Novalis | ナノ


遊んだ





一体どういうわけなのだろう。


「あの、大学は…」
「済ませた」


今日は私の定休日。といっても世間一般のように土日に休みをもらえるというわけでもないから平日なんだけど…
なぜ彼はここにいるんだろう。
二度目に彼を拾って以来、彼は度々うちに来るようになった。どうしたのかと聞いても気が向いたとしか言わないから気分屋なのだろうと好きなようにさせる事にした。

お兄さんは石田三成っていうらしい。はじめに名前を聞いたときはさすがに吃驚した。
だって…ねぇ?少し前までならふーんって済ませられたと思うけどここ最近は歴史ブームとかで天下人?である徳川家康だけでなくなんとかって戦いで負けちゃった武将さんの名前もよく聞く。それとこのお兄さんの名前が一緒なもんだから…うん。ご両親は物好きだなって感心した。
彼は大学生らしく、すぐそこにある国立大学に通っているらしい。……意外に頭がいいのかと驚いたのは秘密だ。

そして今日、平日にも関わらず彼はこんな昼間からだというのにいつものように我が物顔でリビングのソファにてくつろいでいる。


「今日は午前だけだったんです?」


思わぬハプニングが起こったものの、今日が休日であることに代わりはないということでゆったりとした朝(昼)をすごそうと寝間着のままコーヒーを作りに対面式キッチンへと向かう。


「ああ」
「さぼり…とかじゃないですよね?」
「あたりまえだ」
「ならいいですけど」


何か要りますかーときけば要らんと即答される。彼は極度に物を口にしない。極度に。ただ用意されれば黙って食べてくれる。いい子だ。今日は何を食べさせようかと冷蔵庫を開ける。
んー…なんかぱっとしない中身だな…
とはいっても特に足りないものはない。特に欲しいものもないし無駄遣いが出来るほどお金に余裕があるわけじゃないから買いものにはいかないけどさ…ほら、給料日前だし。
と言ってもなぁー…


「おい」
「………はい?」


何を作ろうかと考えながらシンクを背もたれに出来たコーヒーを啜ってたら声がした。
見ればあれはなんだとP●P3を指差すお兄さん。


「P●P3です」
「なんだそれは」
「……………………………………………Σ!?」


なん、だとぉおおおおおおおおぉおおおお!!!?!!!!??!?P●Pを知らない!!!!!!!!!!!
いや、やめろ…それは偏見に値するぞ私…世の中にはゲームに興味を示さないどころか本来やるべきことをやる時間を費やしてまで向き合うことになりかねない魔力を秘めているこの機械を見下しあわよくば排除しようと企む者共(夜更かし好きなお子様をお持ちのお母様方含む)もいるのだぁ…なれば無知なお兄さんがそちら側の人間になる前にP●P3の魅力を伝え、こちら側に引きずり込んでしまった方が得策ではないだろうかああそうだそれは名案だよしその作戦で行こう


「ゲーム機ですよ。ストレス解消に使ってる娯楽です」
「娯楽?ふん、くだらん。そんなものは己の道が見えてない上に進む気力のない脆弱な輩が好むものだ」


んだとぉおおおおおおぉおおお!!?!??!!こんにゃろっ、もっかい言ってみろ!!!!!!!


「あ、はい、そう言われてみればそうですね」


………………本音とか言えるわけがなかった…
あぁ…今まさに自分がこのお兄さんのいう"脆弱な輩"に所属していることをひしひしと実感してしまって、あれ、なんか視界が…

はぁ、と小さくため息をついてお兄さんも用はないだろうと踵を返す。


「どう………」
「…?」
「……どう、使うのだ…?」
「ぇ、」


後ろから声がした。いかん、幻聴が聞こえ…そんなに疲れてたのか私と軽く小芝居をしながら振り返れば興味津々といった目でP●Pを凝視するお兄さん。
声だけ聞いてれば全然分からなかったけどものすごく目がキラキラしてるよ!!!すごっ!なにこれなんかかわいっ!


「えっと、電源をつけてソフトを入れたら遊べます!」


小走りにお兄さんのところへ行く。いつのまにかP●Pの前に移動して正座していたから手早く起動させた。


「おい、このCD…黒塗りされているぞ。これでは映らないだろう」


いたずらか?と首を傾げるお兄さん。
ちがっ///こういうもの!ソフトはこういうもの!人っていくつになってもお兄さんみたいに純粋な目で疑問を抱くことが出来るんだねっ、すっごい感動!
なんて思いながら仕組みは分からないけどこういうものなんですーと適当に返す。お兄さんの目は釘付けだ。これがさっきまで娯楽はうんたらと言っていた人と同一人物とは思えない。

一番好きな格闘ゲームをセットし、流れるOPをBGMにますます輝きを増すお兄さんの顔を飽きずに眺める










意外に強いよ

(おのれぇええええ!)
(わぁ…)
(待てっ!逃げるな!私に殺されろぉおおおおおおおおぉおおおっっ!!!!!)
(えー…嫌ですよ)





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