拾った
明日から休みだぃええええええぇぇエエェェエエエエエエエイイ！！！！！！！！
天気は土砂降りの雨だけど私の心晴れ模様！！！！快晴よ！！！！
学生の頃は早く社会人になってこんな生活から解き放たれてやるなんて思ってたけどいざ社会人になってみれば登校する学生の姿を見てはハンカチを噛み千切りたい気分を贈る日々よ。
そんな私は高校を卒業して一会社員になって約一ヶ月。ただいま帰り道。休日は何をして過ごそうかと少し浮かれ気味だ。
自立したいからなんて言って実家を離れての就職になったんだけど、猛烈に帰りたい。家に帰っても出迎える人いないし家事面倒だし。仕事が終わればそんな気力なんてなくただただ家に帰れたっていう開放感からスライムになっちゃうだけなのよぅ。
住んでいるマンションまでの道のりは車が少なめだからいつも結構飛ばして帰っているんだけど今日は雨だからそれが作り出す霞で前がちょっと見にくいのよねー…それもあっていつもよりスピード控え気味。ないとは思うけど道のど真ん中に人とか立ってたりしたら…
っていたあぁぁぁぁアアアアアアアア！！！！！
ちょっ、ちょちょちょ何してるの青年！！！！
信号も横断歩道もないところで何をするでもなくただつっ立っている人影。ありえないだろと思いつつももしかしたら精神を捨ててはいなかったから思いっきりブレーキを踏めばなんとか轢かずに済んだ。
卒業したばかり、つまり免許を取ったばかりな私は初心者なわけで、余裕だとか調子に乗ってたのは反省してるけどなんでそんなとこにいるのかな心臓バクバクじゃないかと怒りをあらわに車を降りた。
「だっ大丈夫ですか…っ」
しかし車を降りてしまえば雨に濡れて頭なんかすぐに冷えた。ちょ、ほんと、大丈夫ですか
「お怪我はありませんかっ、痛くないですかっ、記憶はありますかっ」
一向に微動だにしない青年はショックを受けているのだろうか。そりゃあこんな近くまで車に迫られたらねっ、ビビるよねっ、私ならビビる。
「あの…」
「……」
「………もしもし？」
「…………」
…………無反応、だと…！？
え、これはもしかして重症パt…
「ってちょっ、お兄さん！！？おに、う…っぐ…」
大丈夫だろうかとやってはいけないと分かってても肩を揺すれば虚ろだったような気がしないでもない目が閉ざされ、瞼が落ちると同時に体が地面へと崩れ落ちていった。
のを反射的に抱きとめたら女にあるまじき声が出てしまった…
え、お兄さんほんとどしたの？えっえっ、これヤバくない？やっぱり重症じゃないってか体冷たッ！！！何時間ここで突っ立ってたのってもしかして立ったまま気絶とかそういうやつですかっ、
私のせいじゃなかった…ホッ
じゃなああああああぁぁあいいい！！！これ早急に身体暖めないとじゃない！！
そうと分かればこうしてはいられない、シートが濡れるのはあれだけどこの人の家分かんないし逆にマンションはもう目と鼻の先だから！！玄関口に車椅子置いてあったからそれで部屋まで運ぼそうしよっ
お兄さんの体は覚悟していた重さよりも遥かに軽かった…。
やばい、肌色がヤバイ、だめだ下手したらこの人死ぬ、てか死人にも見える。
車を駐車して、玄関口から車イスを拝借して奮闘すること十数分、やっとお兄さんを車イスに乗せれたっていうのに運の悪いことにフロント付近に人が居てぎょっとされた…。
「雨で体を冷やして倒れちゃって…」
HAHAHA。
嘘はついていない。ただ発した言葉から勝手に知り合いだと認識した貴殿が悪い。いや真相は分からないけど多分そう。
部屋は一番上と言うわけではないけど結構高いところにある。お金に余裕があったわけじゃなくてただそこしか空いてなかったってだけ。
とりあえず部屋につくと玄関に下ろ……そうとして落としてしまった。ごめんって心の中だけで謝る。だって起きてないし。
車イスを急いでエレベーター付近に邪魔にならないように置く。きっとあとで見回りにきたマンションの人が持っていってくれる。
部屋に戻ればさっきと全く変わらない状態でお兄さんが横たわっていて、車のシーツは良しとしたけどさすがに家の中まではなー…ととりあえずバスタオルを取りに行って拭いてやる。
お兄さん、一刻も早く目覚めた方が身のためだよ。このままだとあなたの服を剥いて私の緩めのジャージに着せ変えられることになるよ。裸見られるよ、いいの？私はやだ。だからお願いだから私に貴方を剥かせないで下さいお願いします。
なんて願いもむなしく、乱暴に拭いているにも関わらず起きるどころか呻き声すら発しないお兄さん。
私に恨みでもあるんですか…
無理だよ！！！！若いお兄さんの服を脱がせるなんて！！！色々逆じゃないですか！！！だからと言って脱がされたい訳じゃないけど！！！
まぁ…緊急事態だし…一応…。起きないお兄さんが悪いんだし…
失礼しまーす