比例して佐吉の眉間に皺が増えた。いや、前髪で見えねぇけどわかるだろ?なんかさ。で、それが徐々に泣き顔に変わろうとするもんだから問答無用と言わんばかりに自分の手にあった飴を突っ込んでやる。
その際私はバランスを崩して紀之介ともども床に倒れてしまったせいで紀之助の笑い声がますます大きくなったのは言うまでもない。



『またあとで新しい飴やるから、次頑張れ』



今のでいろいろ学び取っただろ?と笑みを向けてやればフンと顔を赤らめてそっぽを向く。
素直じゃねぇの。可愛いからいいけどな。



『アンタはいつまで笑ってんだよ』

「ヒヒ、ッひひひ…!!」



ったく、楽しい奴め…
まこと愉快、ユカイと言ってるアンタのが愉快だよ。


とりあえず起き上がると紀之介はゆっくりと私の膝から下りた。



『ん?どうした?』

「いやなに、そろそろ主の膝が痺れただろうとわれが気を利かせてやったのよ。」



優しい、ヤサシイ。
自分で言うか、普通と佐吉とは反対側の私の隣に座るのを見る。



「ときにぬし、名はなんと言う?」

『あ?』

「われと佐吉の名を聞いておきながら己の身を明かさないとは誠、卑怯だとは思わなんだか?」



それを聞いてきさまっ、わたしを裏切る気か!!とわけのわからん事叫びだす佐吉をうるさいと宥める。



『そういや名乗ってなかったっけ』

「われは聞いておらぬ」

「わたしもだ!!」



佐吉や、耳元でそう叫んでくれるな…



『名前だ』

「名前と申すのか、やれそうか」



なまえだな!覚えてやろう!と何故か偉そうに言う佐吉をなでてやる。
やれやれ、一日でこの子達といることに少し慣れた自分がいることに思わずため息が出た。









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