赴いた
「三成?どうしたんだ三成今日は一段とおとなしいじゃないか」
「黙れ家康死ね家康毎度毎度斬滅してやれるほどの暇と優しさを私は持ち備えていないから屋上へ行って道路を舗装中の輩に向かって飛び降りて死ねあるいは車に撥ねられろ」
私にはとても尊敬している方が二名いらっしゃる。秀吉様と半兵衛様だ。
御二方に貢献できるように努めていらっしゃる会社で働きたいというのにその前に大学を卒業するようにお言葉を賜ったためこうして必要あるのかすらわからん見覚えのない輩の話を長々と聞かされている。こんなことをしている暇があったら秀吉様にお茶をお出しして半兵衛様の方を揉んで差し上げたい。
しかしこれも御二方の即戦力になれるように必要なこと、どんな苦行でも私は耐えてみせると興味を持てない講義を真面目に受けていたというのに、それが最近できなくなった。
先日会った女のことが頭から離れない。なんだというんだ。
「三成」
「黙れと言っている」
「なぁ三成、ワシと言葉を交わしてくれ」
そういえば、名前を聞いていない。
私の体に触れておきながら名乗りもせずに私を置いて去るとはよほど斬滅されたいらしい。…斬滅…?
私が、あの女を…?
…あの女には簡単に死なせるわけにはいかん。きっちり償ってもらうためにも傍に尽くすようにしてやろう、私をどのような状態で見つけ何故連れ帰ったのかはしれんが刑部が言うには的確な処置らしい。何がそうなのか分からんが刑部が嬉しそうにしていた。きっとあの女には何か使い道があるはずだ、半兵衛様の力にもなるはずだ。
「三成?三成ー」
苦しい…
呼吸を許さないとでも言うように何かが私の胸を締め付ける、きつく締め付けるが痛くはない、いや…痛いが…私の知っている痛みでは…ない、
名前を、なぜ、名乗らなかった…
あれだけ私についていながら呼ぶ必要も知る必要もなかったと…?
そろそろ講義が始まる時間か、窓越しに見える外にはあの日のように雨が降っている。
雨は、嫌いだ…
嫌いだが、利用価値は…あるのかもしれん…
もしかすれば―――…
「みーつーなーりーーー」
「ィイイエエヤアアアスウウウゥゥウウ!!!!!貴様ァなぜどこまでも私の邪魔をする!!!?!?」
「ははっ、ワシは何もしていないぞ?」
「そもそもこれはすべて貴様のせいだ!!そうか、貴様のせいか、おのれイイイエエエヤスウウゥウウ!!!!!」
「三成?三成だからワシ無実…」
雨…
やはり、嫌いだ…。
外に出れば無力感とひどい喪失感を雨水と共に体に叩きつけられる。
なん、だというんだ…